ファッション

「地球のために」3年がかりの開発情報を競合他社に無償公開 リシュモン傘下の時計「パネライ」CEOに聞く

 コンパニー フィナンシエール リシュモン(COMPAGNIE FINANCIERE RICHEMONT)傘下のイタリアの時計ブランド「オフィチーネ パネライ(OFFICINE PANERAI以下、パネライ)」は、総重量に対して98.6%ものリサイクル素材を使うコンセプトウオッチ“サブマーシブル eLAB-ID”を発表した。布をメインとするアパレル製品に比べて、精密機器である時計はサステナビリティの分野で立ち遅れ、ベルトなどごく一部にエコフレンドリーな素材を使う例はあったものの、心臓部にタッチするのはもっと先のことだと考えられていた。「パネライ」がこれを一気に突破できた要因、さらにはその狙いについてジャンマルク・ポントルエ(Jean Marc Pontroue)最高経営責任者(CEO)に聞いた。

WWD:他ブランドに圧倒的に先んじて、過去に例のないリサイクル素材使用率の時計を発表した。

ジャンマルク・ポントルエ=パネライCEO(以下、ポントルエ):「パネライ」の研究・開発部門“ラボラトリオ ディ イデー(アイデアの工房)”は、時計業界以外の産業のリサーチを常に行っており、特に航空宇宙の最新テクノロジーを取り入れている。リサイクルベースの素材“エコチタン”をケースに用いたモデルを発表したのは2019年で、その時点ですでに他社よりサステナビリティで先んじていた。“時計産業にエコシステムを作る”という目標を掲げ、ムーブメントの開発に3年を要したものの、いち早く着手したことで大きな成果を上げることができた。

WWD:今回開発した技術や開拓したサプライヤーについて、競合他社のブランドに情報を無償公開すると聞いた。

ポントルエ:環境保護の問題には可及的速やか、かつ「パネライ」だけでなく時計業界全体で取り組むことが必要だ。時計は自動車などに比べれば、1つの商品に使う素材の量はごくわずか。しかし業界全体の総量で考えれば、新たな資源の採掘を減らすことに大きなインパクトを与えられる。

WWD:日本の時計ファンには、堅実な定番モデルに傾倒するコンサバ層も多い。そういった人たちに、新たな「パネライ」をどうアピールする?

ポントルエ:定番モデルには長く愛される理由があり、それを正しく理解する日本の時計ファンの審美眼は確かだと思う。「パネライ」も“ラジオミール”や“ルミノール”といった定番モデルを、デザインをほぼ変えずに機能・素材を進化させて継続している。そのため、日本の時計ファンに理解いただきやすいブランドと言える。20年には、“PAMCAST(パムキャスト)”という「パネライ」の歴史や世界観、最新トピックを伝えるデジタルコンテンツをスタートさせており、ここでも「パネライ」の魅力を発見してもらえるはずだ。

WWD:“変わるパネライ”を象徴する出来事としては、薄型モデルを集約した“ルミノール ドゥエ”の38mmをレディスコレクション化して“パネライ ピッコロ ドゥエ”とした。新たな女性ファン獲得のための指針についても聞きたい。

ポントルエ:機能を追求することによって完成された普遍的な美しさを持つ「パネライ」のデザインは、これまでも世界中の女性の心をつかんできた。しかし、“メンズの時計を着ける”という心理的ハードルがあったと思う。今回、女性のライフスタイルやフィッティングをいっそう意識してコレクション化したことで、女性が「パネライ」をワードローブに取り入れやすくなったことをアピールしていきたい。

WWD:次はどんなことでわれわれを驚かせてくれる?

ポントルエ:19年にはイタリア海軍での訓練体験をオプションしたモデルを、20年には70年保証を付けたモデルを、そして21年にはリサイクル素材使用率98.6%のコンセプトウオッチを発表した。チャレンジ&フロンティア精神を持って新たな挑戦を続けているので期待してほしい。

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