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エスティ ローダー、25年度は赤字転落 免税事業と中国事業の課題響く

エスティ ローダー カンパニーズ(ESTEE LAUDER COMPANIES以下、ELC)の2025年6月期決算は、売上高が前期比8.2%減の143億2600万ドル(約2兆1202億円)、営業損益は前年の9億7000万ドル(約1435億円)の黒字から7億8500万ドル(約1161億円)の赤字に、純損益は同じく3億9000万ドル(約577億円)の黒字から11億3300万ドル(約1676億円)の赤字となった。営業損失には、のれんおよび無形資産の減損損失8億1500万ドル(約1206億円)、再編関連費用3億6200万ドル(約535億円)、タルク訴訟関連費用1億5900万ドル(約235億円)が含まれており、これらを除いた調整後営業利益率は前年から2.2ポイント低下の8.0%だった。一方、調達の効率化や在庫管理の見直し、割引の削減などが寄与し、粗利益率は2.3ポイント改善の74.0%を確保した。

部門別はスキンケアが2ケタ減、メイクアップは回復の兆し

部門別の売上高は、スキンケアが前期比11.9%減の69億6200万ドル(約1024億円)と2ケタ減収。「エスティ ローダー」や「ラ・メール(LA MER)」の不振が主要な要因で、同社のトラベルリテール事業における課題が反映された。また中国市場での需要低迷やコンバージョン率の下落も影響した。「オーディナリー(THE ORDINARY)」は米アマゾン(AMAZON)での展開が始まり、1ケタ台半ばの成長で下落分の一部を補った。

メイクアップは、同5.9%減の42億500万ドル(約6223億円)で、「M・A・C」の売上高減少や「エスティ ローダー」のトラベルリテール事業の不振が響いた。ただし第4四半期には回復の兆しが見られた。「トゥー フェイスド(TOO FACED)」「ボビイ ブラウン(BOBBI BROWN)」の一部カテゴリーが減収となる一方、「クリニーク(CLINIQUE)」が全地域で成長し落ち込みを一部相殺した。

フレグランスは同0.1%増の24億9100万ドル(約3686億円)とほぼ横ばいで推移した。「ル ラボ(LE LABO)」が2ケタ成長し、「キリアン パリ(KILIAN PARIS)」も寄与したが、北米における「トム フォード ビューティ(TOM FORD BEAUTY)」の低迷が影響した。

ヘアケアは同10.1%減の5億6500万ドル(約836億円)となり、「アヴェダ(AVEDA)」の実店舗売り上げ低迷や、専門店とサロンチャネルの需要減退が響いた。「オーディナリー」「バンブル アンド バンブル(BUMBLE AND BUMBLE)」も売り上げが減少した。いずれもオンライン販売は伸びたものの減少分を補いきれなかった。

全地域で減収、北米市場も苦戦

地域別の売上高は、米州が同3.7%減の44億1100万ドル(約6528億円)、欧州・中東・アフリカが同12.4%減の53億7500万ドル(約5291億円)、アジア太平洋が同7.1%減の45億3700万ドル(約6714億円)と全地域で減収となった。特にトラベルリテール事業が、中国消費者の需要減退やリセラー(再販業者)への流通削減、韓国・中国での小売業者の戦略的変更の影響で2ケタ減収となった。中国本土でも小売り環境の厳しさから売上高は1ケタ台半ばの減少となった。北米市場は消費者信頼感の低迷や小売り市場の軟調に加え、25年度下半期一部小売業者による在庫調整が行われたことが影響した。前年同期との出荷タイミングのずれも減収要因となったが、アマゾンへの展開ブランドを前年の3から11に増やしたことがこれらの減収の一部を補った。

26年度見通しは売上高前期比0〜3%増

ステファン・ド・ラ・ファヴリー(Stephane de La Faverie)社長兼最高経営責任者(CEO)は、「25年度を計画通り終了した。引き続き戦略的ビジョン『ビューティ・リイマジンド(Beauty Reimagined)』の推進に全力を注ぐ。外部環境が不透明な中でも、当社は3年間の売上高減少を経て、26年度には売上高成長を実現し、今後数年間で2ケタの調整後営業利益率を回復できると確信している」と述べた。同社は26年度6月期の売上高を前期比0〜3%増と予想しており、トランプ関税関連の利益への影響を約1億ドル(約148億円)と見込む。また、コスト削減プログラムを強化し、再編の一環として世界で5800〜7000人の人員削減を実施する計画だ。

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