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高畑充希・中島健人らが語る映画界の女性とキャスティングという盲点 ケリング主催「ウーマン・イン・モーション」で

「グッチ(GUCCI)」「サンローラン(SAINT LAURENT)」を擁するケリング(KERING)は11月2日、第38回東京国際映画祭の公式プログラムの一環として、映画界で活躍する女性に焦点を当てたトークイベント「ウーマン・イン・モーション」をTOHOシネマズ 六本木ヒルズで開催した。オープニングでは映画監督の是枝裕和がスピーチを行い、その後のトークには俳優の高畑充希、俳優・アーティストの中島健人、キャスティング・ディレクターのデブラ・ゼイン(Debra Zane)、プロデューサーの福間美由紀が登壇した。

キャスティング・ディレクター、マリオン・ドハティの功績

来年の第98回アカデミー賞で「キャスティング賞」が新設されることを受け、今回のメインテーマは「キャスティングの重要性」。トークに先立ち、現代のキャスティング・ディレクターの礎を築いた女性マリオン・ドハティ(Marion Dougherty)の功績を描くドキュメンタリー映画「キャスティング・ディレクター ハリウッドの顔を変えた女性」が上映された。

ドハティは1950〜90年代に活躍し、テレビシリーズ「アンタッチャブル(The Untouchables)」や映画「ニューヨーク東8番街の奇跡(Batteries Not Included)」などを手がけた。当時まだ確立されていなかったキャスティング・ディレクターという職業の地位を築いたパイオニアであり、無名時代のアル・パチーノ(Al Pacino)やダスティン・ホフマン(Dustin Hoffman)を見出したことでも知られる。映画界の目利きとして数々の功績を残した彼女だが、その仕事は長らく正当に評価されず、公に賞を受けることもないまま2011年に逝去した。

現在キャスティング・ディレクターとしてハリウッドで活動するゼインは、「アメリカン・ビューティ(American Beauty)」や「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン(Catch Me If You Can)」など多くのヒット作を手がけてきた。長らく「キャスティング賞」が認められなかった現状についてゼインは、「これまで“女性の仕事”と見なされていた部分もあると思います。ようやくその価値が理解され始めた。記念すべき年になると思いますし、結果がどうなるのかとても楽しみです」と話した。

高畑は、役を与えられる立場としての意識の変化を振り返った。「10代の頃はこの役をやりたいという思いが強かったのですが、今は役に呼ばれる感覚に近い。自分をよく見てくださる方が選んでくれた役だからこそ挑戦してみると、新しい一面や課題に気づくことがある。そう思えるようになってから、いろんなことがうまく回るようになった気がします」と語り、キャスティングの目利き力を信じる大切さを示した。

トーク後半では、映画における女性像の変化について議論が広がった。映画好きとしても知られる中島は、「『プロミシング・ヤング・ウーマン(Promising Young Woman)』のように、女性を被害者ではなく主体者として描く作品から、笑いと感動で包み込みながフェミニズムのメッセージを伝えた『バービー(Barbie)』まで、女性が生き抜く姿の描かれ方がより多層的になってきていると感じます」とコメントした。

プロデューサーの福間は、是枝監督が率いる制作会社「分福」で「ベイビー・ブローカー(Broker)」「真実(The Truth)」「阿修羅のごとく」などを企画・プロデュースしてきた。中でも女性の多様な眼差しや価値観を映し出した作品として、「ベイビー・ブローカー」を例に挙げた。同作は、韓国の赤ちゃんポストを狙う男性ブローカーと、そこに同乗した赤ん坊を預けた母親、彼らを追いかける女性刑事の物語だ。福間は「韓国の製作チームからは、社会的に弱い立場にいる母親が怒るシーンはもっと強く感情表現を描いてほしい、現代の女性たちはよりはっきりと言葉にして表現するんだと言われたのがすごく印象的だった」とエピソードを披露した。

この日、妊娠中の身で登壇した高畑は「当事者(女性)としても、転換期を迎えていると感じています。子どもを育てていく中で『もっとこうだったらいいのに』と思うことが増えていくのかもしれません。そうなったら、我慢せずに声に出していくことで、働きやすい環境づくりに貢献できたら」と語った。中島は「少しの変化が現場を充実させていくきっかけになる。一人の映画人として、そうした変化を後押ししていきたい」と締めくくった。

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