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コロナ禍でパリ在住13年のデザイナーが感じた「生き残る術はD2Cしかあり得えません」

 パリでラグジュアリーランニングウエアブランド「サティスファイ(SATISFY)」のチーフ・テクニカル・オフィサーとして活動する塩見孝太郎さんは、新型コロナウイルス感染拡大でファッション業界にも影響が広がる中、自身のブランドの大きな方向転換を決断した。コロナとどう向き合い、危機をどう乗り越えようとしたのか。パリでのブランディングに加え、グローバルに働くことの意義と醍醐味、そのリアルな実情を聞いた。「WWDジャパン」7月6日号の海外で奮闘するファッション業界の日本人特集で掲載しきれなかったインタビューを紹介する。

WWD:現在の仕事は?

塩見孝太郎「サティスファイ」チーフ・テクニカル・オフィサー(以下、塩見):デザイナーとパタンナーを足して二で割ったような内容です。加えて、100%ヨーロッパ生産の管理も担当しています。売り上げの40%はアメリカ、30%が中国を中心に日本を含むアジアです。以前、パリの百貨店ギャラリー・ラファイエット(GALERIES LAFAYETTE)のメンズ館に出店していたことがあり、現在はアメリカ・ロサンゼルスのセレクトショップ、フレッド シーガル(FRED SEGAL)にショップインショップがあります。

WWD:「クロエ(CHLOE)」に勤務した経験があるそうだが。

塩見:モデリストとして勤務しましたが、大きなブランドの中の服作りにおける数多くのプロセスの一部分を担う歯車でしかなかったことに物足りなさを感じました。もっといろんなことをやってみたいと思った私は、「サティスファイ」のブランド立ち上げに参画しました。

WWD:コロナは、今の仕事にどんな影響を与えた?

塩見:困難とは感じませんでしたが、変化せざるを得ない状況に一気に陥って、弊社はめちゃくちゃ早く対応しました。世界中のトップ・セレクトショップとのビジネスに重点を置いていましたが、それをカットしてD2Cブランドへと大きくかじを切ったのです。それまで卸の売り上げが80%でしたが、その比率を自社のオンラインショップに逆転させるべく力を入れて移行しています。もちろんオンラインショップの売り上げがすぐに跳ね上がるわけではないのですが、今まで他の部分に費やしていたエネルギーと資本を一気に注力しています。ビジネスのモデルチェンジを決定した3月中旬から現在に至るまで、売り上げはいい感じです。

WWD:どんな心境の変化があった?

塩見:コロナ禍で一番感じたことは、何かに固執していては淘汰されるということ。柔軟に対応し、変化し続けることの必要性と重要性です。恐らくコロナショックでパリにアトリエを構えている多くの小規模ブランドは、経営危機に陥る(陥っている)と思います。自転車操業をしている会社ばかりですので、残念ながらつぶれる会社は多いと予想しています。コロナ以前のビジネスモデルは、もはや通用しません。パリ・ファッション・ウイークが開催できなくなり、世界中のバイヤーが来れないわけですから、単純に商品を売る相手がいません。そもそも、世界の状況を見ると、パリやイタリアのハイファッションどころではありません。そんなことに世界は今関心がないのです。今、ブランドが生き残る術は、D2Cしかあり得えません。断言できます。もう一度言いますが、以前のビジネスモデルに固執していては淘汰されます。実店舗に客が来なくなり、ビジネスパートナーであるセレクトショップもガタガタ。となると、生き残る道は実にシンプルに一つだけです。

WWD:今後の目標は?

塩見:シンプルに“ファンを作って増やす”です。今は、オンラインショップで常に新しい風を吹かせて充実させるために、新しいプロダクトの製作や他ブランドとのコラボレーション企画が一気に進み始めています。実は、パリのロックダウン以前よりも今が格段に忙しいです。

WWD:もともと海外勤務を選んだ理由は?

塩見:上田安子服飾専門学校を卒業後、すぐにパリに留学し、インターンを経て、そのままこちらで仕事を始めました。日本で就職しなかった理由は、もっと広い世界を見て勉強したかったからです。

WWD:パリで働く意義は?

塩見:ファッション・ウイーク中をはじめ、世界中からファッション関係者が大勢集まるので、人脈作りに大きな可能性を秘めています。日本で働いた経験がないので比較できませんが、パリでは残業も休日出勤もなく、バカンスがあり、働く環境は優れていると思います。そして、フランス社会におけるファッションの地位が高いこと。ファッションは文化であり、その職に就いている人は尊敬されており、年収はフランス国民の平均以上ではないでしょうか。今の日本は、若い人がファッションに対して夢を抱けないでいますが、フランスでは人気の職種です。

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