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スター性と協調性の調和 若手の活躍が目立つ人気ヘアサロン「siki」の磯田基徳CEOに採用と育成のポイントを聞いた

PROFILE: 磯田基徳/「シキ(siki)」グループCEO

PROFILE: (いそだ・もとのり)都内2店舗を経て2017年、東京・表参道に「シキ(siki)」をオープン。一躍業界のトップランナーに。現在は東京の他、神奈川・横浜に2店舗、埼玉・大宮に1店舗の計6店舗を展開。11月頃には大阪に新店舗をオープン予定。インスタグラム(@isodango)のフォロアー数約4.2万人 PHOTO:RYUSEI MORIKAWA

都内に3店舗、横浜に2店舗、埼玉・大宮に1店舗を展開する人気ヘアサロン「シキ(siki)」は、トレンドセッターサロンとして第一線を走る一方で、“若手が活躍するサロン”としても注目を集めている。業界全体で“採用難”が課題となっている時世に、順調に採用を続け、かつ育成においても他店から参考とされる同サロン。その秘訣を、磯田基徳「シキ」グループCEOに聞いた。

WWD:採用基準や、新人に求めているものは?

磯田基徳「シキ」グループCEO(以下、磯田):採用基準は、トレンドや時代に合わせて毎年変えています。例えば2年ほど前までは“スター性がある人”を基準にしていました。今は個人のパーソナリティーが強くないと、特に東京では輝けない時代なので。でも去年は“美容が好きな人”を基準にして、これまでやっていなかった実技試験を設けて、美容好きのレベルを測ることもしました。そして今年は、トータル的なバランスを見ています。

WWD:やはり“個”は大事?

磯田:そうですね。技術はもちろん大事ですが、今は個人としての魅力も、集客に大いに関わってくる時代です。人柄や内面、そして外見も含めて、自分の魅力をアピールする力がないと厳しい。前に出る勇気がある人や、潜在的にそういう能力を秘めている人を選ぶようになりました。

WWD:採用試験は面接が中心?

磯田:僕らがやっているのは動画審査です。数年前に、紙の履歴書では何も分からないということで、書類選考はやめました。一次審査として、30秒の自己PR動画を送ってもらっています。縦でも横でも、編集の有無も問わず、とにかく30秒で自分をPRしてもらう。その動画をすべて見て、通過者が次の面接に進むという流れです。

WWD:動画はどのような点を見ている?

磯田:今はTikTokやインスタグラムのリールなど、動画スキルも必要なので、動画の構成なども見ます。ただ、内容は本当に何でもよくて、リフティングをしたり、ダンスをしたり、歌ったり、語ったり。応募者の人柄が紙よりも伝わってきます。熱意なども含め、いろいろなところを見ています。

WWD:面接ではどのような点を見ている?

磯田:面接でやることも毎年変えていますが、例えば「3分PR」というものがあります。3分間を与えるので、好きなことを何でもやってください、と。今年はディスカッションもやりました。用意してきた言葉を話してもらうより、その場で生まれるものを重視しています。無理のない程度の無茶振りをして、アクティブな感じで進めています。

WWD:「3分アピール」では、どのようなことをする?

磯田:30秒の自己PR動画の延長線上という感じで、生い立ちを語る人もいれば、特技を披露する人もいます。モデルを呼んできて施術する人もいました。紙芝居で自分の生い立ちを話す人もいて、本当にさまざまです。

WWD:ディスカッションは?

磯田:5〜6人のグループで、3〜5分といった時間を決めて行います。テーマをその場で投げて、「はい、始めてください」とすぐにスタートします。考える時間はありません。誰から話すか、誰がまとめるか、誰が肯定的な意見を言うかなど、チームでどう動くかを見ています。僕らは仲間意識が強いサロンなので、そういった点を重視しています。

WWD:技術力は採用時点ではあまり関係ない?

磯田:去年の採用で実技試験をやってみたのですが、今回はやめました。どれだけ練習したかという熱量は分かりますが、それはスタイルブックを見れば分かるかなと。

WWD:応募者のインスタグラムなどは見る?

磯田:全部見ます。フォロワー数はそこまで重視しませんが、多いに越したことはないです。数が多ければ良いというわけでも、少なければダメというわけでもありません。ただ、フォロワー数は努力の数でもあるので、努力できるという点は一つの価値として認めてもいいかなと思っています。

WWD:スタッフのキャラクターも、サロンのブランディングの一つ。「シキ」ならではの、求める人物像はある?

磯田:うちは6店舗で約70人と規模が大きくなりましたが、アットホームさやチーム性を大事にしているので、協調性がある人が多いです。スター性と協調性は相反するものかもしれませんが、その調和が取れる人を求めています。スター性があっても協調性がなかったり、逆に協調性が強すぎて積極性がなかったりすると、うちには合わないかもしれません。ブランディングはすべて掛け算なので、その掛け算ができる人を選んでいるのだと思います。

WWD:最終的に何人くらい採用する?

磯田:10人前後ですね。サロンの規模が今6店舗なので、1店舗に2人くらい配属するイメージです。

WWD:新人は、入社後も面接のイメージ通りに活躍する?

