
愛知県初のアウトレットモールとして11月4日開業した「三井アウトレットパーク(MOP)岡崎」を取材した際、最寄り駅の名鉄・本宿駅で面白い光景を見ました。
本宿駅は岡崎市郊外の駅(1日の乗降客数6000人前後)です。MOP岡崎の開業に伴い、改札口やホームなど駅構内にはグランドオープンを知らせる広告がにぎやかに掲示されていました。驚いたのは、それに負けないくらいイオンモール岡崎とイオンモール豊川の広告があるのです。ホームや柱巻きでは両施設の広告が並び合います。競合する地元の商業施設同士が、駅構内で火花を散らしていました。
イオンモール岡崎の広告は、女性のビジュアルに大きな活字で下記のように綴られていました。
「正直、他のモールとは違いますので。(岡崎在住30年目 ママ)」
直接は言及しないまでも、「他のモール」がMOP岡崎を指すのは明らかです。イオンモール岡崎は本宿駅から電車でもクルマもでも25分ほどかかる。にもかかわらず、ここにたくさんの広告を出すのは、MOP岡崎を訪れる客への訴求のためです。
「岡崎在住30年目 ママ」という設定もポイントです。イオンモール岡崎は1995年9月に開業したジャスコ岡崎南店から始まっており、2000年に現在のショッピングセンター業態に発展した歴史があります。つまり「岡崎在住30年目 ママ」とは、イオンモール岡崎そのものだと思われます。30年にわたって岡崎の地元住民に支持されてきたアドバンテージを甘く見るなよ、私たちは新参者の「他のモールとは違いますので」――。深読みしすぎかもしれませんが、そんな思いが込められているとみて間違いないでしょう。
イオンモール岡崎は全国にあるイオンモールの中でも上位の売上高を誇ります。20年8月まで百貨店の西武岡崎店が核テナントとして営業していました。撤退した跡地の一部には、ジェイアール名古屋タカシマヤフードメゾンが入り、デパ地下の惣菜やスイーツを販売しています。ファッションでも人気ブランドが揃い踏みしています。
プロパーのショッピングセンターと値引き品を売るアウトレットモールの業態の違いこそあれ、岡崎市を中心とした三河地方で客の争奪戦になることは間違いない。
こうしたライバル企業の対立構造はメディアが報じることはあっても、企業が自分たちであおることは普通ありません。メディアの取材を受けたら「お互いに切磋琢磨して市場を盛り上げたいですね」とでも答えるのが大人の態度でしょう。意図的に対立構造を作り出して話題性を演出する。イオンモールのやんちゃな広告戦略なのです。
エディターズレターとは?
「WWDJAPAN」の編集者から、パーソナルなメッセージをあなたのメールボックスにダイレクトにお届けするメールマガジン。定期購読者(ライトプラン・スタンダードプラン)のみが受け取ることができます。
ファッションやビューティのみならず、テクノロジーやビジネス、グローバル、ダイバーシティなど、みなさまの興味に合わせて、現在8種類のテーマをお選びいただけます。届いたメールには直接返信をすることもできます。