ブランドの顔となるPR担当に、“ロングセラー”や“今シーズンのイチ押し”アイテムを推薦してもらうビューティ連載「PR担当がプレゼン!」。今回は、数々のヒットアイテムを生み出しているメイクアップブランド「ナーズ(NARS)」が登場。木村桂子「ナーズ」PR担当がおすすめする3つのアイテムから、ブランドの哲学を紐解いていく。
「ナーズ」とは?

メイクアップアーティスト、フォトグラファーとして活躍するフランソワ・ナーズ(Francois Nars)が、1994年に創設した「ナーズ」。自分自身の感性を信じ、「大胆な自己表現を楽しんでほしい」という思いを込めてアメリカで誕生。現在は45の国と地域で展開しており、2000年に資生堂グループの傘下になった。日本ではフランソワの哲学を伝えるため、“TRUST YOURSELF/自分の正解を、打ち破れ。”というメッセージを発信している。
WWD:木村さんが考える「ナーズ」の魅力とは?
木村桂子 PRマネージャー(以下、木村):創設者であるフランソワにとって、心ときめくリップがなかったことから、ブランドがスタートしました。そんな背景もあり、全てのアイテムに、“内面の個人美を引き出す”という彼の哲学が色濃く反映されています。メイクアップアーティストとしての優れた感性で作られる色や質感は、どれも革新的で唯一無二。著名なアーティストや、最先端のファッションブランドとコラボレーションすることも多い「ナーズ」のアイテムを使えば、必ずモダンでおしゃれな顔になれると日々実感しています。
1:仕込んで個性を引き立てるリキッドブラッシュ
WWD:多彩なカラーメイクアイテムの中でも、木村さんの偏愛アイテムは?
木村:“アフターグロー リキッドブラッシュ”の人気色“02802 ワンダーラスト(WANDERLUST)”がお気に入り。このライラックカラーをチークの前に塗ると、透明感と潤い、ハリを与えながら、メイクの仕上がりを良くしてくれます。
一見エッジが効いていて個性的に感じられるカラーですが、つけてみると肌本来の血色のように馴染み、驚くほどきれいにとけ込みます。気張りすぎず、程よいおしゃれ感がかなうのはもちろん、肌のくすみのカモフラージュにも役立ちます。とあるメイクアップアーティストの方からは、「みずみずしいリキッドタイプながらもピタッと密着し、ベースメイクが崩れにくい」といった声もいただきました。
WWD:“リフ粉”の愛称で話題を集めた“ライトリフレクティングセッティングパウダー プレスト N”をはじめ、ベースアイテムの新作が出るたび、熱視線が注がれている印象です。ベースアイテムの開発において、どんな点にこだわっているのでしょうか?
木村:「どんなにカラーメイクが美しくても、ベースメイクがキマっていないとモダンに仕上がらない。透明感のある肌が全て」――というのがフランソワの考え方で、ベースメイクアイテムに対する思いが非常に強いんです。
そして、そのこだわりは売り上げにも確かに表れていて、ベースアイテムのカテゴリーが売れ筋となっています。中でも、“ライトリフレクティングセッティングパウダー プレスト N”、昨年発売したプライマー“ライトリフレクティング トーンアップヴェール”などが人気をけん引し、新たに手に取ってくださる方やリピートしてくださる方もとても多い。発売から時間が経っても勢いは衰えることなく、想定以上の売れ行きを維持しています。
WWD:“ライトリフレクティング”シリーズの人気の高さが伺えます。ヒットの要因は何でしょうか?
木村:“ライトリフレクティング”という名を冠したこのシリーズは、光の反射を用いて肌の凹凸をぼかし、素肌そのものが美しくなったかのような透明感のある仕上がりを目指すというコンセプトで作っています。フォトグラファーでもあるフランソワは、光をどう操れば肌が美しく見えるかを熟知している。彼の知見を生かし、緻密に計算されているからこその仕上がりのよさに、美容感度の高い方から肌へのお悩みを持つ方まで、多くのお客さまに納得していただけている結果なのだと捉えています。
2:“肌そのものが潤う”クッションファンデ
WWD:“ライトリフレクティング”シリーズには10を超える豊富なラインナップがありますね。中でも、イチオシのアイテムは?
