2022年春夏ファッション・ウイークを通して感じ取った、3つの象徴的な潮流を紹介する。共通するのは、自由さだ。デザイナーたちは、既成概念にとらわれない提案として女性性の解放を促し、色柄をふんだんに取り入れることでポジティブなマインドを表現。デジタル活用の方法にも広がりが見られる(この記事はWWDジャパン2021年10月18日号からの抜粋です)。
今シーズンは、大胆な肌見せやミニ丈、ボディーコンシャスなライン、ランジェリーのようなアイテムがランウエイを席巻した。その背景にあるのは、新時代に向けて既成概念や先入観から“女性性”を解き放とうという考えだ。表現としては、歴史的に女性を象徴するものであったコルセットやイブニングドレスの要素を抽出して再解釈したり、ミニスカートが一世を風靡した60sスタイルや、2000年代初めの “Y2K”ファッションなど過去の若者のイメージを再考したり。もはやファッションにおいて、ジェンダーの意味はなくなりつつある。それならば、自己表現としてセクシーさなどの女性性を謳歌するのもまた良しという、オープンで自由な感覚が広がっている。
「プラダ(PRADA)」は
削ぎ落として現代の魅惑を描く

“削ぎ落とすことで生み出す誘惑”をコンセプトに、現代女性のための魅惑的なスタイルを探求した。出発点は、コルセットやトレーンなど、伝統的なイブニングドレスに見られる要素。しかし、その取り入れ方次第でこんなにモダンになるのかと驚かされる。例えば、コルセットのデザインでは、緩めたレースアップのディテールをトップスやカーディガンに用いたり、メタルバーをドレスやシャツにあしらったり。ドレスの背中は大きく開き、ニットはブラカップで胸を強調。トレーンを引くサテンスカートは、大胆なミニ丈で提案する。そこに合わせるのは、1990年代のアーカイブからヒントを得たというボックスシルエットのテーラードジャケットや、ビンテージ感のあるレザーアウター。これらは先に発表されたメンズ・コレクションにも通じるものだが、ウィメンズに取り入れることでコントラストを描き、女性性を際立たせている。
「ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE&GABBANA)」は
人気のY2Kファッションを グラマラスにアプデ

「2000年代」をキーワードの一つに掲げ、ポジティブかつ官能的であることにフォーカス。ブランドらしいアニマル柄やフラワープリント、カラフルなビジューを取り入れながら、Y2Kファッションをグラマラスに表現した。主役は、黒の繊細なレースがあしらわれたランジェリーライクなアイテム。そこに下着がのぞくローウエストのパンツやミニスカートを合わせるスタイルが軸となる。これまでもたびたび若い世代に目を向けたコレクションを見せてきたが、今季は時流にもマッチし、力強さを感じる。
「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」
時代を飛び越え舞踏会の世界を表現

“「時」の仮面舞踏会への招待状”をテーマに、歴史的衣装から現代の装いまでを融合した。横にパニエが広がる18世紀のボールガウンのようなシルエットには、1920年代のイブニングドレスをほうふつとさせる刺しゅうやレースをミックス。クチュール並みにぜいたくな装飾が目を引くスリムなドレスにはジーンズを、19世紀からヒントを得たフリル襟のブラウスにはミリタリー風のジョッパーズパンツを合わせる。さらに、パテントレザーを使ったバッグやスポーティーなブーツサンダルでクラシックな要素との対比を強調。ニコラ・ジェスキエールの豊かな創造力が光る。