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ケリング、アジア地域がけん引して19年度も増収 新型肺炎の影響は現在のところ限定的

 ケリング(KERING)の2019年12月通期決算は、売上高が前期比16.2%増の158億8350万ユーロ(約1兆9060億円)、営業利益は同23.8%増の46億980万ユーロ(約5531億円)、純利益は同37.8%減の23億3380万ユーロ(約2800億円)だった。純利益の減益は、「グッチ(GUCCI)」の税金未払い問題に関してイタリア当局との合意に基づき19年5月に課税に関する経常外支出があったことによる。また、18年度に「プーマ(PUMA)」を売却して特別利益を計上していることも影響した。これらの要因を除いた場合、純利益は同15.1%増の32億1150万ユーロ(約3853億円)となる。

 地域別の売上高は、西欧が同14.5%増の51億2020万ユーロ(約6144億円)、北米が同12.3%増の30億3970万ユーロ(約3647億円)、日本を除くアジア太平洋地域が同22.6%増の54億2160万ユーロ(約6505億円)、日本が同13.1%増の13億980万ユーロ(約1571億円)といずれも好調だった。

 ブランド別の売上高では、「グッチ(GUCCI)」が同16.2%増の96億2840万ユーロ(約1兆1554億円)、「サンローラン(SAINT LAURENT)」が同17.5%増の20億4910万ユーロ(約2458億円)、「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」が同5.2%増の11億6760万ユーロ(約1401億円)だった。

 フランソワ・アンリ・ピノー(Francois-Henri Pinault)会長兼最高経営責任者(CEO)は、「アジア太平洋地域の力強い成長がけん引し、売上高が150億ユーロ(約1兆8000億円)を大きく上回った。また『サンローラン』の売り上げが初めて20億ユーロ(約2400億円)の大台に乗り、同じく『バレンシアガ(BALENCIAGA)』も10億ユーロ(約1200億円)を超えるなど、19年度も引き続き素晴らしい業績を上げることができた」とアナリスト向けの決算説明会で語った。

 新型コロナウイルスの影響については、「1月24日までの売り上げは19年から継続して非常に好調だったが、感染拡大を防ぐための渡航制限措置などが取られた後はその影響をやや受けている。しかし中国市場のダイナミックさや回復力の高さを考えると、事態の収束後は速やかに復調するだろう。当社は中国にいる従業員の安全を守るため、マスクの着用を義務付け、オフィスや店舗を2時間ごとに消毒し、公共の交通機関を使わずに通勤できるようタクシーを手配するなど、あらゆる手段を講じている」と説明した。

 現在、同社は傘下ブランドが中国で展開している店舗の半分を一時的に休業し、残りの半分も営業時間を短縮している。2月18~24日にはミラノで、2月24~3月3日にはパリでそれぞれファッション・ウイークが開催されるが、中国からのバイヤーやプレスの多くは渡航や入国の制限措置などにより来場できないことが予想されている。ミラノ・コレクションに参加する「グッチ」でも、来場者が30%程度減ると予想しているものの、入場に関して特別な“安全対策”は取らないという。ピノー会長兼CEOは、「当社が擁するブランドのショーでは、もちろん中国人の来場者もいつも通りに歓迎する。私の隣に座っていただいても構わない」と述べた。

 アパレルの一大生産地である中国で新型肺炎が発生したことにより、さまざまなブランドのサプライチェーンにも大きな影響が出ているが、ケリングはイタリアでも生産を行っているため、20-21年秋冬コレクションの準備に多少の遅れが出る可能性がある程度だという。第4四半期は、長期化しているデモの影響で香港の売り上げが前年同期比で約50%減と大幅に下落した一方で、中国本土の売り上げは同30%以上の伸びを見せた。同社の売上高に占める中国人顧客の割合はおよそ30%とラグジュアリーセクターの平均的な数値だが、当面は中国人観光客が減少することを受けて、西欧の地元客の掘り起こしに力を入れていく。ピノー会長兼CEOは、「第4四半期も中国市場は大きく成長しており、新型肺炎のような個別の事象はあるものの、ラグジュアリー業界が今後も力強く成長することに疑いはない。傘下ブランドの見通しも非常によく、引き続き自信を持って事業を推進する」と話した。

 一方で、ジャン・マルク・デュプレ(Jean-Marc Duplaix)最高財務責任者は、「今後の事態について予測することは非常に難しい。19年1月から見られる(地政学上の不確実性や景気減速などの)動きが20年2月以降も続くようであれば、ラグジュアリー業界全体に、そして『グッチ』などのブランドにマイナスの影響を与える可能性もある」と慎重な姿勢を見せた。

 「グッチ」は19年度も既存店ベースの売上高が前期比13.3%増と好調ではあるものの、17年度の同45%、18年度の同37%には遠く及ばない。しかしピノー会長兼CEOは、「長期的に見て、これからも業界水準をはるかに上回る成長が可能なブランドだ」とした。「グッチ」は世界中の店舗のうち6割を改装しており、残り4割も今後2年間で改装する。また「グッチ」は2月17日に、ロサンゼルスにレストラン「グッチ オステリア ダ マッシモ ボットゥーラ(GUCCI OSTERIA DA MASSIMO BOTTURA)」をオープンする。18年1月には伊フィレンツェにギャラリーやショップ、レストランなどが併設された「グッチ ガーデン(GUCCI GARDEN)」を開店しており、ロサンゼルスは同ブランドが手掛ける2店目のレストランとなるが、数カ月後には東京にも「グッチ オステリア」をオープンするという。

 「グッチ」といえば、アレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)=クリエイティブ・ディレクターの監修の下、19年5月に発売した新リップスティックが大成功している。しかし、ピノー会長兼CEOはそのライセンス生産を行っているコティ(COTY)に強い不満を感じているようだ。「リップスティックには非常に大きな可能性があるのに、それを生かしきれていないスピードの遅さにフラストレーションを覚えている。『サンローラン』は『グッチ』の5分の1程度の売り上げだが、ロレアル(L'OREAL)とのライセンス契約ではるかに大きなビューティ事業を展開している」と強い語調でコティを非難した。

 ほかに好調なブランドとして、ピノー会長兼CEOは「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」を挙げた。既存店ベースで同2.2%増の11億6760万ユーロ(約1401億円)と成長率は低いものの、それは大幅な値下げをしていたことも理由だと話す。「20年は値下げをせずに販売しているが、今のところとても好調だ」。

 19年12月には、ケリングがモンクレール(MONCLER)を買収するのではないかと米メディアが関係筋の情報として報じた。しかしピノー会長兼CEOは、「そのような話はない。モンクレールのレモ・ルッフィーニ(Remo Ruffini)会長兼CEOとは定期的に連絡を取り合っているが、それは当社が先導するファッション協定についての話題がメインだ」とうわさを一蹴した。