ファッション
連載 パリ・コレクション

“水”の表現で明暗分かれた「オーラリー」と「ボッター」 日本からもパリコレ Vol.1

 2022年春夏シーズンのファッション・ウイークの舞台は、ミラノからいよいよパリへ。現地スタッフのリアルショーやイベント取材に加え、日本のスタッフもデジタルショーを中心にレビューします。

「ボッター」はセットとエフェクト連発で水を表現

 ウィメンズのスケジュールでの参加となった「ボッター(BOTTER)」は、2021-22年秋冬の“サンゴ礁のロマン”に続く、水に焦点を当てたコレクション。シアー素材のカーテンがゆらめくダークな会場に、ゴーグルやフィッシュネットなどの海を連想させるアイテムを身に着けたモデルが登場します。サックスやイエロー、ライラックのパステルカラーが春夏らしい爽快さと、深海を思わせる暗いムードの映像が対照的。そして実験的なエフェクトの連発が力みすぎていて、見ていて何だかちょっと辛い。

 今季は海洋保護団体のパーレイ・フォー・ジ・オーシャンズ(PARLEY FOT THE OCEANS)とタッグを組み、海洋プラスチック廃棄物をアップサイクルした素材をコレクションの60%に使用しています。テーマに“GLOBAL WARNING”と掲げる通り、環境への危機感を真剣に訴えたいのは理解できるのですけど、「ボッター」はDIY的な楽しいクリエイションが真骨頂。ルックに登場する傘のようなウエアは、実際に傘をアップサイクルしたもの。フランスの老舗傘ブランド「ピガニオル(PIGANIOL)」協力のもと、世界中から回収した傘をファッションとして生まれ変わらせました。ほかにも浮力装置風のバッグやフィッシングルアーがモチーフのネックレスなど、楽しいアイテムが多いんです。だから危機感をこれみよがしに煽るよりも、ハッピーな表現に寄せた方が共感しやすいのではと考えてしまいました。

「オーラリー」は西湖でのハッピーな撮影

 シリアスな「ボッター」とは対照的だったのが「オーラリー」のムービーです。水辺での映像に「また水がきた」と一瞬身構えたものの、こちらは水の清涼感を生かしたクリアなムードで、色彩豊かな今シーズンのウエアとマッチしていました。ブランドの強みであるベーシックなリアルクローズを軸に、岩井良太デザイナーの「外に出たい」という渇望を色や空気感で表現しています。岩井デザイナーのクリエイションのルーツである古着の雰囲気も、スエットやジーンズにいつも以上に分かりやすく加えていました。サステナビリティのアプローチとして、オーガニックコットンとリサイクルポリエステルを用いたパイル生地も使っているのですが、こちらはさりげなさが素敵です。

 この爽やかな映像は、6月に山梨の西湖で丸一日がかりで撮影しました。深夜2時からヘアメイクがスタートし、日の出を待ち、映像とルックを日没までに撮りきるという強行スケジュール。途中で「終わらん」とあきらめかけた瞬間もあったようですが、最終的にはとっても「オーラリー」らしい映像を完成させました。映像で特に印象的だったラストの水の波紋が広がるシーンはOKまでに1時間以上かかり、モデルは何度も湖に石を投げて頑張ったそうです。岩井デザイナーと撮影チームは西湖のあまりの美しさに、夏にキャンプで再訪したのだとか。

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