ファッション

「ルイ・ヴィトン」の時代を超えた舞踏会に、「シャネル」の80年代風ショー 2022年春夏パリコレの現場から Vol.5

 こんにちは。ヨーロッパ通信員の藪野です。ついに今回で現地リポートは最終回です。いや〜、2週間にわたるコレクション取材は長いと思っていたのですが、実際はあっという間でした。パリコレ最終日は「シャネル(CHANEL)」に「ミュウミュウ(MIU MIU)」「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」とビッグメゾンのショーが目白押し。最後まで張り切っていきます!

10/5
10:30 CHANEL

 朝一は「シャネル」です。ショーは10時半からなのですが、まずその前にヴァンドーム広場まで、アイコニックな香水“No.5”の100周年を記念したハイジュエリー・コレクションを見に行ってきました。展示されているのは、香水のボトルをはじめ、香りに使われている花、“5”など、さまざまな要素をデザインに落とし込んだ豪華絢爛なジュエリー。眠い目をこすりつつ行ったのですが、完全に目が覚めました。

 その後はショーへ。今回の会場は、定番だったグラン・パレの改修工事に伴い、エッフェル塔近くに一時的な展示ホールとしてオープンしたグラン・パレ・エフェメールです。その中に用意したのは、小高いステージ状になったランウエイの左右にフォトグラファーたちが待ち構えている、かつてのファッションショーを再現したようなセット。その理由をクリエイティブ・ディレクターのヴィルジニー・ヴィアール(Virginie Viard)は、「モデルがランウェイを闊歩し、フラッシュが瞬く1980年代のランウエイが大好きでした。私は、あの高揚感をもう一度表現したいと思ったんです」と話しています。

 そんなランウエイにまず登場したのは、パイピングが施された白や黒のスイムウエア。その後も、ブラトップやクロップド丈のジャケットやタンクトップ、そして、ゆったりしたジャケットに合わせたミニ丈のスカートやドレスなど、ヘルシーな肌見せで快活なイメージに仕上げています。ラストは、カラフルな蝶のモチーフをあしらった軽やかなドレスのシリーズ。蝶は、再生や復活、変化の象徴とも言われていて、先シーズンから注目しています。アクセサリーで目を引いたのは、ビーチバッグのようなざっくりとしたキルティングのチェーンバッグや“No.5”のボトルをモチーフにしたミニバッグ。パールやチェーンのジュエリーの重ね付けも気になります。

14:00 MIU MIU

 「ミュウミュウ」は、先シーズンの壮大な雪山の中で見せたガーリー&フェミニン×アウトドアなスタイルから一転。イームズのオフィスチェアが並べられた空間の中で、プレッピールックとY2K(2000年)ファッションを掛け合わせたような若さあふれるスタイルを披露しました。上半身は、ゆったりとしたボタンダウンシャツやケーブル編みのセーター、テーラードジャケット、スウィングトップなど普遍的なアイテム。ただし、極端なクロップ丈で仕上げられたものが大半です。そして、ボトムスは総じて下着が見えるようなローウエスト。ハサミを入れてDIYしたかのような切りっぱなしの裾も特徴で、中にはマイクロミニ丈のプリーツスカートもあります。足元は、「ニューバランス(NEW BALANCE)」とのコラボスニーカー。アイコンモデル“574”をデニムとローエッジで仕上げているのがポイントです。そんな新たなプロポーションで見せるスタイルをベースにしつつ、ところどころに「ミュウミュウ」らしいクリスタルやフラワーモチーフをあしらったドレスやスカートスーツを差し込みました。

 腰のくびれを大胆に見せるスタイルは好みが分かれ、着られる人もかなり限定されそう。ですが、若い世代を中心にSNSから再燃したY2Kファッションは、間違いなく今季を象徴する流れの一つ。ミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)の時代を捉える感覚には、脱帽です。

16:00 LACOSTE

 「ラコステ(LACOSTE)」のランウエイ・コレクションといえば、スポーツミックスの都会的なスタイル。その機能性とスタイルを兼ね備える提案は、ゲリラ豪雨や熱波など異常気象が増える中で現実味を増しているように感じます。デザインのカギとなるのは、ポロシャツやタンクトップからカジュアルなジャケット、ショートパンツにまで取り入れたメッシュ素材。雨でも楽しくなるようなカラフルなラバーコートやアノラック、天候に合わせてたすき掛けできるアウターもあります。カラーパレットは、ブランドを象徴する深みのあるグリーンやホワイト、ネイビー、トープなどに、レッドやバーガンディー、エメラルド、パステルピンク、イエロー、オレンジをミックス。いつもながら、ルイーズ・トロッター(Louise Trotter)はモダンな色合わせが上手です。

