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ファッションサークル「服飾デザイン研究会」出身 前多空が選んだスタイリストの道【学生リポーターが行く!】

PROFILE: 前多空/スタイリスト

前多空/スタイリスト
PROFILE: (まえだ・そら)立教大学在学中は「服飾デザイン研究会」所属。在学中に休学し、米・ニューヨークへ留学し、現地で「ケイト・スペード ニューヨーク」のキャンペーン撮影に参加したことをきっかけに、スタイリストを志す。その後、仏・パリでスタイリストのアシスタントを経験。帰国後は大学に通いながら、スタイリストのアシスタントとスニーカーブランド「オーエーオー」でのインターンを約2年半続ける。2025年3月に立教大学を卒業し、同年9月に独立。現在は日本を拠点に、ファッションショーや撮影などのスタイリングを手掛けるほか、定期的にパリに滞在し活動の幅を広げる

連載【学生リポーターが行く!】では、ファッション&ビューティ業界の気になるヒト、モノ、コトに学生が突撃し、リポーターとしてインタビューを行う。今回は立教大学を卒業し、現在スタイリストとして活躍する前多空を、同じく立教大学に通う井堤寛太さんが訪問。

出身高校も同じで、立教大学のファッションサークル「服飾デザイン研究会(以下、FDL)」に所属していたという共通点を持つ2人。前多に、学生時代の活動からスタイリストを志したきっかけ、現在の仕事、スタイリングに対する考えまでを聞いた。

PROFILE: 井堤寛太/立教大学3年生

井堤寛太/立教大学3年生
PROFILE: (いづつみ・かんた)ファッションサークル「服飾デザイン研究会(FDL)」代表。「高校時代から前多さんのことを知っていて、『FDL』のことを知ったきっかけでもあります。同じサークル出身ということで、どんなふうに今のキャリアを選んだのか聞きたいです」

ファッションサークルで培った企画力と、
現在につながる人脈

井堤寛太(以下、井堤):元々、ファッションサークル「FDL」に所属していたとお聞きしました。僕も現在代表を務めているので、前多さんが「FDL」でどのような活動をしていたのかお聞きしたいです。

前多空(以下、前多):「FDL」という団体では、学生だけで年に2回ファッションショーを行います。協賛を募って資金を集めるところから、デザイン、演出、プレスまで全て自分たちで担当します。私は演出担当で、モデルの歩き方やスピード、音楽、照明など、ショー全体の見せ方を考えていました。

井堤:在学中、「FDL」に入っていてよかったと思うことはありますか?

前多:一番は、同じ趣味を持つ友だちに出会えたことです。立教大学は4年制大学で、専門学校と比較してファッション業界に進む人は多くはありません。その中で「FDL」にはファッションが好きな人が集まっていて、私の代は特に業界に進む人が多かった。大学にいるだけでは気付けなかった将来の選択肢を知ることができました。

井堤:「FDL」での経験が生かされていると思うことはありますか?

前多:今も当時出会った人と仕事をすることも多いので、直接的につながっていると思います。実はついこの前まで一緒に住んでいた友だちも、「FDL」で出会った仲間です。

前回のファッション・ウイークでは、「FDL」のメンバーにも協力してもらい、パリ・ファッション・ウイークのショーをカフェでライブ視聴し、参加者同士で感想を交わす「オープンランウェイ」というイベントを開催しました。学生時代に協力していただいた企業にもPRをお願いするなど、当時培った「周囲を巻き込んで企画する力」は今も生きています。

開催しようと思ったきっかけは、パリで“ラ・ウォッチパーティー”というイベントに参加したことです。ショーというと、会場では静かに見るイメージがありますが、そこではライブ観戦のようにみんなで盛り上がっていたのがすごく新鮮でした。インビテーションがなくてもショーを楽しめるし、その権利は誰にでもあると思って、日本でもやってみたいと思いました。

ニューヨークで魅せられた
スタイリストという仕事

井堤:前多さんがスタイリストになろうと思った経緯とは?

前多:立教大学在学中に休学してニューヨークへ留学し、語学を学びながら、ヘアメイクさんのSNS用動画を撮影するアルバイトをしていました。その縁で「ケイト・スペード ニューヨーク」のキャンペーン撮影に同行し、そこで初めてスタイリストの仕事を初めて見ることができました。

井堤:それまではスタイリストを目指していなかったのでしょうか?

前多:もちろん職業としては知っていましたが、興味を持つようになったのはその現場がきっかけです。一気に興味を持って、「スタイリストになるには何をしたらいいですか」と聞いたら、まずはアシスタントについた方がいいと教えてもらいました。

ニューヨークでの留学後はパリに3カ月滞在し、現地のスタイリストに「無給でもいいからやらせてほしい」とDMを送り、アシスタントとして現場を経験させてもらいました。実際に仕事を経験して楽しさを知り、「絶対にスタイリストになろう」と思いました。

帰国後は大学に通いながら、日本でスタイリストのアシスタントになると同時に、生活費を補うためスニーカーブランド「オーエーオー(OAO)」でインターンとして働きました。師匠や「オーエーオー」の人たちを含め、尊敬できる大人にたくさん出会えた時期だったと思います。仕事だけではなく、日本で働くことや社会について教えてもらうことができ、今にもつながる大切な経験ができました。その後、アシスタントとインターンを約2年半続ける中で、徐々に個人でも仕事を受けるようになり、25年3月に大学を卒業し、同年9月にスタイリストとして独立しました。

インスピレーション源は
「生活が見える服」

ファッションサークル「服飾デザイン研究会」出身 前多空が選んだスタイリストの道【学生リポーターが行く!】

井堤:普段、どのようなものに影響を受けていますか?

