ファッション
連載 コレクション日記

「イッセイ ミヤケ」がアプローチを変えた! 「ヴァレンティノ」は王道アイテムをストリートにスタイリング 日本からのパリコレVol.4

 2022年春夏シーズンのファッション・ウイークの舞台は、ミラノからいよいよパリへ。現地スタッフのリアルショーやイベント取材に加え、日本のスタッフもデジタルショーを中心にレビューします。

「イッセイ ミヤケ」は、フリーな気分で水中にダイブ!!

 「イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)」は、“深さ”を探究したコレクションとムービーを発表しました。デザイナーの近藤悟史さんは、「水の中や土の中には、道がありません。自由なことができるのでは?と思い、いろんな場所に飛び込んでみたんです」と話します。

 これは、これまでの「イッセイ ミヤケ」とは結構違う考え方です。コレクションのカギを握る素材を事前に決めて、それがもっとも“いきる”使い方や見せ方を考えてきたアプローチからの転換です。打ち出す素材を決めることは、フォーカスすべきポイントを常々意識する上では役立ちますが、時にそれ以外の素材に関する発想を封印する「制約」になりかねません。こういう「変わっていい時」「自由を模索する好機」には、挑むべきチャレンジです。

 とはいえ、ちゃんと素材にたどり着けるのは「イッセイ ミヤケ」のすごいところ。今シーズンは「リンク・リングス」と呼ぶ、水紋のように中央の穴から同心円状に広がるプリーツを加えた素材を幾重にも重ねてドレスを作成しました。思いっきり水中にダイブしたかのように、水紋が身体中に広がるドレスは、らしさ全開です。螺旋状に編んだニットで作ったミニドレスやスカートは、身体に添いつつも独特のフォームを形成しました。ミニやカットアウトの肌見せもいいですね。デビューシーズン以降、らしさを残しながらフレッシュなムードを備えようと努力する意志を感じます。

「ニナ リッチ」のデザイナーが、水の中で大慌て再び!?

 「ニナ リッチ(NINA RICCI)」も、舞台は水の中です。テーマは、「明日のマーメイド」。ダイバーを思わせるネオプレンやフィッシュネットを加えつつ、ボディコンシャスなスタイルを打ち出します。鮮烈なマリンブルーを中心とするポジティブなカラーパレットや、肌を見せるブラトップやクロップド丈、カットアウトのテクニック、そしてリラックスシルエットのジャケット&パンツなどトレンドは盛りだくさんです。しかしながら、この記事で紹介した「ボッター」のように目まぐるしいカメラアングルとエフェクトで落ち着かない!!共にルシェミー・ボッター(Rushemy Botter)とリジー・ヘレブラー(Lisi Herrebrugh)が手掛けるブランドですから親和性が高いのは理解できますが、アイデアまで似通ってしまうのは賛否が分かれそうなところです。2人は、「現代のマーメイドは、水の守り人でもある」と語り、ブランドを持つ大手フレグランスメーカーのプーチ(PUIG)と共に、海を守る具体的なアクションに取り組む決意も滲ませています。その思いが、目まぐるしいプレゼンテーションで生かしきれていない気がするのは、ちょっと残念です。

「ヴァレンティノ」はストリートに依存せず、スタイリングのヒントに程度に

 「ヴァレンティノ」は、「なにを着る?」より「どう着る?」なマインドのアイテムが大充実のコレクションです。

 コレクションの一部は「Valentino Arichive」というラベルと取り付けるくらい、アーカイブを忠実に現代に蘇らせたものだそう。それ以外のアイテムも奇を衒うことのないミニドレスからジャケット&パンツのフォーマルなセットアップまで王道感たっぷりですが、それを原色にしたり、ミニ丈にアレンジしたり、オーバーサイズに変えたり、ブラトップなどのアイテムと合わせたりすることで、スタイル全体はコンテンポラリーにアップデート。半年前の21-22年秋冬コレクション同様のアプローチを進化させました。

 バルーンシルエットのドレスはコンバットブーツとコーディネート、花柄のチュールで作ったドレスはブリーチヘアでぱっつん前髪の赤リップモデルが着こなすと、「ぐっ」と今っぽく見えます。そして多分、こうしたアイテムはスタイリングを変えれば、長く愛することができるでしょう。クチュールブランドのクリエイションに、ストリート由来のスタイリングセンスを加えることで、タイムレスを維持しながらも、コンテンポラリーに表現しました。クリエイティブ・ディレクターのピエールパオロ・ピッチョーリ(Pierpaolo Piccioli)「私のチャレンジは、らしさを失わず、現代に即したブランドにすること。ただその表現のため、ストリートの世界にどっぷり染まる必要はない」と語ります。まさに。今シーズンの「ヴァレンティノ」には、かつてのようなロゴも、スニーカーもありません。なのにとっても“今っぽい”。コンテンポラリーの表現は、ストリートに依存しなくても良い。この考え方は、今後多くのブランドが目指す1つの理想形になりそうです。

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