19:00 LOUIS VUITTON

 やっぱりニコラ・ジェスキエール(Nicolas Ghesquiere)はスゴイ!そう言わずにはいられないようなドラマチックなショーでした。会場は、たくさんのアンティークシャンデリアで飾られた、ルーブル美術館敷地内の庭をつなぐ通路。豪奢なランウエイに現れたモデルは、さまざまな時代のタイムトラベルの果てに舞踏会に辿り着いたゲストといった印象です。歴史的な要素から現代の装いまでを巧みに融合させるニコラの想像力、そして創造力には、いつもながら圧倒されます。

 鐘の音と共に始まったショーの序盤に登場したのは、横にパニエが広がる18世紀のドレスのようなシルエットに、1920年代のイブニングガウンをほうふつとさせるビーズ刺しゅうやレースをあしらったスタイル。ボクシーなテーラードジャケットやノーカラーのツイードジャケットには燕尾服のデザインを取り入れ、クチュール並みにぜいたくな細身のドレスにはジーンズを合わせています。さらに、フリル襟のブラウスには、ミリタリー風のジョッパーズパンツやコクーンシルエットのスカートをスタイリング。装飾的なサングラスが仮面舞踏会をイメージさせる一方で、パテントレザーを使ったバッグやスポーティーなブーツサンダルがクラシックな要素とのコントラストを際立たせます。

 今シーズンの着想源は、アメリカの放送局HBOの新ドラマシリーズ「イルマ・ヴェップ(Irma Vep)」の衣装をデザインしたことだそう。96年に公開された同名の映画をベースにした作品で、今作では無声映画の名作「レ・ヴァンピール 吸血ギャング団(Les Vampires)」のリメイク版撮影のためにパリにやって来た主人公を、「ルイ・ヴィトン」のアンバサダーでもあるスウェーデン人女優のアリシア・ヴィキャンデル(Alicia Vikander)が演じています。それを知って、このコレクションに散りばめられたヴァンパイア的な要素にも納得がいきました。

20:00 AZ FACTORY

 いつもパリコレのトリといえば「ルイ・ヴィトン」なのですが、今シーズンは最後にビッグイベントが待っています!それは、4月に亡くなったアルベール・エルバス(Alber Elbaz)に捧げる「AZファクトリー(AZ FACTORY)」の特別ショー。会場に向かう途中にもイベントのポスターを発見し、テンションが上がります。カラフルなライトに照らされた会場には、今回アルベールを想って特別なルックを制作した錚々たるデザイナーたちが集合していて、なんとも豪華な空間。ショーについてはこちらでリポートしていますが、愛や希望にあふれる“ザ・ファッション”なイベントを生で見られたことは、今シーズンの1番の思い出になりました。

おまけ:パリコレ終了翌日には、「エルメス」の年間テーマイベント

 パリコレ終了と共にベルリンに戻る予定だったのですが、6日にパリで「エルメス(HERMES)」の2021年の年間テーマイベントが開催されるということで、参加してきました。今年のテーマは、「長い冒険」や「知的な探求」を意味する“オデッセイ(odyssey)”です。約100人が招かれたイベントでは、プラザ・アテネやホテル・クリヨンのシェフを歴任したジャン・フランソワ・ピエージュ(Jean-François Piege)による見た目も楽しい絶品ディナーをいただきつつ、女優のジャンヌ・バリバール(Jeanne Balibar)やミュージシャンのルーシー・アントゥネス (Lucie Antunes)らによるパフォーマンスを堪能。終盤に生演奏に合わせて披露されたエモーショナルなコンテンポラリーダンスは圧巻でした。ファッションは自分の知らない音楽やカルチャーとの出合いをもたらしてくれることが多々あるのですが、今回もそんな刺激に満ちた夜でした。ルーシーの音楽にハマって、家に帰ってからもリピートし続けています。

 これにて、2週間にわたるウェブでのコレクション現地リポートは終了です。が週刊紙では現在販売中の10月11日号と来週月曜日発売の10月18日号のコレクション特集、そして11月15日発売のトレンド特集でも2022年春夏シーズンについて深掘りしていきますので、ご期待ください!

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