ファッション

デジタル活用の躍進、初参加組のインパクト 記者3人が語る東コレの変化【東京コレクション2022-23秋冬リポート】

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 今シーズンの「楽天 ファッションウィーク東京(以下、東コレ)」は、世代や経歴が異なる3人の記者・ソーシャルエディターが中心となって取材した。それぞれの視点でコレクション取材を振り返り、新しい潮流やリアルショーが生み出す価値を考える。

大杉 : 今シーズンは過半数がリアルショーを開催し、盛り上がりましたね。コロナ前に戻るのではなく、デジタルとの融合が加速し、パワーアップした印象です。オンライン配信はもちろん、これまでの紙の招待状からQRコードに切り替わり、取材現場でも効率化が進みましたね。海外のファッション・ウィークでは数年前から定着していましたが、やっと東コレにも導入されました。

佐立 : QRコードは新しい試みだったのですね。

美濃島: 初取材だとそう思っちゃいますよね。ブランド側は、慣れないオペレーションに戸惑ったとも聞いていますが、非接触型の入場でコロナ禍でも安心できる体制でした。

大杉: オンライン配信は、来場できない人も簡単にアクセスできるのが一つの価値。デジタルによって、クローズドな印象だった東コレが徐々に開かれつつあるのは確かです。

佐立: デジタルの活用はインフラだけではなく、ショーにも表れていました。「ヨシオクボ」はありえないくらいに膨らんだ風船や、風車を使ったルックなどを用意し、それをNFTのデジタルルックに落とし込んで販売するという内容で、ファッションの新たな可能性を感じました。

美濃島: 「ベッドフォード」は経済産業省のサポートを受けて、ARでも楽しめるショーでした。部屋でARショーをやってみると、洋服のイメージが伝わってくるし、モデルがウォーキングする姿もリアルでびっくりしました。

大杉: NFTやARなどからコレクションに興味を持つ人もいるだろうし、相乗効果が生まれるといいですね。

大杉: 「東京ファッションアワード」受賞組の凱旋ショーをはじめ、初参加のブランドも存在感を示しました。発表場所はメイン会場のヒカリエホールというしばりがありながらも、「ハルノブムラタ」は、天井の照明を円形に配置してフューチャリスティックな空間を演出。コレクションを際立たせていました。

佐立: 村田晴信デザイナーは「女性が着た姿を完成形だと考えている」と話していたのが印象的でした。僕はこれまで、お店で吊るされた服やルック画像でしかコレクションを見てこなかったから、ショーでモデルが着用して、服がなびいたりシルエットが強調されたりするのを見て、こんなに違うのかと感動しました。

美濃島: 僕も数年前まで「ショーってなんでやるんだろう」と疑問だったけど、実際に見ると服の新作発表として理にかなっていると納得しますよね。初参加でいえば「タナカダイスケ」もよかった。暗い会場にスポットライトを照らすシンプルで力強い演出が、刺しゅうを得意とするロマンチックなクリエイションにはまっていました。

大杉: ほかにも、脱構築的なウエアを改装中のビルの中で見せた「ペイエン」や、無数のネクタイで作ったフリンジスカートや、パッチワークしたダウンジャケットなどの古着リメイクで構成した「マリオン ヴィンテージ」もインパクトがありました。

美濃島: ブランドの集大成として臨むデザイナーが目立ち、その熱量を感じました。楽天支援の「バイアール」が目玉となるブランドを誘致しながら、若手をはじめとする参加ブランドが前のめりなクリエイションを披露する。互いに切磋琢磨するようなムードが、今の東京には必要なのかもしれません。


美濃島: ライブパフォーマンスとショーを融合するブランドも多かったですね。「キディル」は再結成したばかりのロックバンド、サイサリア ヒトを起用し、バンドの約10年ぶりとなるライブを実現させていました。「シュガーヒル」はデザイナーと親交があるバンドの踊ってばかりの国が生演奏を見せました。

佐立: バンドが登場することはよくあるんですか?

大杉: 演出としては定番ですが、ここまで多くのブランドが取り入れるのは珍しいかも。

佐立: そうなんですね。リアルショーの価値を高める演出で、ライブに行きたい欲求も満たされました。

大杉: ”1時間だけのアートギャラリー”をテーマにした「ヨーク」は、過去にコラボしたアーティストの作品をモデルたちがながめる演出がユニークでした。リアルの場で、アートとファッションの融合を分かりやすく表現していましたね。

美濃島: 洋服にもアート作品が落とし込まれていて、ブランドの世界観を上手く伝えていました。「リコール」は、コレクションの着想源になったスペイン・バルセロナの路面マーケットを、海外風の街並みの屋外スタジオに演出し、「コンダクター」は愛と憎しみの二面性を赤い風船が破裂する演出で表現。どれも強く印象に残っています。

佐立: 「ベースマーク」は、服を脱ぐ瞬間のシュールな姿に着用したコレクション。赤い照明にはどんな意味があるのかと思っていたら、”目を閉じた瞬間”を表現したものでした。服を脱ぐとき、目を閉じるシーンをイメージしているんだなと納得しました。ランウエイに布団を敷き詰め、客席にもベッドを用意した「ネグレクト アダルト ペイシェンツ」も面白かったです。


大杉: リアルだからこそできる、自由度の高い演出がコレクションを引き立てていましたね。

美濃島: ただ、渋谷ヒカリエと表参道ヒルズがメイン会場という打ち出しと、参加を考えているブランド側に選択肢が狭いイメージを与えてしまうなとも思いました。いろんな場所でショーが見られるとエンドユーザーも巻き込めて、もっとワクワクしそうです。

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