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ただの眼鏡屋やあらへんで! 月島の下町でトレンド最先端をゆく新店「ダウンタウン」

 レトロな風情を色濃く残す東京・月島の街。もんじゃ焼き店が軒を並べる名物通りの西中通商店街(通称もんじゃストリート)から東に外れて徒歩1分ほどの住宅街に、アイウエアセレクトショップ「ダウンタウン(DOWNTOWN)」が5月末オープンした。「緊急事態宣言」の解除(5月25日)から徐々ににぎわいを取り戻しつつある下町で、高感度なアイウエアを武器に新たなビジネスチャンスを模索している。

 直訳すれば“下町”の店名の通り、ノスタルジックな街並みに溶け込むような佇まい。昔ながらの駄菓子屋ほどのこぢんまりとした店内(24平方メートル)だが、内装はアーティストの「ノー・ヴァカンシー(NO VACANCY)」が手掛けたネオンサインが彩るクールな雰囲気だ。商品のラインアップも「マツダアイウエア(MATSUDA EYEWEAR)」「アイヴァン(EYEVAN)」「ジャック・デュラン(JACQUES DURAND)」など国内外の感度の高い眼鏡、サングラスをそろえる。ボストン型やウエリントン型など定番を押さえながら、アバンギャルドなフレームもラインアップする。

変貌する下町で高まるファッション需要に着目

 なぜ下町で、それも親和性のなさそうなハイエンドなアイウエアショップを開いたのか。「都心の眼鏡のセレクトショップはすでにオーバーストア。初めから出店の視野には入れていなかった」と原崇「ダウンタウン」オーナーは語る。月島は勝どきや晴海などオフィスタワーの開発が進むエリアにも近いことから、タワーマンションなどに若いパワーカップルが多く住む街に変貌しつつある。「この辺りに住む人は可処分所得が多いし、ファッションを楽しみたいという潜在的なニーズは大きいはず。銀座にも近いけれど、そこに構える店とは距離的にギリギリ(取り扱いブランドの)バッティングにならない。だから絶好の立地だった」。

 レコードプレーヤーから流れるジャズと、メガネのレンズを切り出す機械音が心地よく調和する空間。原氏の共同経営者で眼鏡技術者の中山勇佑氏が、視力検査、加工、調整まで全ての工程を担っている。メガネの聖地・鯖江を有する福井県出身の2人は小学生以来の付き合いだが、当初は選んだ道は違った。中山氏はアイウエアセレクトショップ「グローブスペックス(GLOBE SPECS)」でメガネ一筋のキャリアを歩んだ。かたや原氏はラグジュアリーブランドの婦人服の販売員とメンズセレクトショップのバイヤーを経験し、3年前に眼鏡業界に入ったばかりだ。

 2人が再び結びついたのは、「アイウエアショップはファッションとメガネのスペシャリスト、両方がそろってこそ本物の提案ができる」という考えで意気投合したから。「アイウエアショップは『メガネ一筋』のキャリアの方がやっているところばかり。僕(原氏)から見ると、ファッション目線の提案が物足りないと感じていた。かといってアパレルの店が付け焼き刃的にアイウエアの別注企画をしようにも、服と眼鏡では展示会から納品までのスケジュール感も全然違うから難しい。違う畑を歩んできた僕ら2人だからこそ提案できる価値があると思った」(原氏)。

 店名は、誰もが知るあの超大物お笑いコンビにもあやかっている。「ボケとツッコミではないけれど(笑)。阿吽の呼吸で、銀座からも足を運んでもらえるような話題性のある店を作れたらいい」。

コロナで人生観がリセット メガネは「自分探しの手段」

 数字の「2」が眼鏡のテンプル、「0」がレンズの形にも見えることから、「2020年=メガネの年」――。そんな縁起のよさに期待したものの、開業前に新型コロナが直撃。不安の中でのオープンとなったが、開店初日から近隣に住む家族連れが店を訪れ、手応えを感じている。「数万円のメガネフレームを試着し、購入を即決するようなお子さま連れのご夫婦方もいらっしゃって、正直驚いている」。

 店の外壁には「lookin' for the face(新しい顔を探そう)」と記した看板を掲げた。「メガネは、掛けるだけで普段と違う自分を発見したり、演出したりする力がある。今は大変な状況だけれど、一方であらゆる人の人生観、価値観がリセットされている。新しい自分が見つかることを期待して、メガネを手に取る人が増えているのかも。今、お客さまがお店に来てくださっているのは、古い街並みに新しい店ができたという『ちょっとした違和感』がきっかけかもしれない。だがゆくゆくはアイウエアの価値、投資する意味をこの下町中に広げていくという気概でやっていきたい」。

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