ファッション

拍手喝采の「バレンシアガ」に、ミニ丈が新鮮な「ヨウジ ヤマモト」 2022年春夏パリコレの現場から Vol.3

 グーテン・ターク!ヨーロッパ通信員の藪野です。パリコレは10月5日で無事終了し、ベルリンに戻ってきました。週刊紙のコレクション特集第1弾は本日発売になりましたが、まだまだウェブでの現地取材リポートも続きます。今回は、5、6日目に行われた「ロエベ(LOEWE)」「ヨウジ ヤマモト(YOHJI YAMAMOTO)」「エルメス(HERMES)」「バレンシアガ(BALENCIAGA)」をお届け!残念ながら、パリは天気が崩れ始め、大雨が降ったり止んだり。雨の中のコレクション取材は過酷さを増しますが、会場がどこも屋内だったのが救いでした。

10/1 11:30 LOEWE

 朝からいくつかのアポを済ませ、向かったのは「ロエベ」。コロナ禍にはショー形式から離れ、壁紙や新聞などユニークな方法によるコレクション発表で楽しませてくれたジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)でしたが、その際にもショーへの思いを語っていただけに期待が高まります。会場は、以前の定番だったユネスコ本部から変わり、フランス共和国親衛隊の屋内乗馬練習場。中に入って2階に上がると、そこには白っぽい木で作られた極めてシンプルな空間が広がり、会場内にアートを飾ることも多かったこれまでとの違いを感じました。そして、真ん中に下の階から続く階段があり、どうやらそこからモデルが登場してくるようです。

 ジョナサンは以前から新たなフォルムを探求しているように感じますが、「神経質でサイケデリック、そしてシュールレアリスム的なものを表現したかった」という今季は、自身がフィレンツェで見た、ルネサンス期のマニエリスムの画家ヤコポ・ダ・ポントルモ(Jacopo da Pontormo)の感情的な作品から着想。その世界観に通じる、「ねじれや転換、ゆがみを取り入れた」といい、色使いやドレープのシルエットにもその影響が見られます。 ショーは、コットンジャージーを使ったシンプルなロングドレスからスタート。ただし、骨組みのようなメタルワイヤーで作るウエストや肩の突起が、違和感をもたらします。その後も、ゴールドやシルバーのメタルプレートを組み込んだドレスをはじめ、ちょっと戦隊モノ的にも感じる翼状のケープをあしらったルック、シルク生地をチェーンで吊ったりツイストしたりしてドレープを描く神話上の女神のようなドレスなど、実験的なスタイルがズラリ。「『ロエベ』に入ってから約8年になるけれど、パンデミックを経た今こそ、私たちがどこへ進んでいけるのか、クラフトをどのように再解釈できるのかという新たな領域の開拓にトライするときだと感じた」と話していましたが、スリムなシルエットと、トレンチコートやデニムジャケットといった定番アイテムをベースに、大胆で彫刻的なひねりを加えるというアプローチに目を奪われるコレクションでした。ただ、このまま着ることを考えづらいアイテムが多いのも事実。どのようにコマーシャルピースに落とし込まれているのかが気になります。

 キャッチーなアクセサリーに関しては、エリーさん(ライターの井上エリさん)が写真たっぷりでリポートしてくれているので、こちらをご覧ください!個人的には、新作バッグの“ハンモック ナゲット”を狙っています。

19:00 YOHJI YAMAMOTO

 夕方から一度ホテルに戻って原稿を書いていたら、ショーの開始時間を30分間違えていたことに気づき、大雨の中、急いで「ヨウジ ヤマモト」の会場であるパリ市庁舎へ。ホテルから近くて良かった〜。今回もパリでリアル発表を行う唯一の日本ブランドになりましたが、パンデミックの最中に行われた1年前に比べると、席数も増え、以前のようなショーの雰囲気に戻りました。

 コレクションは、ほんの少しの白とシルバーのペイント、チェック生地の部分使いを除けば、ほぼ黒。「黒」はブランドを象徴するカラーですが、今季はその表現が軽やかです。カットやドレープ、タックを駆使して縦長のシルエットを軸にするのは変わらずですが、「ヨウジ」としては珍しいミニ丈も提案。トレンチコートをアレンジしたドレスも新鮮でした。ラストは、女性が憂いのある声で歌う「イムジン河」が流れる中、クリノリンがあらわになったドラマチックなドレスが登場。モデルがドレスに忍ばせた一輪の黒い花をサプライズで観客にわたすという演出に、グッときました。このシーンは、是非映像でご覧ください!

