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岡崎市に愛知県初のアウトレット 三井不動産、中京圏で存在感増す

三井不動産は、愛知県岡崎市で11月4日に開業する「三井アウトレットパーク(MOP)岡崎」を10月31日に関係者に公開した。愛知県内では初のアウトレットモール。県東部の三河地方を中心に広域から集客し、3年後には売上高300億円、来場者数800万人を目指す。MOP岡崎は同社にとって中京圏を攻略する上での戦略拠点になる。

MOP岡崎は、店舗面積3万5000平方メートルに180店舗が営業する。アパレルブランド、セレクトショップ、スポーツ、雑貨、日用品、食品、飲食店などの人気店を誘致し、幅広い世代が長時間滞在できるようにした。

目玉は正面入り口付近に設けられた公園型施設「オカザキマーケット」(4200平方メートル)だ。子供が遊べる広場、遊具、噴水、それ取り囲むように地元で人気の飲食店や食物販店を配置した。ドッグランや愛犬と食事が楽しめるレストランなど、ペットフレンドリーな態勢も整えた。毎日夕暮れ時には光、音、水を使った演出で来場者を驚かせる。

これまで愛知県内にアウトレットモールはなかった。名古屋市からクルマで30〜60分の三井不動産運営のMOPジャズドリーム長島(三重県桑名市、24年度売上高610億円)、三菱地所・サイモン運営の土岐プレミアム・アウトレット(岐阜県土岐市、24年度売上高270億円)が利用されてきた。

MOP岡崎はアウトレットモールとしては中規模。アウトレットモールの集客力の鍵になるラグジュアリーブランドは扱わないため、超広域というよりも三河地方に住む人たちが中心の施設になりそうだ。来店頻度の高い地元住民の期待に応えるため、飲食店を重点的に強化している。日常使いできる総菜店や菓子店、ベーカリーも充実させた。

東海道に三井ショッピングパーク経済圏

ただ三井不動産としては「名古屋周辺エリアと磐田(静岡県)を商圏でつなぐ戦略上重要なポジション」(肥田雅和・執行役員)とも位置付ける。

同社は愛知県を中心とした中部エリアにMOP岡崎を含めて9つの商業施設を持つ。そのうち6つが2020年以降に出店・取得した施設で、短期間で中部エリアに拠点を広げた。西からMOPジャズドリーム長島(三重県桑名市)、ららぽーと名古屋アクルス、レイヤード久屋大通公園、ららぽーと愛知東郷、ららぽーと安城と続き、東はららぽーと磐田(静岡県磐田市)まで、東海道に沿って商業施設が点在する。中部エリアを点ではなく線と面に発展させる上で、手薄な三河地方での顧客拡大が必要条件になる。今年4月に開業したららぽーと安城と今回のMOP岡崎がその役割を担う。

商業部門のトップである若林瑞穂・常務執行役員は「三井ショッピングカードの会員は約1425万人だが、首都圏に偏っており、中部エリアは100万人を切る。三井の存在感を高めることが重要課題だ」と話す。郊外から都市部までさまざまな立地の三井の商業施設(およびEC)をカード会員が行き来し、エンゲージメントを高めてもらうのが理想の姿だ。首都圏で実現したカード会員とのエンゲージメントを中部エリアでも構築する。9つの商業施設の合計売上高を早期に2500億円に持っていく。

三河地方には岡崎市(人口38万人)、豊田市(41万人)、豊橋市(36万人)など中規模都市が多い。自動車産業をはじめ製造業が盛んで、可処分所得が高いと言われている。だが商業施設はたくさんあるのに、アパレルで言えばアッパーミドルの価格帯の店舗が意外と少ない。21年の松坂屋豊田店の閉店によって三河地方から百貨店も消えていた。ブランド品を求める消費者は名古屋まで足を延ばしていた。

MOP岡崎に出店したシップスの原裕章社長は「三河地方は良いお客さまがたくさんいるにもかかわらず、当社のようなセレクトショップが手薄だった。ポテンシャルは大きい」と期待する。

王者・イオンモールの挑発広告?

中部エリアはイオンモールの存在感が強い。愛知県内だけでイオンモールとイオンショッピングセンターは17施設(モゾワンダーシティを含む)。後発の三井不動産は、ららぽーとと三井アウトレットパークでアッパーミドル層に照準を合わせて猛追する。

MOP岡崎はアウトレットモールではあるが、地元の人たちの日常使いも見込まれる。そのため岡崎市で長年営業するイオンモール岡崎はライバルになる。

MOP岡崎の最寄り駅である名鉄・本宿駅構内には、MOP岡崎のオープンを宣伝する広告がたくさん掲示されている。同時にイオンモール岡崎とイオンモール豊川の新しい広告もたくさん貼り出された。

イオンモール岡崎の広告は、女性のビジュアルに「正直、他のモールとは違いますので。(岡崎在住30年目 ママ)」とのキャッチコピーで構成。タイミング的に「他のモール」はMOP岡崎を想定したものと思われる。先行者として地元消費者との強い関係性をアピールした格好だ。イオンモール岡崎では、顧客に「イオンモール岡崎の『いいところ』を教えてください」と投票を呼びかけるキャンペーンを10月24日から11月3日まで実施中だ。

新規参入の三井不動産を、三河地方で長い実績を持つイオンモールが迎え撃つ。イオンモールが新しいライバルに対してあえて挑発的な広告を投げかけて、話題性を作る思惑も透けて見える。

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