フードロスも含め、日常生活や経済活動、災害などに伴い発生したごみ・廃棄物の多さが問題視されている。環境省によると、2019年度のごみ総排出量は4274万t (東京ドーム約115個分)に及び、1人1日当たり918g。リサイクル率も前年に比べ減少しているという。国内のごみの埋立地は40年にあふれるといわれ、海洋プラスチックごみ同様に3Rの推進が急務だ。化粧品業界に目を向けると、ショッピングバッグの廃止や外箱のリサイクルなど、ごみを生まない社会の実現に向けて各社が本腰を入れている。（この記事は「WWDJAPAN」2021年5月31日号からの抜粋に加筆しています）
包装材を100％リサイクル可能な資材にするELCジャパン
ELCジャパンは2025年までに包装材の75〜100％をリサイクル・詰め替え・再利用・再生・回収可能なものにする。この目標を達成するために、同社のパッケージに含まれる再生材料の量を最大50％増やす。
埋め立て廃棄物ゼロを掲げる資生堂
資生堂は2022年までに埋め立ての廃棄物ゼロを目標に掲げる。すでに工場において長年にわたり徹底した廃棄物の分別を実施。資源化しリユース・リサイクルに取り組み、03年には既に国内工場でゼロエミッションを達成し、現在も廃棄物の分別と資源化の活動を継続する。19年には生産工場から排出されたプラスチックや金属などの不要物のうち 47％をリサイクル資源として有価化したほか、全事業所から排出され有償処理された廃棄物のリサイクル率が94％となった。また包装材の削減や詰め替え・付け替え可能な容器の発売、容器包装の簡素化、能書の削除、段ボールの軽量化、ビジネス・トランスフォーメーション・フレームワークを活用した受注管理システムの再設計など、廃棄物抑制に向けた取り組みを実施し、資源効率の向上を実現した。19年には同社の11の全工場での廃棄物を絶対量で前年比394t削減した。
世界の生産工場で埋め立て廃棄物ゼロを達成するP&G
P＆Gは日本の3工場全てを含む世界中の92％の生産工場施設で埋め立て廃棄物ゼロを達成した。また「SK-Ⅱ」を生産する工場の新設棟は、世界に先駆けて工場排水を全量浄化して再利用する“排水ゼロ”に2019年から取り組み、LEED認証（コストや資源削減を進めながら健康にも配慮し、再生可能なクリーンエネルギーを促進している建築物が対象）を取得した。
不要サンプルを再利用するコーセー
コーセーは役目を終えた化粧品から絵具を製造・販売する事業を行うモーンガータに不要となった化粧品を提供する。2020年からモーンガータの事業に賛同し化粧品を試験的に提供してきたが、研究所でも最終的に製品にならないサンプルが生じることに着目し、今後も継続的に提供することを決めた。今後は開発過程で不要になるサンプルを全く新しい形で再生利用する仕組みを確立するという。
売り切り目指しMDサイクルを見直す花王
花王は、子会社であるカネボウ化粧品が展開するメイクアップブランド「ルナソル（LUNASOL）」でトレンド提案力を高めながら製品の廃棄を減らすことを目的に、これまでの年4回から年に6回のトレンド提案に変更した。毎回必要な製品だけを発売する発想に切り替え、トレンド提案につながる製品は数量限定で生産し売り切りを目指す。
リフィル対応、ペーパレス化推進のポーラ・オルビスHD
ポーラ・オルビスホールディングスは1980年から実施する製品のリフィル対応や産業廃棄物複合品分別回収の徹底、産業廃棄物リサイクルの実施（リサイクル率30％）、ペーパーレス化を進め、22年度は廃棄物削減量の前年比10％減を目指す。29年までには15年度比で26%削減することを掲げる。
使用済容器をトレイや道路にアップサイクルする「ニールズヤード レメディーズ」
「ニールズヤード レメディーズ（NEAL'S YARD REMEDIES）」は、使い捨てプラスチックやリサイクル品ではない素材、1回しか使用できないパッケージなどは最小限とする。使用済みブルーボトルは全国の直営店で自主回収し、トレイなどの製品へのアップサイクルや、ブルーの反射で事故を防止するアスファルトなどに活用している。
循環型パッケージングソリューションを行う「イソップ」
「イソップ（AESOP）」は20年10月からオーストラリアの店舗で循環型パッケージングソリューションの試験を行う。消費者が一度使い切った製品を一部店舗に返却でき、それをメルボルンにあるラボに運び、洗浄や消毒、詰め替え、再度ラベル付けを行い、消費者が購入できるように店舗に戻される仕組みだ。まずはフェイシャルクレンザーからトライアルを続け、データを収集して500mLの再生プラスチックを使用した製品を含む、複数のパッケージでこのやり方を導入する方法を検討する。
ギフトラッピングに風呂敷を使用する「ラッシュ」
「ラッシュ（LUSH）」）は、ゴミにならずに何度でも使える風呂敷アイテム「ノットラップ」をギフトラッピングとして販売。19年からは古くなった「ノットラップ」を店舗に持参すると新しい「ノットラップ」を50％割引で購入できるリサイクルプログラムを開始した。
エシカル割を採用する「シロ」
「シロ（SHIRO）」はパッケージレスで省略できる包装資材分を製品通常価格から3％値引きして販売するエシカル割を導入。自分用に購入する場合は箱なしの製品のほうが好評で、オンラインストアでは先に完売となることも多いという。
世界でリフィルステーションを展開する「ザボディショップ」
「ザボディショップ（THE BODY SHOP）」は、詰め替えサービス「リフィルステーション」を全世界で展開する。専用の詰め替えボトルとポンプの購入者に、ボディーシャンプー4種、ハンドソープ2種から好きなものを詰め替え価格で提供する。21年には導入店舗を全世界で400店舗、22年にさらに400店舗増やす予定だ。
1つの植物を余すことなく使用する「アムリターラ」
「アムリターラ（AMRITARA）」は農家が育てた玄米からスキンケアアイテム用の成分を抽出した後、余った固形物を玄米麺にするなどのアップサイクルを行う。自然栽培レモンは、果皮から抽出した精油をクレンジングに。その副産物である精油を抽出するときに出来る蒸留水をオイルインミストとファブリックミストに、そして実を搾った果汁をレモン果汁にするなど、１つの植物を余すところなく使い、地域振興にもつなげる取り組みを行う。
毎月「工場の廃棄はゴミ箱一つ未満」を目指す「ドクターブロナー」
「ドクターブロナー（DR.BRONNER'S）」は、廃棄物ゼロを目指す。製造に使用する排水のリサイクル、毎月の工場廃棄はゴミ箱１つ未満を目標として全社で取り組む。ボトル容器はすでに03年から100%リサイクルしたプラスチックを使用するが、それに加えてリサイクル紙を使用したカートンボックス、植物性プラスチックなど、パッケージイノベーションにも取り組む。
