
HOSOOは、絹に続き大麻(ヘンプ)でも新しい産業を立ち上げる。原料生産から素材開発、製品化までを国内で一貫して行う体制を構築し、大麻の研究・生産・活用が循環する仕組みをつくり、社会実装を目指す。同社は2025年、エイベックス・エンタテインメントから日本古来の大麻布の再現に挑んだヘンプ素材ブランド「マヨタエ(majotae)」事業を継承。26年にはヘンプテキスタイルブランド「ホソオ アーティザナル ヘンプ(HOSOO ARTISANAL HEMP)」と、ヘンプを軸としたメンズウエアライン「ホソオ メン(HOSOO MEN)」を立ち上げ、本格始動した。
大麻は縄文時代から日本で利用され、日本文化の基層を支えてきた繊維である。他方、世界に目を向けると高いCO₂吸収能力に加え、繊維、自動車部材、建材、バイオ燃料など幅広い用途を持つ素材として再評価が進む。日本では24年の法改正を機に、繊維や食品、伝統文化などへの活用に向けて新たな段階に入りつつある。
こうした中、HOSOOは、日本で唯一の大麻研究機関「神事・産業・医療用大麻研究センター」を24年に設立した三重大学と連携した。日本在来種の特性を生かした素材開発を進め、少量多品種による「ラグジュアリー・ヘンプマテリアル」という新たな市場創出を目指す。5年以内を目標に、国産大麻を用いた繊維製品の実用化・販売までつなげる計画だ。(この記事は「WWDJAPAN」2026年7月13日号からの抜粋です)
大麻の扱い、法改正で何が変わった?

新法では「産業・伝統用途」と「医療用途」を明確に分け、それぞれに応じた管理ルールを設ける形になった。「第一種大麻草採取栽培者免許」「第二種大麻草採取栽培者免許」、研究目的の「大麻草研究栽培者免許」という3つの区分がある。第一種免許は、産業利用や神事・伝統文化などを目的とした栽培向けの免許で、THC(テトラヒドロカンナビノール、精神に作用する)含有量が0.3%以下であることが確認された品種に限られる。従来は品種に関係なく、高さ2m以上の柵や有刺鉄線、24時間監視カメラなど厳格な管理体制が求められていたが、新法では一定の条件を満たせば、設置義務が原則不要となった。一方、医療用途を対象とする第二種免許はTHCに薬効が認められているためTHC含有量0.3%以下という基準は設けられていない(製品には厳格な基準がある)。その分、より高度な監視・管理体制の下で栽培が認められる。
HOSOO’S COMMENT:
“古布の品質を超えられるかも検証する”
現在「KYOTO SILK HUB(以下、シルクハブ)」で進める「テクノロジーとクラフトの融合」をヘンプにも展開する。ロボティクスやAI、センシング技術を活用しながら、多様な品種を研究し、それぞれの特性を生かした素材を開発する。この取り組みは突然始まったものではない。吉田真一郎氏の研究を起点に、エイベックスが約15年にわたり蓄積してきた知見を受け継ぎ、今、社会実装に向けた最終段階へと進んでいる。「シルクハブ」構想同様、本格的な産業として成立させるためには、生産拠点や設備への継続的な投資を前提とした長期的な取り組みが不可欠だ。その実現には技術面、産業面双方に課題は多い。技術面では、繊維そのものが硬い大麻を、いかに柔らかくして糸に加工できる状態にするかが大きなテーマとなる。日本ではかつて、ヘンプを土中で発酵させ、微生物の働きによって繊維を柔らかくする技術が用いられていた。こうした伝統的な知見も参照しながら、加工方法や糸づくりのプロセスを改めて研究する。また、品種(DNA)の違いによって繊維の性質や糸の品質は大きく変わるため、品種選定も重要な研究テーマとなる。
一方で、目指す基準はすでに存在する。それは江戸期の大麻布だ。古布をリバース・エンジニアリングしながら、どのような品種や加工工程によってその品質を再現、あるいは超えられるのかを検証する。同時に、産業基盤の整備も欠かせない。誰がヘンプを栽培し、誰が繊維を糸に加工できる状態まで仕上げるのかなど、サプライチェーン全体を設計する必要がある。そのためには、相応の設備や広い生産拠点、そして大規模な投資が求められることから、信頼できる企業や研究機関との連携を前提にプロジェクトを進める。すでに複数のパートナーとの協業は始まっており、今後も幅広い企業や研究機関と協力しながら可能性を広げていく考えだ。
日本唯一の大麻研究機関に聞く
諏訪部圭太
三重大学大学院地域イノベーション学研究科 研究科長・教授 神事・産業・医療用大麻研究センター センター長

大麻を文化や産業を支える
ごく当たり前の選択肢の1つに
ー世界的に大麻が再評価されている経緯は?
諏訪部圭太(以下、諏訪部):大麻に対する見方が大きく変わるきっかけは、2018年。大麻に含まれる成分CBD(カンナビジオール)を主成分とする治療薬「エピディオレックス」(日本では無認可)の登場だった。特に難治性てんかんの治療で高い効果を示した。この成果によって、大麻は単なる嗜好性薬物ではなく、医療に大きく貢献する可能性を持つ植物として再評価されるようになった。薬としての評価だけでなく、繊維などの産業利用に対する本格的な議論もその後、広がった。
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