PROFILE: YURI HORIE/フォトグラファー

連載【学生リポーターが行く!】では、ファッション&ビューティ業界の気になるヒト、モノ、コトに学生が突撃し、リポーターとしてインタビューを行う。今回はフォトグラファーとして活動するYURI HORIEを大学3年生の尾嶋咲良さんが訪問。YURIの事務所でインタビューを行った。
PROFILE: 尾嶋咲良/大学3年生

やりたいことがなかった大学時代
卒業後はカメラメーカーに就職
尾嶋咲良(以下、尾嶋):大学時代のYURIさんは、どんなふうに過ごしていたんですか?
YURI HORIE(以下、YURI):中学から大学まで一貫校に通っていました。ずっとやりたいことがなかったんですが、高校2年生のときに韓国にハマって、韓国語を勉強していましたね。その後、大学3〜4年生の1年間、韓国に留学しました。
尾嶋:大学生のときは、クリエイティブな人たちとどのように出会いましたか?
YURI:大学生の頃はほとんど出会っていなかったんじゃないかな。大学のときは友だちで唯一1人だけ、クリエイティブな子がいましたね。その子は大学の在学中の時にクラブでカメラマンをやっていて、会社員になった時もその子にいろいろなことを教えてもらい、今でもたくさん協力してもらっていて、とても感謝しています。
でも「つながり作るぞ」みたいな感じじゃなくて、遊びに行った先で出会ったいろいろな人と何かできるのがいいと思います。やりたいことを口に出すのは大事。言い続けていれば、きっと協力してくれる人がいるはずです。
尾嶋:就職活動中、どのようにキャリアを選んだのでしょうか?
YURI:就職活動の時期、周囲の子はやりたいことがあったけど、私はそういうものが見つからなくて。「なるべく仕事をしないで遊んでいたい」「できれば何もしたくない」みたいなタイプでした。当時はカメラや写真がすごい好きというわけではなかったんですが、卒業後は流れでカメラの会社に入社しました。開発の仕事をしていたのですが、単純作業が多くて退屈してしまい、カメラそのものに触れるようになったのが始まりです。
尾嶋:カメラメーカーで勤務する傍ら、バイイングのお仕事にも携わっていたと聞きました。
YURI:会社員をやりながら、韓国語ができたことから韓国のアパレルブランドのバイイングや、商談の通訳のお手伝いもしていて、そんな流れで写真撮影にも携わらせてもらうようになりました。そんなふうに過ごしていたら、「ビヨンドクローゼット(BEYOND CLOSET)」のMDからソウル・ファッション・ウイークに呼んでもらい、カメラを持って渡航しました。
当時は韓国のインフルエンサー全盛期のタイミングで、会場付近には写真を撮ってほしいおしゃれな人たちがたくさんいるんです。そこでたくさんのスナップを撮って帰国したら、日本の媒体社が買い取ってくれ、少しずつ写真でお金が稼げるようになりました。
カメラの会社で3、4年働いた後、スタジオマンを経験してカメラマンになることも考えていたんですが、「ドロップトーキョー(Droptokyo)」にカメラマンとして雇ってもらえました。2018〜22年くらいまではそこで働いて、海外にもたくさん行かせてもらい、カメラ以外にも編集の仕事などいろいろなことを経験できました。
「ドロップトーキョー」を経て
フリーランスフォトグラファーに

