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エスティ ローダーの25年7〜9月期、純利益4700万ドルの黒字 通期予想は据え置き

エスティ ローダー カンパニーズ(ESTEE LAUDER COMPANIES以下、ELC)の2025年7〜9月期決算は、売上高が前年同期比4%増の35億ドル(約5285億円)となり、市場予想の33億8000万ドル(約5103億円)を上回った。純利益は4700万ドル(約70億9700万円)の黒字(前年同期は1億5600万ドル=約235億5600万円の赤字)と大きく改善。売上高、利益の両面で回復の兆しを見せている。ただし、26年6月通期の見通しは据え置いた。売上高は横ばいから3%増を見込み、25年度の8%減からの改善を見込む。また、関税関連の逆風が利益に約1億ドル(約151億円)の影響を及ぼすと予想している。

ステファン・ド・ラ・ファヴリー(Stephane de La Faverie)社長兼最高経営責任者(CEO)は、「2026会計年度は新戦略『ビューティ・リイマジンド(Beauty Reimagined)』の下、好調なスタートを切った。オーガニック売り上げの回復、戦略的重点分野であるプレステージビューティ市場でのシェア拡大、そして収益性の改善を実現した。組織全体でスピードと柔軟性を高めるための改革が成果を生みつつある。これらの結果は、当社が今年度に掲げる見通しへの自信を裏付けるものだ。今年は既存事業による売り上げ成長の回復と営業利益率の拡大を4年ぶりに達成する重要な年になる」とコメント。

構造改革と人員削減計画を推進

同社は現在、2月に発表した経営ビジョンである「ビューティ・リイマジンド」戦略と「利益回復・成長計画(Profit Recovery and Growth Plan)」を通じて業績回復に向けて立て直しを図っている。2月の決算説明ては再構築プログラムを強化し、5800〜7000人の人員削減を行う計画を発表。10月26日時点で累計8億5200万ドル(約1286億5200万円)の費用計上と4000人超の人員削減を承認している。

同社のアキル・シュリーヴァスタヴァ(Akhil Shrivastava)最高財務責任者(CFO)は「WWD」の取材に、「現時点で見通しを変更するのは時期尚早だ。第1四半期の結果には満足しており自信が深まりまったが、われわれは長期的な視点で取り組んでいる。社員や投資家を含むすべてのステークホルダーに対して信頼を積み上げており、約束したことを確実に実行することが使命だ。外部環境は依然として厳しいが、われわれがコントロールできる部分に集中し、期待を上回る成果を出している」と述べた。

アナリストも「一過性ではない」と評価

アナリストからも、今回の成長が一時的ではないとの見方が出ている。バークレイズ(BARCLAYS)のローレン・リーバーマン(Lauren Lieberman)=アナリストは「既存事業による売り上げ成長が予想よりも早くプラスに転じた。当初は第3四半期と予想していた。ホリデーシーズン前のタイミング要因があったのか注目しているが、今回の発表内容から見る限り、この成長が短命に終わる兆候はない」と述べた。

部門別・地域別の動向

部門別では、スキンケアの売上高が同3%増加。主に「ラ・メール(LA MER)」と「エスティ ローダー」がけん引した。前年のアジア地域のトラベルリテール事業の低迷の反動や、在庫最適化の取り組みも寄与した。フレグランスは同社のラグジュアリーブランド群による2ケタ成長を背景に同13%増。メイクアップは「ボビイ ブラウン(BOBBI BROWN)」の減速で同2%減、ヘアケアは同7%減となった。

また、中国本土市場の回復も業績を押し上げた。同地域の売上高は同9%増となり、シュリーヴァスタヴァCFOは「中国での結果は非常に広範囲にわたるもので、われわれの売り上げは市場平均を上回る2ケタ成長を達成した。特定のブランドだけではなく、カテゴリー、ブランド、販売チャネル全体で勢いがある」と述べた。一方で、北米市場は引き続き苦戦。小売店の破綻による店舗閉鎖や一部ブランドの在庫過多の影響で、わずかに減収となった。

北米はセフォラとの提携など戦略強化

ELCは北米市場でのリテール展開を多様化するため、2026年初頭に美容小売り大手のセフォラ(SEPHORA)で「M·A·C」の販売を開始する計画を発表した。ELCのタラ・サイモン(Tara Simon)=アメリカ地域プレジデントは、「これはグローバル市場でのセフォラとの長年にわたるパートナーシップの成果であり、米国で初めて『M·A·C』を展開できることを誇りに思う」と語った。同社はまた、アマゾン(AMAZON)での販売も拡大しており、直近はメキシコ市場にも進出した。シュリーヴァスタヴァCFOは「北米の小売部門は成長軌道に戻りつつある。この勢いを維持していくことが目標だ」と述べている。

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