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連載 ビューティ業界のサステナビリティ

長谷川ミラが「ザボディショップ」に直撃 ありのままの自分を受け入れるためには?

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 地球温暖化で異常気象や災害が多発する今、持続可能な環境・経済活動が求められている。ビューティ業界も同様で、近年はサステナビリティ経営が必須だ。サステナビリティは企業の本気度を表すもの。しかし発信が強すぎると押し付け感が生まれ、受け取り手が疲弊することも。そこで、社会・環境問題に等身大の視点で語るZ世代モデルの長谷川ミラに、サステナブルな取り組みを推進するビューティ企業の取材に同行してもらった。彼女の目を通じて各企業の活動に迫る。

 今回は、1976年の創業当時から年齢や性別、国籍を問わず、すべての人々が平等であることを唱えてきた「ザボディショップ(THE BODY SHOP)」に、ジェンダフリーやクルエルティーフリーについて聞いた。(この記事はWWDジャパン2021年5月31日号からの抜粋に加筆しています)

WWD:「ザボディショップ」は、1997年には美の固定概念にとらわれることなく、自分らしさを尊重する重要性を唱えた“セルフエスティーム”キャンペーンを実施し、今年3月にはセルフラブ(自己肯定)を高める“SELF LOVE(セルフラブ)”キャンペーンを開始した。同キャンペーンに長谷川さんを起用した理由は?

高橋佳子ザボディショップジャパン マーケティング部ディレクター(以下、高橋):今年「ザボディショップ」は創立45周年を迎え、“SELF LOVE”のメッセージとともにセルフラブを高めるための道標になるような“リーディングライツ”を探していました。実はZ世代の10人に4人がセルフラブの最下位のグループにいることが調査でわかり、特にZ世代の女性のセルフラブが低いことが判明したのです。そこに対してブランドとして何か働きかけたいと思っていたのですが、Z世代は上から目線で真面目に語りかけてもなかなか響かない部分がある。「ポジティブに社会問題に向き合おう」というメッセージの発信をするためには、やはり等身大の視点が必要だと感じ、環境や社会問題に取り組むミラさんにお願いしました。

長谷川ミラ(以下、長谷川):以前、SNSに関して高校生に取材した時、みんな口を揃えて「怖い」と言っていたのが印象的でした。自分の意見を述べて炎上している大人を見ているからか、意見を言わない子たちがすごく多くて。そういう影響があってセルフラブが低い傾向にあるのかもしれないですね。思ったこと言うとすぐ反応が返ってくる時代ですし。

高橋:情報がありふれているのも影響しているかもしれないですね。セルフラブというテーマは、グローバル全体で考え戦略を立てているのですが、日本の今の、特に若い女性に必要なものだと感じています。このキャンペーンを通じて、ショップにパネルやフィルムで作成した動画を流しているのですが、今までブランドと接点が少なかったお客さまにも来店してもらうきっかけになっています。

長谷川:日本では、「人さまに迷惑を掛けないで生きなさい」というマインドがあり、すごくいい考え方ではあるのですが、それがいき過ぎて自分のことを犠牲にしている人が多いと思います。自分を犠牲にしないで人にも迷惑を掛けないのが最低限だから、自分を犠牲にしてどうするの?という感じです。だから思っているより、自己中(自己中心的な考え方)になってみて、ちょっと人に迷惑をかけるぐらいでいいと思っています。自分が正直でいれば相手も正直でいてくれるはずだから。ただ、セルフラブはマインドの話でもあるから、何から始めたらいいのかも分からないときは、言葉だけではなくてプロダクトを通じて体感してもらうのも手段だと思います。

高橋:スキンケアやボディーケアを通じて、自分と向き合う時間を作ってみるのもいいですね。

WWD:そもそも「ザボディショップ」は創業当時からサステナビリティがブランドの根底にあった。

高橋:創業者のアニータ・ロディック(Anita Roddick)自身が「私は化粧品は嫌いです」から実は始まっていて。化粧品の“あなたは可愛くない、太っている、だからこれを使って良くしましょう”という売り方になりがちだったことに彼女は疑問を持っていました。「人は内面から美しさが出てくるもので、一人ひとりの個性が素晴らしい」ということを伝えながら、化粧品でビジネスをするということにおいては、前提として世の中を良くしたいという目標があったからこそだと思います。

長谷川:アニータのことは、化粧品に関して興味がない父親も知っているくらい、世界的にも有名ですよね。英ロンドンに住んでいた頃、ルームメイトでありフェミニズムのコミュニティーに属していた女の子の友人と買い物に出掛けたときに「『ザボディショップ』寄っていい?ここのブランド動物実験していないんだよ」と教えてもらったことがあって。「それ私に関係あるの?ペットも飼ったことがないのに」と思って調べたら、衝撃的な事実を目の当たりにしました。そこからサステナビリティを話す上で動物実験をしないブランド=「ザボディショップ」というイメージが強いですね。

高橋:イギリスはビーガンしかり、環境問題しかり、さまざまな社会問題に取り組んでいる。そういうマインドが根付いている国で、クルエルティフリーのパイオニアとしてリードしてきたブランドなので、ロンドンでインプットされてきたミラさんであれば、ブランドとの親和性があるということも感じていました。

長谷川:モノづくりにおいても隙がないですよね。化粧品で科学の力を使うのはもちろん理解ができるけれど、地球に優しいモノは人にも優しいのは必然的だなと。使ってみて改めて感じました。

高橋:ミラさんのようにブランドの哲学に共感して物事を判断できる方たちをターゲットにアプローチしているのですが、若い世代のエンパワーメントは大きな課題として捉えているので、今年はセルフラブの啓蒙活動に取り組み、来年はもっと若者と大きなアクションをとることを考えています。

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