ファッション業界のご意見番であるコンサルタントの小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。今回はOMO(オンラインとオフラインの融合)の本質について深掘りする。ファッション業界でOMOが叫ばれるようになってから久しいが、その本質を理解し、実際にものにしている企業はどれだけあるだろうか。有力アパレルのデータをもとに、どこよりも詳しく考察する。
コロナ禍を経てECは店舗販売と並ぶアパレルの主要販路となったが、マーケティングのスタンスやマーチャンダイジングの組み方、物流や販促のコスト感覚など、びっくりするほど両者の視点(KPI)は異なる。そのギャップが露呈するのが、両者が交錯するOMOではないか。
アパレル販売に定着したEC
外出が規制されたコロナパンデミック期にアパレルのEC比率は急上昇し、規制が解除されて商業施設に賑わいが戻った後も購買慣習として定着した感があるが、コロナ前19年から直近の25年でアパレル販売のEC比率はどれほど上昇したのだろうか。
経済産業省の「電子商取引に関する市場調査」によれば、「衣類・服飾雑貨」のEC比率は19年の13.87%が24年(25年の発表は8月末になるが大きくは変わらないと思われる)には23.38%と9.51ポイント上昇している。主要な大手アパレルでもユナイテッドアローズ(単体/3月決算)が20.0%から26.3%へ、TSI(ECに強いデイトナインターナショナルの買収も寄与/2月決算)が23.4%から31.0%へ、アンドエスティHD(旧アダストリア/2月決算)が19.6%から29.5%へ、オンワードホールディングス(グループの国内EC展開事業売上対比/2月決算)が14.0%から28.3%へ、パルグループホールディングス(衣料品事業のみ/2月決算)が15.8%から40.8%へ、と各社で絶対水準には格差があるものの最小6.3ポイントから最大25ポイント上昇している。
三陽商会(EC以外の通販も含む/2月決算)のように12.7%から15.2%とわずかしか伸びなかったケースもあるが、同社はSC・路面店販路も19.3%と19年から伸びておらずアウトレットがその7割を占め、百貨店が19年の62.3%から25年の61.8%とほとんど低下していない。同期間にオンワードHDが百貨店を65.7%から24.8%へ、SC他リアル店舗を13.9%から46.9%へ、ECを14.0%から28.3%へと大きく変化させたのと比べれば、販路政策が無策だったと指摘されても致し方あるまい。ECも販路のひとつであり、その比率は自社運営比率も含め、政策的に仕組まれるべきだ。
OMOが進む過程で社内の貢献評価も関わって「EC売上高」の定義が混乱するケースもあるようだが、OMOで先行する欧米企業では受け取り方法の如何によらず「オンライン決済した売上高」と定義されているようで、経済産業省も「受発注がオンラインで行われる取引の金額」と定義している。ECから取り置き・取り寄せ試着して店舗で決済すれば「店舗売上高」であり、ECで最寄りの店舗在庫を引き当ててオンライン決済し店舗受け取りすれば「EC売上高」になるわけだ。
アパレル販売のEC比率はどの程度が適切か?
似たようなアイテムでも各社でパターンや縫製仕様に差があり、試着を欠いては購入が難しいと思われてきたアパレルがここまでECで購入されるようになったのは、バーチャルフィッティングアプリやスタッフスタイリング投稿があってこそだが、顧客アプリや「店舗での試着体験」というOMO効果も大きかったと思われる。
パターンや縫製仕様が確立しているはずの「ユニクロ(UNIQLO)」や「ギャップ(GAP)」でも、デザインや年式が違えばフィットは少なからず異なるから、手持ちのアイテムと同じアイテムでも試着しないと失敗するケースがある。「ユニクロ」でも「ユニクロ:シー(UNIQLO:C)」はかなりのオーバーサイズだから、「ユニクロ」と同じだと思ってサイズを選ぶと失敗は必定だ。ましてやデザイン性やトレンド性の強いブランドでは毎シーズン、試着してフィットを確かめないと危ない。
「店舗での試着体験」というOMO効果があってこそ、ここまでアパレルのECは伸びてきたのであり、バーチャルフィッティングアプリを過信すべきではない。ECに依存するD2Cアパレルが地域ごとに定期的にポップアップストア(期間限定店舗)を繰り返し、新規顧客を開発し既存顧客とコミュニケーションするのは必定なのだ。
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