マッシュスタイルラボの「スナイデル(SNIDEL)」からコスメブランド「スナイデル ビューティ(SNIDEL BEAUTY)」が来春誕生する。製品はオーガニック・ナチュラルな化粧品の知見を持つマッシュビューティーラボが手掛け、「スナイデル」が重視するサステナビリティをテーマにしたコスメ単独の店舗をオープンする予定だ。国内のファッションブランドから派生したコスメブランドは希少で、さらに同一企業が展開するのは稀なケース。海外での展開も視野に入れるなど、化粧品業界に新風を巻き起こす。(この記事はWWDジャパン2020年12月21・28日号からの抜粋です)
WWDジャパン(以下、WWD):「スナイデルビューティ」誕生の経緯は。
近藤広幸マッシュホールディングス社長(以下、近藤):「スナイデル」はマッシュグループ初のブランドで、2016年からファーフリーや環境に配慮した素材の採用、リサイクル・エコロジー素材での店舗作りなどを推進する。海外進出も先陣を切って行い、現在は中国やニューヨーク、バンコク、台湾、シンガポールなどで展開し、海外での知名度や期待が大きい。ターゲットである環境問題や社会課題に関心の高いデジタルネイティブ世代が持つ新しいビューティの考え方や、アジアに通用する日本のコスメブランドを「スナイデル」を通じて発信したかった。
小木充マッシュビューティーラボ副社長(以下、小木):マッシュビューティーラボは「セルヴォーク」「トーン」とプライベートブランド(以下、PB)を開発・販売するが、当然ながらファッションブランドの冠を持つコスメブランドは初めて。2年前に構想に着手し、「クオリティーが高く(気持ちが)上がる商品をつくりたい」という共通認識を持ち、メンバー集めから始めた。そこで化粧品業界で長年の知識と経験を持つ石川雅子新規ブランド開発室ディレクターと共に開発に乗り出した。
WWD:製品はオーガニック・ナチュラルに特化するのか。
石川雅子マッシュビューティーラボ新規ブランド開発室ディレクター(以下、石川):クリーンビューティブランドとして開発した。スタート時は、スキンケアやベースメイク、ポイントメイクをそろえ、約90品目扱う。百貨店市場を見るとスキンケアはオーガニック・ナチュラルにこだわっていても、メイク製品は機能や発色を重視し従来と同じ考え方で処方開発をしているケースが多い。「スナイデル ビューティ」は「ニュークリーンビューティ」をコンセプトに掲げ、メイクアップ製品であってもシリコーンや紫外線吸収剤、ポリマーなどは一切使用せず、どこまでナチュラルで表現できるかにチャレンジした。21年以内には100品目を超えたラインアップとし、それまではほぼ毎月新製品を追加する計画だ。
WWD:パッケージはデザイン、素材にもこだわる。
近藤:「スナイデル」はバウハウス的な哲学を女性向けにブレイクダウンしたデザインを基本とする。それをコスメで表現するために造形デザイナーと打ち合わせを重ね、パッケージは1㎜単位でこだわり、ミニマルなデザインに仕上げた。環境に配慮した素材を使用し、サトウキビの樹脂からとったバイオマスを上限まで配合したボトルを採用する。
石川:パッケージのカラーは「スナイデル」のDNAを再解釈し、肌になじみやすいオリジナルのシャンパンゴールド「スキンゴールド」をブランドのアイデンティティーとした。ジュエリーやお守りのように感じてもらえたらうれしい。
売上高50億円規模のブランドに育成
WWD:手に取りやすい価格に設定する。
小木:価格帯は「セルヴォーク(CELVOKE)」(例、リップ3200円)と「トーン(TO/ONE)」(同2800円)の中間もしくは「トーン」と同等を想定する。これは百貨店とファッションビルを織り交ぜて出店するマルチ戦略でも通用するだろう。
石川:初任給でも買える価格にこだわったのは、ここ数年、インバウンド消費でビューティ業界が活気づき販売価格を上げるブランドを目にする機会が増えていたから。私たちは全力で日本人女性の感覚に寄り添える存在でいたいと議論を重ねてきた。
近藤:原価率を犠牲にしても、価格は手頃でもクオリティーに徹底的にこだわった。メッセージや哲学をブランドに込めて、国内やアジアの女性から愛用してもらえる存在になる。将来的に売り上げ規模50億円を達成するためには必要なことだ。
WWD:店舗は「スナイデル」同様サステナビリティを体現する。
近藤:製品が直線的な印象のため、店舗は「サステナブルモード」をコンセプトに曲線やアートのような有機的なイメージにする。「スナイデル」の店舗でも採用する再生資源やリサイクル可能な素材を什器や床、壁などに活用しながら、飽きのこないデザインにする。
小木:店舗ではリサイクルプログラムを導入する。今後はアップサイクルを予定するなど、サステナブルな取り組みは積極的に実施していく。
石川:あらゆるマーケティング活動の一部にサステナブルやクリーンビューティの取り組みをちりばめてお客さまに気づきのきっかけを提供したい。
WWD:海外進出も同時に進める。
近藤:日本で実績を積みながら、同時進行で各国の薬事調整などを進める。主なターゲットは中国。「スナイデル」は海外が72店舗、国内が33店舗で海外の売り上げ比率が高い。まずは1年間日本で検証・修正を重ね、2年目以降に勝負するのが目標だ。その際にも外資系のファッションブランドのようにコスメの店舗は完全にファッションの店舗と切り離す。日本のファッションブランドの冠を持ったビューティブランドは希少で、さらに同一企業が手掛けるのは皆無に近い。その点も小売店が興味を抱いてくれている。デビュー時は国内の百貨店、ショッピングビルで5店舗を展開するが、今後はナチュラル成分やオーガニックの概念、パッケージ、店の作り方、環境配慮などの凝縮した考え方や思想を持った「スナイデル ビューティ」を世界に発信していく。
「セルヴォーク」「トーン」は右肩上がりで成長
マッシュホールディングス傘下のマッシュビューティーラボは、ナチュラル&オーガニックコスメのセレクトショップ「コスメキッチン」や、コスメに加え食品やインナーケア商品をそろえる「ビープル バイ コスメキッチン」などを運営する。11月にはサステナブルなオーガニックライフを提案、体験できる新業態セレクトショップ「コスメキッチン ヴィレッジ」をオープンし、アウトレットに初進出した。そのほか、ナチュラルオーガニックを基軸に新規成分や効能で美しい肌をかなえるプライベートブランド(以下、PB)を手掛けている。主軸となるのは百貨店コスメとして存在感が高まっている「セルヴォーク」や20〜30代がカラーメイクを楽しめ気軽に購入できる「トーン」だ。コロナ禍でも2ブランドとも好調で「セルヴォーク」は20年度の売上高が前年比6%増の20億8000万円、「トーン」が同73%増の14億6000万円に。いずれも右肩上がりで成長を遂げており、5年後をメドに2ブランドで100億円の売り上げを目指している。それに通じるようなブランドを生み出しPB比率を高めることを命題とすることから、「スナイデル ビューティ」が今春に加わる。