木村:25年2月に発売した“ライトリフレクティング セラムクッションファンデーション”。目指したのは、素肌そのものが美しくなったかのような艶肌。一般的に用いられるオイルやパールでは、フランソワが求める繊細な艶が表現できず、試行錯誤が続いたといいます。最終的に開発担当者が辿り着いたのは、潤い成分の「ブリーザブルハイドラヴェール」でした。73%も配合し、肌表面を包み光を柔らかく反射するおかげで、肌そのものの質感を生かした滑らかで美しい仕上がりがかないました。
さらに、このクッションファンデーションはアジア限定商品。そのため、色や質感のよさに加えて、高いSPF値も欠かせませんでした。ただ、SPF値を高めると油分が増え、透明感や素肌感に影響が出てしまう。クリアな発色と高いSPF値の両立はとても難しく、試作を繰り返し、発売時期が後ろ倒しになったことも。最終的に、SPF42に着地し、フランソワも納得する艶感を両立することができました。
3:上品なメリハリが宿るハイライター
WWD:では、今シーズンに登場した製品で、特に反響があったものはどれでしょうか?
木村:“ライトリフレクティング”シリーズから新たに登場したハイライター“ライトリフレクティング ルミナイジングパウダー”です。25年7月に発売したばかりですが、当初の計画の約1.5倍売れています。日本は特に好調で、アジアチームから「なぜそんなに売れているのか」と、ヒアリングがあったほど。
一般的なハイライトは白っぽく発光するものが多く、使いこなすのが難しいと感じる方もいらっしゃるはず。けれど、こちらは肌の内側から艶がほんのりにじむように色づいて、Cゾーンや目頭、鼻筋に塗布するだけで、上品なメリハリが生まれるんです。私が毎日欠かさず持ち歩いているのは、人気No.1カラーの“03960 ヘブンリー(HEAVENLY)”。自然なローズゴールドカラーで、見た目以上に肌なじみがいいんです。眩い輝きと血色感を生かして、チークとしても使えます。
WWD:ハイライトの開発に至ったきっかけは?
木村:「ナーズ」では、そのとき流行っているものを開発するというより、フランソワ自身のムードを映す製品作りに重きを置いています。ブランドの軸である“ライトリフレクティング”シリーズのラインナップを拡充することや、ビジネス上の戦略に基づき、フランソワが納得する素肌のような艶感を演出できるハイライターの開発に至りました。
WWD:最後に、これまでで手応えのあったプロモーションについて、具体的にどんな施策を行い、どんな効果があったかを教えてください。
木村:フランソワは、スーパーモデルや歌手のメイクアップを手掛けていました。バックステージでの写真が世に出て、次第に「ナーズ」が広まっていったのが始まりです。そのため、メイクへの関心が高い知る人ぞ知るブランドという立ち位置で、長年プロモーションを行ってきました。
21年、クッションファンデーションのイメージキャラクターに俳優の横浜流星さんを起用したことは、ブランドとしての転機だったと思います。それ以降、長澤まさみさんや志尊淳さんを起用。タレントとのコラボレーションにより、美容好きや「ナーズ」の世界観に共感してくださる既存ファンのほか、より広くお客さまに知っていただけるようになりました。全国に24店舗と、カウンター数が少ないにも関わらず、新作を出すたびに反響があるのは、アーンドメディアを効果的に活用できているからだと考えます。おかげさまで、20~30代の若いお客さまからも支持をいただいています。
大胆でありながら繊細な色と質感で、まとう人の魅力をさらに引き出す「ナーズ」のアイテム。処方やテクスチャーの一つひとつにまでフランソワの哲学が息づいており、使うほどにその質の高さを実感できる。
近年はクッションファンデーションなどのアジア発のヒット商品も生まれており、日本人の肌に寄り添いながら、ブランドのグローバル戦略においても重要な役割を担いつつある。
連載「PR担当がプレゼン!」とは?

ブランドの顔となるPR担当。新商品やシーズンアイテムなどはスポットライトが当たりやすいが、ロングセラーアイテムはリニューアルなどをしないとどうしても埋もれてしまう。「PR担当がプレゼン!」は、ブランドのPR担当に“ロングセラー”や“今シーズンのイチ押し”アイテムを推薦してもらい、読者に改めて商品の良さを知ってもらう連載だ。