尾嶋:フリーランスになるときは、経済面での不安はなかったんですか?
YURI:「まあ、なんとかなるだろう」って感じでした。実家は都内にあるし、最悪手取りが5万円でも生きていけるんです。過去に借金があった時期もあるし、所持金がゼロになることはあまり怖くないんですよね。
尾嶋:独立するまでに「経験してよかった」と思うことはありますか?
YURI:昭和魂なので(笑)、やっぱり会社員を一度経験できて良かったと思います。礼儀や社会の仕組みを学ぶことができました。個性的な人が多いクリエイティブの世界だからこそ、世間の常識を理解しておくことは大事なんじゃないかな。時代遅れな考え方かもしれないけど、会社に所属していれば学べることは絶対あるから、きつくても少し頑張ってみたらいいんじゃないかな。
私も会社員時代、真夏に6時間ストリートスナップをしたときは「絶対無理!」って思ったけど、今思えばそんなのが無理だったらクリエイターとして生活することなんてもっと無理だと思います。そして何より、そのつらい時期を乗り越えたらやっぱり自分の糧になっているんです。人に騙されたりしても、「人生勉強になった」ってポジティブに考えていったほうがいいんじゃないかな。
あと、お金も経験もない状況から突然挑戦するのは結構大変で、会社員になって収入を得ながらだったら、気持ちに余裕を持って色々考えることができる。「会社で働きながら空いた時間で自分のやりたいことをやって、生計を立てられそうだったら独立していく」というのが私には合っていたと思います。
尾嶋:逆に会社員で大変だと思うことは?
YURI:大変なのは、気が合わない人とも付き合っていかなければいけないこと。個人で活動していたら仕事を断ればいいけど、会社員だとそういうわけにもいかないと思うんです。ただ、クリエイターでもそうじゃなくても、嫌なことは嫌って言っていいんじゃないかな。自分の常識と人の常識は違うし、言われて初めて気づくこともあると思います。私も人にイラついてしまうことはありますが、そういう時は一度ChatGPTに怒りをぶつけて、うまい伝え方を相談しながらなんとか頑張っています(笑)。
YURI HORIEのキャリアを支える
インスピレーション源とコミュニケーションスキル
尾嶋:ご自身のキャリアにおいて、思い入れのある撮影は?
YURI:よく覚えているのはフリーランスになって1年目くらいの頃、「ギャラクシー(GALAXY)」の広告で新しい学校のリーダーズを撮影したのですが、その写真が原宿に大きく掲示されたこと。昔は原宿で毎日ストリートスナップをしていたから、「やってやったぜ!」とグッときましたね。
尾嶋:YURIさんの写真が今のスタイルになるまで、影響を受けた人はいますか?
YURI:「この人!」っていう人本当にいないんですよね。気になった場所に足を運んで、そこからインスピレーションを得ることが多いです。いろいろなものに興味があるので、常にアンテナを張っています。普段からSNSで見つけた展示や面白そうな場所を保存していて、時間があればすぐに行きますね。
いろいろな展示を見る中で、写真だけではなく、空間ごと世界観を作っているような写真展はすごくいいなと思います。写真を超えた世界観で伝えた方が人の感覚には刺さるはずだし、難しく考えず感覚で感じて欲しいです。
尾嶋:アートディレクションをするとき、写真の延長線上にアートディレクションがあるのか、もしくはアートディレクションを考えた中の1つに写真があるのか、YURIさんはどのように考えていますか?
YURI:多分アートディレクションが先ですね。いつも撮影の依頼があったときに、日頃から目星をつけていた場所を思い浮かべてイメージして、「だったら写真はこうなるかな」と考えていく感じです。
尾嶋:私自身、自主制作をするときに人に協力をお願いすることが増えてきたんですが、作りたいもののイメージを伝えるときに意識していることがあれば知りたいです。
YURI:いつも私の写真集のデザインをしてくれているのは「ドロップトーキョー」時代に出会った友だちで本当にセンスが良いんです。「こんな感じにしたい」とざっくり伝えたら、全部私の言葉を理解して作ってくれて。だから、最初のうちは自分がフィーリングが合う人を見つける方がやりやすいかも。プロじゃなくても、「ちょっと音楽を作れる」「モデルの経験が少しある」みたいな人はいると思うから、そういう人たちとフィーリングが合えばきっと形になるはず。まずは話してみて、あなたの言葉が伝わる人が良いんじゃないかな。それに慣れてきたら、人への伝え方とかもわかってくると思います。
尾嶋:年齢問わず、どんな人とも打ち解けるコツはありますか?
YURI:私も年上の人はちょっと苦手なんですよね。でも、苦手だったら苦手でいいと思うし、「自分が時代を変えてやるんだ!」くらいの気持ちでいいと思います。そういうコツとかはあまり考えず、萎縮しすぎる必要もない。もし相手に興味を持ったら素直に質問したり、その人の作品が好きだと伝えたとして、嫌な気持ちになる人はいないはず。緊張するかもしれないけど、正直に言ったほうがいいんじゃないかな。もし相手との関係が悪くなったとしても、世の中たくさんの人がいるから大丈夫!
尾嶋:撮影するときなど、緊張することはありますか?
YURI:全然ありますよ。「カメラ壊れないかな」「この撮影、大丈夫かな」とか。そういうのはもちろんあるけど、万全の準備をすることが大事。例えばカメラやレンズが壊れた時のために常に予備を持っていったり、準備を万端にしておくことで安心できます。
でもたくさん撮影をしてきたし、場数を踏んだのも大きいと思います。特にストリートスナップでは鍛えられました。当時はSNSでモデルハントをする様な時代ではなかったし、街で声をかけてもすごい冷たくあしらわれることもたくさんあって。そういった経験があったからこそ、メンタルが強くなったと思います。
尾嶋:いろいろな地を巡って撮影していると思いますが、今どんなことに関心がありますか?チャレンジしたいことは?
YURI:日本は面白いところが沢山あって、時間が足りないくらいです。向島にある大道芸術館はオススメです。まだ詳細は言えないですが、最近も地方に行って新しい写真集を制作中です。来週は北海道に行きます。
今後やってみたいことは、海外での展示。ロサンゼルスかニューヨークがいいな。私の展示はいつも海外からのお客さんが多くて。だから海外で自分の写真がどんなふうに評価されるのか挑戦してみたいです。
尾嶋:最後に、「好き」を仕事にする、ということについて、YURIさんはどう思いますか?
YURI:すごい楽しいけど、苦渋の選択というか、全部が全部好きなことではないと思う。でも多分、普通よりは刺激的。私は刺激が大好きだから楽しいんだけど、でも全部が好きかっていうとそんなことはない。人生において全部、「つらいから楽しい」ってことだと思います。

PHOTOS:KAZUSHI TOYOTA