ファッション

国内外から出演オファー 71歳のインスタグラマー、内藤朝美のポジティブ マインド

 71歳のインスタグラマー、内藤朝美さんをご存知でしょうか?テレビやウェブメディアで“インスタグランマ”として紹介され、ハイブランドを颯爽と着こなすファッショナブルな投稿が人気を集めています。昨年10月にスタートしたアマゾン(AMAZON)のオンデマンド・プリントサービス「マーチ バイ アマゾン」でアーティストやクリエイターが制作したTシャツの着用モデルに選ばれたり、「シュウ ウエムラ(SHU UEMURA)」のインターナショナルチームからウェブキャンペーンモデルとしてオファーを受けたりするなど、活躍の幅を広げています。

 普段はクラシックカーの販売を手掛ける内藤オートの副会長としての顔も持ち、娘であるさおりさんにスタイリングやメイクのアドバイスも受けながら、インスタグラムで日々のファッションをアップしています。「この年齢だからこそ何でも挑戦してみたい」と語る朝美さんのポジティブなマインドの秘訣と、「当初は海外に向けての発信だった」と朝美さんの写真をインスタグラムでアップする、娘のさおりさん2人に話を聞きました。

WWD:さまざまなメディアで紹介されて話題になっていますが、そのことをご自身ではどのように感じていますか。その後、何か変化はありましたか?

内藤朝美(以下、朝美):最近、たくさん声をかけていただいていますが、何か変わったという実感はないんです。オファーをいただいた当初は、「そんなことできないわ」と思っていました。ただ、この年齢だからこそ何でも挑戦したいなと思って。実際にやってみるととても楽しかった。スタッフの方はお若いですが、年代を越えて仲良くなれたり、そのあとも友人として交流させてもらったりと、とても刺激がありました。

WWD:そもそもインスタグラムをスタートしたきっかけは?

朝美:娘のさおりがブログを始めたことがきっかけです。「私のモデルになって」というので、親子のダイアリーにもなるし「いいわよ」と。彼女がスタイリングをして撮影しているのですが、5、6年前にインスタグラムに移行しました。小さいときから娘もファッションが大好きで、ファッション関連の本を購入したり、一緒に買いものに行ったりしていました。

内藤さおり(以下、さおり):私はスタイリストになりたいと思っていましたが、家業を継ぐことを選んだので、何か違う形で表現できたらと思いスタートしたんです。今では、母を通してやりたかったことが実現できています。母がいてくれてとても嬉しいですね。

WWD:朝美さん自身がファッションに目覚めたきっかけは?

朝美:3、4歳の頃からブローチやイヤリングがものすごく好きだった。バッグも欲しがっていました。どうしてだか分からないのですが(笑)。当時はそれほど既製服もなかったので5歳まで母親があつらえてくれたのですが、ふんだんにギャザーを入れたスカートや、凝った編み目のセーターなどを編んでくれたのを覚えています。ファッションの原体験の嬉しい思い出として残っています。

WWD:今では「シャネル(CHANEL)」「セリーヌ(CELINE)」「ロエベ(LOEWE)」といった海外ブランドから、国内の「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」や「ビズビム(VISVIM)」といったハイブランドまで颯爽と着こなしていますが、新しいものと長年大切にしている服をミックスして着こなしているのが印象的です。

朝美:洋服も靴もバッグも思い出深いものばかりで、とても愛着があります。古いものってとても素敵で「あれをとっておけばよかったな」と思うことも。使い込んだものと新しいものを組み合わせてトータルにコーディネートしています。45年くらい前に購入した「エルメス(HERMES)」のケリーバッグも現役ですし、20年選手のものもたくさんあります。なかなか家の中が片付かないですね(笑)。

WWD:さおりさんがヘアを担当し、スタイリングやメイクなどトータルにアドバイスしているそうですね。

朝美:そうなんです。今では娘が「これ着てみて!」と提案してくれることも多く、自分では選ばないような服でも実際に着てみると「なるほど!」と思うことが多いんです。自分でメイクをする際は、ブルーのアイシャドウとピンクのルージュが好きで、よくその組み合わせになります。若い時は口紅だけで過ごしていましたが。

WWD:服を購入する際のポイントやこだわりはありますか?

