
自然界からのインスピレーションやアウトドアウエアの要素を都会的な装いと結びつけるクリエイションも目立った。「自然光の下でも成り立つ洋服が作りたかった」というジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)による「ディオール(DIOR)」を筆頭に、気候や周囲の環境により進化する衣服に目を向けた「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」やデザイナー自身のライフスタイルを反映した「マメ クロゴウチ(MAME KUROGOUCHI)」まで、向き合い方はさまざま。演出にも自然とのつながりの表現が見られた。(この記事は「WWDJAPAN」2026年3月23日号からの抜粋です)
「ディオール」
自然体で自然に囲まれる
パリ市内の庭園が着想源
ジョナサンによる2度目のウィメンズ・プレタポルテは、1カ月前に発表した26年春夏クチュールとシンクロ。チュイルリー庭園を舞台に開催したショーは、自然の中でパリ市民が何気ない交流を交わすかのように、クチュールに通じる自然のモチーフを詰め込んだ洋服をジーンズなどと合わせてカジュアルダウンする。花や花弁を模したパーツやディテールは、金糸や銀糸をたっぷり使った貴族的な素材や卓越したプリーツワークなどのテクニックで成形している。裾をペプラムに仕上げたニットのジャケット、カスケード状のフリルをスパンコール装飾に置き換えたジーンズ、優雅なシルエットをデイタイムに楽しむ楊柳パンツなど、昼の庭園で会話を楽しむこともできるほど、自然体のカジュアルマインド。
「ルイ・ヴィトン」
アルプス山脈に代表されるような、雄大な山々の稜線と、そこで暮らす人々の装いに着想を得た。序盤から連打したのは、切り立った崖を思わせる直線的なパワーショルダーのトップス。合わせたのは、極端にフレアするパンツ。胸元にギャザーをたっぷり寄せたテントライン、同じくウエストで生地を手繰り寄せたバルーンシルエットなど、今季はフォルムを大胆に誇張した。そこに加えたのは、毛足の長いファー素材や相反するハイテク素材。
「ロエベ」
今季は男女合同ショーを開いた。鮮やかな色やスポーティーな感覚、手仕事と先端技術を融合したクラフトを生かして楽天的な新「ロエベ(LOEWE)」像を築きつつあるジャック・マッコロー(Jack McCollough)とラザロ・ヘルナンデス(Lazaro Hernandez)は、モノ作りの「喜び」に着目。コジマ・フォン・ボニン(Cosima von Bonin)の作品に見られる造形やモチーフを取り入れた。空気でふくらむコートの裏地やアウトドアジャケットからトリマーが刈り込んだシアリングアウターまで、プレイフルで実験的な提案が目を引く。
「エルメス」
苔を敷いた会場で描いたのは、黄昏から夜を思わせる色をまとい、信じる道を歩む女性の姿。乗馬服やユーティリティーの要素を取り入れたレザーウエアや、体に沿うニット、Aラインのミニスカート、サイハイブーツで、フェミニン×マスキュリンなスタイルを作り上げた。オーストリッチなどぜいたくな素材使いも、「エルメス(HERMES)」ならでは。
「マメ クロゴウチ」
東京と長野の山に構えるアトリエを行き来する黒河内真衣子の今を反映した。シアー生地でアノラックを作ったり、シェルパーカ風のドレスコートに植物が描かれた和紙をのせたりと、クラフトを生かす繊細なスタイルに加えたアウトドア要素が新鮮だ。キーカラーは、山と和ガラスに共通する緑。土屋鞄製造所との協業によるバッグも発表した。