ファッション

高級時計は“トキ消費” 激レア体験付きが密かに流行中

 イタリア海軍きっての精鋭、特殊部隊コムスビンの隊員たちは日々苛酷な訓練を行っている。潜水具を装着しての水中演習や、軍用ヘリコプターからのロープ降下。さらに崖と崖の間をロープで渡ったり、ほふく前進で障害物を突破して進軍する訓練だってある。

 イタリアの時計ブランド「オフィチーネ パネライ(OFFICINE PANERAI以下、パネライ)」が、2019年1月にジュネーブで開催された2大時計見本市の一つ「S.I.H.H.(サロン・インターナショナル・オート・オルロジュリ」で発表した“サブマーシブル マリーナミリターレ カーボテック リミテッド エディション”は、この訓練体験を特典に付けて話題となった。

※10月に「ウオッチ&ワンダー ジュネーブ(WATCHES & WONDERS GENEVA)」に名称変更

 「パネライ」は同時に、冒険家のマイク・ホーン(Mike Horn)と北極体験ができる特典や、フリーダイバーのギヨーム・ネリー(Guillaume Nery)と仏領ポリネシアのモーレア島でダイビングできる特典を付けたモデルも発表した。

 “買って終わり”ではなく、参加可能なイベントや体験などのコトが付いた商品を求める声が高まり、“コト消費”という言葉が使われ始めたのは2000年ごろのことだ。それから約20年――高級時計の世界でも、コト消費のニーズに応えるモデルが限定的ではあるが定番化しつつある。今回「パネライ」が注目されたのは、特典があまりにも特別で、コト消費の上を行く“トキ(時)消費”だったからだろう。

 カーデザイナーのアレクサンドル・メイエー(Alexandre Meyer)と時計師のシルヴァン・ヌリッソン(Sylvain Nourisson)が、17年に設立したフランスの時計ブランド「フェノメン(PHENOMEN)」も特別な体験を時計に付けた。

 19年から同ブランドの日本正規代理店を務めるオールージュはドライバーズウオッチ“アクシオム”のプロモーションのため、「ピレリスーパー耐久シリーズ2019」に参戦するアウディ・チーム・マーズのメインスポンサーとなり、同モデルの購入者にレーシングカーでのサーキットドライブを提供する。助手席に座るのではなく、自分で運転できるというのは画期的。ちなみにオールージュの社長を務めるのは、元レーシングドライバーの下山征人だ。

 サーキットドライブといえば、平均単価2000万円超の超高級時計ブランド「リシャール・ミル(RICHARD MILLE)」も毎年サーキット走行会を主催し、時計オーナーたちを招待している。また個人時計師や小規模なブランドは、購入者を工房に招いての見学会や時計製作体験会、オーナー同士の交流会などを開催している。

 高級時計は長く付き合うもの。それだけに、特别な思い入れや愛着を持つきっかけとなるトキ消費付きの商品が今後ますます増えていくだろう。

渋谷ヤスヒト/オフィス・ノマド代表:1962年、埼玉県生まれ。大学卒業後、徳間書店に入社。文芸編集部を経て、「グッズプレス」編集部に配属。表紙撮影で出合った「ブライトリング」の“コスモノート”を購入したことをきっかけに時計にはまり、95年からスイス2大時計フェアや時計ファクトリーの取材を開始。2002年に同社を退社し、「エスクァイア日本版」の編集者などを経てオフィス・ノマドを設立。時計ジャーナリスト、モノジャーナリスト、編集者としての顔を持つ。趣味は料理 

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