朝美:夫がクラシックカーの販売をしている仕事柄、一緒にパリ、ロンドンなどの海外で同行する機会が多かったのですが、外国の方というのは派手でも地味でも振る舞いがとても自然だし、自分が着たいものを着て楽しんでいます。私自身、年齢に見合った“それなりのスタイル”というものがイヤで。海外では、その人の装いが素敵だと思ったら声をかけて褒めてくれるんです。

若い頃はベージュや茶色の方が多かったのですが、おばあちゃんになったら赤やピンクを着たいと思っていました。昔からアニマル柄も好きで今でもよく着用しますよ。典型的なおばあちゃんになるのに抵抗があったんだと思います。ファストファッションの店に行ってもかわいい商品がたくさんあると思いますし、先日着用させてもらって違和感なく着られました。決して年相応が悪いとは思わないですが、それだけに捉われたらつまらないし、損しちゃう。人生一回しかないですし。

さおり:実はインスタグラムをスタートした当初、海外を意識していたんです。海外の方が「誰が着ようが良いものは良い」という考え方なので、受け入れてくれるのではないかと思って。それで英語でも紹介しているんです。すると海外からのフォロワーや“いいね”数も増えていきました。実際に海外の方からインスタグラムのDMを通してオファーを頂くことが多いです。今では日本のメディアで紹介されたことをきっかけに国内の問い合わせも増えました。

WWD:スタイリングを考える際のポイントはありますか?

さおり:ファッションはストリートからも生まれる、あくまでも“日常”だと思うので、撮影の際はストリート感も意識しています。きれいになりすぎない、ゴージャスになりすぎない。バランスが重要だと思っています。

WWD:シューズやバッグ、アクセサリー使いも個性的です。

朝美:前世がインディアンだったんじゃないかと思うほど(笑)、ネイティブアメリカンのジュエリーが大好きです。昔のものが好きで集めています。海外に行った際に購入したり、娘がネットを通してアリゾナのインディアンジュエリーを買ってくれたりもします。

WWD:「ビズビム」の服にそれらのアクセサリーをコーディネートしていたりしていますね。

さおり:デザイナーの中村ヒロキさんに教えてもらって購入したインディアンジュエリーもあります。店に載っていない、何百年前のもので現存するジュエリーを所有している商品なども扱っているようなお店ですが、買えるものの範囲で集めています。

朝美:息子が着ている「ビズビム」の服を借りて着ることもありますし、バンダナ柄の薄手のダウンは娘が購入してくれたものです。

WWD:海外が先行でスタートしたアマゾンのオンデマンド・プリントサービス「マーチ バイ アマゾン」(ブランドや作品のクリエイターがオリジナルの作品をアップロードし、アマゾンがプリントして消費者に届けるサービスで、クリエイターにとっては先行費用や投資、在庫管理が不要)では、アーティストやクリエイターが制作したTシャツの着用モデルにもなっている。

さおり:そのプロジェクトは、フランス人のディレクターのオファーで実現しました。オファーをいただく機会が増えましたが、母にとって楽しくないと意味がないので、話を伺って楽しそうだなと思ったらトライすることにしています。

WWD:先日、「シュウ ウエムラ」のメイクアップアーティストがメイクを施し、撮影をしている写真をインスタグラムにアップしていましたが、どういった経緯で実現したのですか?

さおり:「シュウ ウエムラ」のインターナショナルチームの方が、母のインスタグラムを見つけてオファーしてくれたものです。製品をリニューアルしたタイミングで声をかけてくださり、キャンペーンモデルとして「シュウ ウエムラ」のウェブサイトでも掲載されていました。ブランドとしても、母のような年代を起用したのは初めてのことだったと聞いています。

WWD:内藤オート副会長としての仕事は、どの程度していますか?仕事とインフルエンサーの両立をやってみていかがですか?

朝美:今は子どもたちに任せている部分が大きいので、私は昔からのお客さまにご挨拶させていただくことがメインですが、仕事は私にとって生きがいになっています。今はとても良いバランスだと感じています。

WWD:日々、健康や美について気を付けていることはありますか?

朝美:たくさんのお水を飲むことです。水分が足りないと言われたことをきっかけに血流も良くするためにも意識して飲んでいます。私にとってはそれがちょっとつらいですが(笑)。あとはよく寝たり食べたり、笑うようにしたり。自分で言って自分で笑ってしまうこともよくあります。美容に関しては乾燥に気を付けています。自分に合ったものを選び、化粧水なら手で温めて3回ほど「入れ入れ」と思いながら浸透させるようにしています。

WWD:インスタグラムではポジティブな姿勢が伝わってきますが、前向きになる秘訣は?

朝美:多かれ少なかれ悩みがない人はいないと思います。私はもともと能天気で楽天家。「なんとかなるわよ」という気持ちでいます。つらいことがあっても、きっと次の日にはいいことがあると思い、そのことに前向きになって取り組んでいけるように心掛けています。最初はポーズをとって撮影することすらとても恥ずかしかったのですが、慣れてしまえばとても楽しいんです。

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