前多:街の人の服です。どの都市でも、歩いていていいなと思った人には声をかけて、写真を撮らせてもらいます。駅で電車を待っている人や犬を散歩している人など、必ずしもファッションがすごく好きな人だけではありません。例えば「自転車に乗るからこういう格好をしている」とか、その人の生活が表れているスタイリングが好きです。撮影させてもらった写真は年代ごとにフォルダに保存し、定期的に見返すことで、「この時期はこういうものが好きだったんだな」と自分自身の好みを理解できます。スタイリストとして、「自分が何を好きなのか」を把握しておくことは大切だと思っています。

井堤:コレクションのランウエイを参考にすることは?

前多:基本的にはよく見ていますが、自分の中ではトレンドを把握するためのものという位置付けです。自分のスタイリングを考える上では、生活と結び付いた服を見ることの方が多いかもしれません。

「スタイリングは言語のようなもの」

井堤:前多さんにとって、「良いスタイリング」とは?

前多:自分にとってスタイリングは、言語のようなものだと思っています。着る人の思いや、その服を作った人の思い、着る人のその時の感情や生活を伝える手段の1つ。だから、良いスタイリングとは「良い伝達ができていること」なのかなと思います。

井堤:実際の撮影では、着る人とのコミュニケーションも重視していますか?

前多:かなり重視しています。撮影当日に初めて出会う人でも、本人の意見を聞きながら最終的に一緒に選んでいくことも多いです。普段着ている服に近い形の方が本人が格好よく見えることもあるので、「普段だったらどちらを着ますか」と聞いてみたり。無理をしたように見せず、その人のリアルを残したいので、コミュニケーションを取りながらスタイリングを完成させるようにしています。

井堤:ほかにスタイリングで大切にしていることは?

前多:ジェンダーレスであることです。「スカートだから男性には着せない」といった固定観念はいったん外して考えます。性別にかかわらず、どんな服でも着ることができるという考えは根底にあります。

日本とパリを行き来して見えてきたこと

ファッションサークル「服飾デザイン研究会」出身 前多空が選んだスタイリストの道【学生リポーターが行く!】

井堤:現在も頻繁にパリに行っている印象ですが、パリを好きになったきっかけは?

前多:ニューヨークにいたとき、一緒に暮らしていた同性愛者のカップルから「フランスはLGBTQ+に対してオープンで、生きやすい」と聞き、興味を持つようになりました。そんな場所で自分の好きなことをやれたらいいなと思って、行ってみたらすごく好きになって、今では1年のうち2〜3カ月ほどパリで過ごすようにしています。日本ブランドの撮影を現地で行ったり、ファッションを見るためのリサーチも兼ねて行く感じです。

井堤:海外経験が多いですが、日本で服を着る上で、窮屈さを感じることはありますか?

前多:あります。「今日は電車に乗るから、この服は少し透けすぎるかな」と考えたり、ブラをしないことに対する視線を気にしたり。社会的なフィルターによって「これはダメ」とされることが多いように感じます。自分自身もそれを気にして服を選んでしまうので、小さなストレスはあります。

でも逆に、仕事のしやすさは圧倒的に日本が勝ると思います。みんな礼儀がしっかりしていますし、レスポンスも早い。深夜には連絡を送らないなど、相手のことを考えて仕事をしている人も多い。それはすごくいいところだと思います。

キャリアに悩んだとき、
揺らがないためのアドバイス

井堤:一般企業に就職せず、スタイリストになることへの不安はありませんでしたか?

前多:すごくありました。実は一般企業の面接も受けていて、自分の中で「大学を卒業する3月までに、一般企業の初任給くらいを自分の仕事で稼げるようになる」と目標を決めていて、それができなかったら就職しようと思っていました。結果的に目標を達成することができたので就職しませんでしたが、たくさん悩みました。当時一番やりたかったのが、スタイリングの仕事と海外に行くこと。それ以上に働きたい会社があれば就職していたと思いますが、なかなか見つからなくて。それなら、今やりたいことを優先しようと思いました。

井堤:これから目指すスタイリスト像は?

前多:日本以外でももっと仕事ができるスタイリストになりたいです。また、アシスタントを含めて周囲の人を大切にできる人でいたい。性別によって「この服は着られる、着られない」と分けるような考え方を減らすための動きもしていきたいです。

井堤:最後に、これからファッション業界を目指す学生にアドバイスをお願いします。

前多:自分が好きなものがあること自体、すごくいいことだと思います。好きなものを見つけるまでに時間がかかる人もいる中で、「服が好き」と言えるものがあるのは本当にラッキー。それなら突き進んだ方がいいし、もし仕事にできるならやった方がいいと思います。

一般的に「これがいい」とされているものではなく、自分が好きなものを突き詰めて、「自分の中に何があるのか」を知っておく。そうすれば、何かあったときにも揺らがないはずです。

ファッションサークル「服飾デザイン研究会」出身 前多空が選んだスタイリストの道【学生リポーターが行く!】

PHOTOS:KAZUSHI TOYOTA

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