 ショー会場では日本から来ていた益若つばささんもキャッチ。「黒い服が1番好き」というのは、かなり意外でした〜。パリに来た感想などはこちらの記事でチェックしてくださいね。

10/2 14:30 HERMES

 お迎えの車に乗って向かった「エルメス」のショーの舞台は、パリ中心地から45分ほどの郊外にあるル・ブルジェ空港。かつてはパリ初の本格的な空港として栄え、今はプライベート機の発着などに使われているロケーションです。そこに、長い閉鎖的な生活の中で皆が憧れ、今再び動き出した世界の中で復活しつつある旅への想いを込めました。

 会場となった巨大な格納庫の中に用意されたのは、円形のピラミッド状になった客席。それを囲むようにアーティストのフローラ・モスコヴィチ(Flora Moscovici)による、イエローからブラウンへのグラデーションが美しいアートパネルが何枚も配置されています。ショーが始まると、そのパネルがゆっくりとスライドし、作品とリンクするような美しい色使いのウエアをまとったモデルが登場。中でも、輝く太陽の光をイメージさせる温かみのあるイエローが印象的です。

 コレクションのカギとなるのは、”軽やかさ”。ブランドのキー素材であるレザーは、キャンバス地と合わせたり、四角くカットしたピースをシルクガーゼのアイテムに規則的に縫いつけたり。ラムスキンのジャンプスーツやミニドレス、スムースカーフのビスチェドレスも、薄くなめらかで光沢があり、重苦しさとは無縁です。そこにユーティリティーのムードを加えるのは、ポーチのデザインからヒントを得たというドローストリングのウエストや、”マンジョワール”バッグから着想したアイレットのディテール。足元も、素足またはレザーのソックスと合わせたラバーソールの厚底サンダルで、開放感のあるスタイルを完成させます。

 実は自分を含め、会場にいる観客の半分は自分の席に座ったままだとフィナーレの演出が見えなかったのですが、のちほどデジタルの映像でチェックして、この場所にこだわった理由に納得しました。それは、最後に格納庫の扉が開き、広大な滑走路と空を背景にモデルがズラリと並ぶというもの。今季のキーワードである「希望」にあふれる光景です。そして、ラストには偶然にも飛行機が着陸し。そんなショーの模様は、世界各地で開かれた上映会で流れたそう。デジタルでもエモーショナルな表現に価値を見出す「エルメス」らしいと感じました。

20:00 BALENCIAGA

 9月のMETガラのレッドカーペットでも話題をさらった「バレンシアガ」ですが、今季のコレクションのタイトルも「レッドカーペット」。あいにくの雨でしたが、会場となったシャトレ劇場前には、映画祭のレッドカーペットさながらのセッティングが用意されていて、周りには人だかりができています。たくさんのフォトグラファーが待ち構える中、「バレンシアガ」のアイテムに身を包んだカーディ・B(Cardi B)らセレブリティーも、エディターなどのゲストも、来場者はカメラマンの前で立ち止まり、まず写真撮影。その模様は、会場内の巨大なスクリーンで生中継されています。

 確かに、チケットには「スクリーニング(上映会)」と書かれていたのですが、なんだかおかしい。実はこれ、レッドカーペットを歩くゲストの中に最新コレクションを着たモデルも混じって登場している、すなわち、それ自体がショーになっているという、まさにデムナ・ヴァザリア(Demna Gvasalia)らしい一風変わった演出。スクリーン右下に小さくルック番号が表示されると、まだ開始前と思って油断していた観客も気付き始め、拍手が巻き起こります。さらには、レッドカーペットを通り過ぎたモデルたちも他のゲスト同様、観客席に座るので、これまた驚きです。METガラの時と同じく覆面姿のデムナもレッドカーペットを通って会場入りすると、モデルが映ったシーンだけを編集した映像が流れます。ただ、それだけで終わらないのが「バレンシアガ」です。そこからは“本当の上映会”がスタート。人気アニメ「ザ・シンプソンズ(THE SIMPSONS)」とコラボしたオリジナル作品をお披露目しました。これがまた、めちゃくちゃ面白い!上映後は、拍手喝采でした。

 また、今回の“ショー”のモデルの中にはエリオット・ペイジ(Elliot Page)やイザベル・ユペール(Isabell Huppert)といったMETガラで実際に「バレンシアガ」を着用していたセレブの姿も。あれは、今回のイベントに向けた壮大なプロジェクトの序章だったのか!と思わせる仕込み、あっぱれです。

 コレクションの内容はというと、ウエアはオーバーサイズやボックスシルエットのテーラリングやストリートウエア、ドレープやプリーツを施したドレス、そしてドラマチックなボウルガウンといった、お馴染みのスタイル。ただアクセサリーには新たな提案が多く見られました。バッグでは、底がカーブした”アワーグラス”のフォルムを再解釈して、より実用的に仕上げた“XX”や、3つのコンパートメントを備えるチェーンバッグ“トリプレット”が新登場。シューズでは、「クロックス(CROCS)」とのコラボの新作となるサイバーゴスなアイテムや、アイコンバッグのスタッズや紐のデザインを落とし込んだブーツ、タイヤのようなソールを備えるスニーカー、EVA素材を一体成形したメンズシューズなどを揃えています。

おまけ:今日のワンコ

 パリはミラノと違って、ショー会場に犬を連れてきている人が少ない模様。ワンちゃんいないな〜とエリーさんに話していたら、「ザディグ エ ヴォルテール(ZADIG & VOLTAIRE)」で見つけたというデザイナーさんの愛犬の写真を送ってくれました。

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