磯田:以前の書類選考や質問ベースの面接では、イメージと全く違う人ばかりでした。大人しいと思っていた人がうるさかったり、その逆だったり、全然違いました(笑)。ただ今の面接方法にしてからは、そういったギャップは少なくなりました。最近は思った通りの活躍をしてくれる人が多いです。うちには「並走」という教育テーマがあり、個人の能力に合わせて並走していく仕組みがあるので、まだまだこれからの人もいますが、皆原石。あとはどう磨くかで輝くと思っています。

「一人に一つの武器を授ける」というイメージでスタッフ教育

WWD:新人教育について、「シキ」ならではのこだわりは?

磯田:一人一人の個性を見て、生かし方や売り方を変えています。個人コンサルに近いですね。その人の好きなこと、個性、そして時代性を掛け合わせて考えています。そういった会話は日常茶飯事です。武器の授け方も人それぞれで、「一人に一つの武器を授ける」というイメージで教育しています。まんべんなくできるようになるのではなく、まずは好きなことや得意なことを一つ伸ばす。例えばハイトーンカラーやレイヤーカットなど、ジャンルを絞って伸ばしていくこともあります。

WWD:カリキュラムはある?

磯田:あります。それは皆同じように進めてもらいます。カリキュラムにプラスして、SNSでの発信やスタイルを打ち出す部分で、個性に合わせた指導をしています。

WWD:スタイリストデビューまでは大体どのくらい?

磯田:一番早くて丸2年です。ただ2年でデビューする人は数年に一人くらいで、大体は3年前後ですね。3年以内にデビューする人もいれば、3年過ぎてもアシスタントを続けている人もいて、本当に人それぞれです。

長く続くサロンにしたい

WWD:東京に集中出店するサロンが多い中、横浜や大宮などに出店しているのは?

磯田:10年続く美容室は2〜3%、20年となると0.数%しかありません。僕は一瞬で終わるのではなく、長く続くサロンにしたい。そう考えたときに、予期せぬ退社やコロナ禍など、さまざまなリスクがあります。「ジル サンダー」に「ジル サンダー+」が、「メゾン マルジェラ」に「エムエム6 メゾン マルジェラ」があるように、セカンドブランドのような形で支え合う仕組みがあれば、例えば東京が厳しくなっても他のエリアでカバーできます。コロナ禍がそうしたリスク分散の重要性を気づかせてくれました。もう一つは、スタッフのキャリアアップのためです。店舗が増えれば、店長やマネージャーといった役職も増え、キャリアパスを提示しやすくなります。

WWD:横浜と大宮を選んだ理由は?

磯田:大宮は、僕の地元が埼玉で、大宮の代表も埼玉出身だからです。横浜はお店のブランディングと、スタッフの力をみて勝負できるなと考えたからです。基本的には「人ありき」ですね。もちろんエリア戦略もありますが、無茶はせず、東京に通える距離というのも考慮しています。

それぞれのエリアで店舗を広げていきたい

WWD:3年後、5年後の「シキ」はどのような姿を目指している?

磯田:個人事業主時代を含めると、今年で9年目になります。来年は10周年です。この9年間で、ようやく胸を張って「教育に力を入れているサロン」と言えるようになりました。文化を作るのには本当に時間がかかり、10年かかったと感じています。文化ができたこれからは、少しずつ繁栄させていきたい、広げていきたいと考えています。

WWD:10周年で何かイベントは予定している?

磯田:やります。かなり大きなイベントを企画していて、もう打ち合わせを始めています。

WWD:10年間、第一線で成長を続けるのは本当にすごい。

磯田:本当にスタッフのおかげです。僕自身もたくさんの失敗を繰り返してきました。特に最初の5年間は苦労しましたね。勢いのまま独立したので、トライ&エラーの連続でした。順調に見えるかもしれませんが、自分の中では苦労と失敗を重ねて今に至るという感じです。

WWD:スタッフ教育のやり方も、ようやく確立されてきた?

磯田:そうですね、文化ができてきたと感じています。だから、外部の要因では崩れない自信があります。それを作るのに8〜9年かかりました。目の前のスタッフを幸せにできなければ、その先はありません。手段と目的を履き違えないよう、慎重に一つずつ階段を上ってきました。

WWD:経営で参考にしている人物は?

磯田:特定の誰か一人を参考にしている、ということはありません。僕は色々なことに興味があるので、すごいなと思った美容師さんなどには、自分から声をかけて直接話を聞きに行きます。さまざまな人の良いところを自分やサロンにインプットしていくスタイルです。だから、いろいろな人のアイデアがミックスされていますね。もともと人を否定するより肯定したいタイプで、うちのサロンも褒める文化が根付いています。人の良いところを見つけて吸収し、自分やサロンに落とし込んでいくのが得意なんです。

WWD:チームワークを大切にしている。

磯田:サッカー日本代表の森保監督や、侍ジャパンの栗山監督は素晴らしいリーダーだと思います。彼らは昔のリーダー像とは少し違い、選手との距離が近い。僕もそちら側のリーダー像に近いかもしれません。スタッフとの距離は近く、フランクな関係ですが、もちろん進むべき道を示す存在でありたいと思っています。

WWD:今後の計画は?

磯田:新しいエリアとしては、11月頃に大阪に出店する予定です。横浜も大宮も、「ホットペッパービューティー」の売り上げでエリア1位になるなど順調なので、それぞれのエリアで店舗を広げていきたいです。各エリアの代表が主軸となって展開してほしいと思っています。

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