ビューティ
連載 PR担当がプレゼン!

「フジコ」のヒットを生む等身大の視点とブランド力 “なんかいい感じ”になれる推しの3品

ブランドの顔となるPR担当に、“ロングセラー”や“今シーズンのイチ押し”アイテムを推薦してもらうビューティ連載「PR担当がプレゼン!」。今回は、ユニークで画期的な製品にファンの多い「フジコ(FUJIKO)」が登場。「フジコ」の広報を担当する大谷奈央 かならぼ 執行役員AD/PRディレクターがおすすめする3つのアイテムから、ブランドの強みを紐解く。

「フジコ」とは?

「フジコ」は、和田佳奈かならぼ代表取締役が2016年に立ち上げた。“大人のプチプラコスメ”ブランドとして、リアルな日常に寄り添うアイテムを取りそろえる。塗ってはがすだけで、ナチュラルな眉メイクが完成する“眉ティント”シリーズは、累計販売数630万本超えたロングセラーアイテムだ。

WWD:「フジコ」が誕生したきっかけは?

大谷奈央PRディレクター(以下、大谷):ブランドを立ち上げたのは、代表の和田が32歳の頃。仕事と育児に追われる日々の中で、たまたま使ったコスメの仕上がりに感動したことが始まりでした。メイクによって顔の印象が変わる驚きや、「自分もこんなふうに変われるんだ」というワクワク感。そんな実体験の思いを、「フジコ」というブランドに込めています。

「自分にかける時間が十分にとれない中でも、きれいになりたい気持ちは諦めたくない」――。そんな葛藤に寄り添い、さっと使うだけで“なんかいい感じ”になれて、日常に高揚感も湧く商品作りを目指しています。

「フジコ」というブランド名は、親しみを持ってもらいたいという思いから。“クラスで一番可愛い女の子”のように、誰もが憧れるけれど、どこか身近にも感じられる存在の「フジコちゃん」。そんなイメージから名付けました。キービジュアルに起用するモデルも、親しみやすさを大切にしています。また、スウォッチはスタッフの写真を活用し、手の届きやすい距離感を保つことを意識しています。

1:眉ティントは「スピード重視で市場に送り出した」

WWD:「フジコ」と言えば真っ先に思いつくのが、“眉ティント”。開発時のエピソードを教えてください。

大谷:韓国工場の視察で出合った眉ティント。そのポテンシャルに着目し、「日本市場に展開したい」と和田が考えたことから企画がスタートしました。

「消えない眉毛があったらよくないですか?」という和田のアイデアから、6カ月で商品化にこぎつけた“眉ティント”。日本未上陸のアイテムだったため、他社よりも先に売り出すことが何よりも重要。いずれアップデートをすることを前提に、先行者メリットを逃さないように商品化を進めました。

大手では年間カレンダーに沿って販売計画を敷くのが一般的な中、市場のムードをいち早く捉えて、短期間で形にできるスピード感は「かならぼ」ならではの強みです。

WWD:日本未上陸のアイテムを形にするにあたり、店頭で選ばれるために工夫した点はありますか?

大谷:特に注力したのは、パッケージデザインです。ドラッグストアやバラエティーショップのアイブロウアイテムのコーナーは、ブラックやブラウンなど、地味な色合いが並びがち。お客さまの視線を集められるように、ピンクや水色といったマカロンカラーを採用しました。

さらに、16年の発売時は「インスタ映え」という言葉が流行し始めたタイミング。化粧箱を正方形にしたり、「#すっぴん寝起き」というハッシュタグを用いたコピーを載せたり、Instagramを意識した戦略を取り入れたことも、人気を後押しした背景になりました。“眉ティント”は「#イモト眉」というハッシュタグが話題になり、その年の「2016年ヒット商品ベスト30」では、“フジコ 眉ティント”という商品名そのものが27位にランクインしました。

2:「美人は額がきれい」をかなえる生え際専用フェイスカラー

WWD:数ある製品の中で、特に推したいアイテムと、その理由を教えてください。

大谷:額に塗布して輪郭を美しく整える“デコシャドウ”は、私も毎日使っています。生え際の凹凸をカバーするだけで、顔周りをすっきりした印象に見せられるんです。特におでこを出すアップヘアのときは欠かせません。

韓国出張中、和田がCAさんの綺麗な生え際を見かけたことが、開発のきっかけになっています。額の肌色の面積が少し減るだけで目元が際立ち、洗練された雰囲気になるんです。

まずは「必要としている方」に届けるべく、Instagramを中心にリサーチを重ね、産後の抜け毛や額の広さに悩む方にアプローチしました。18年の発売当初はプロモーション費も限られていたため、一人ひとりにギフティングをして……。仕上がりを気に入ってくださった方の投稿から口コミが広がり、少しずつ反響をいただけるようになりました。

3:マルチパレットは開発担当者が異なるカラー3種

WWD:“マルチ イージー パレット”のイチ押しポイントは?

大谷:ミニサイズやマルチユースのコスメ人気が高まる中で、「フジコ」らしい提案ができないかというところから開発が始まりました。年齢やライフスタイルの変化に伴い、「今まで使っていたアイカラーが似合わなくなった」「ベストな色合わせが分からない」といったお悩みを抱える方が増えるんです。

「1つで迷わず完成するパレットがあれば、毎日のメイクがもっと楽になるよね」――そんな社内のコミュニケーションから生まれたのが、この“マルチ イージー パレット”です。

WWD:開発時の裏話があれば教えてください。

大谷:実はこのパレット、カラー3種それぞれ開発担当者が異なるんです。01は主役級の華やかさ、02は上品で好印象、03は大人のしゃれ感がテーマ。一見同じトーンに見えますが、実際塗ってみると全く違うメイクに仕上がります。発想の起点となる“なりたいイメージ”や“気になるパーツ”が異なる3人が作るからこそ、色出しも質感もそれぞれ違うものが出来上がりました。

情報過多から洗練へ 「フジコ」の分岐点

WWD:では、「フジコ」の分岐点となったプロモーションについて教えてください。どんな施策を行い、ブランドイメージはどんな風に変化しましたか?

大谷:デパコス好きな大人の女性にも、選んでいただけるブランドでありたいという願いが根底にあります。ブランド立ち上げ当初は、“眉ティント”や“デコシャドウ”など、お悩みに特化したアイテムを続けて発売していたこともあり、必要としている方にピンポイントで届いていました。

ですが、19年にシャカシャカ振って使用する“シェイクシャドウ”を発売した頃から、現在に通ずるブランディングを意識し始めたんです。それまで商品名や色名まで細かく記載された“情報過多”なパッケージを、思い切ってシンプルに刷新しました。商品の撮影もこれまでは切り抜き画像が中心でしたが、エモーショナルな世界観が伝わるプロダクトビジュアルを撮影するように変更。イメージビジュアルも、よりモダンな雰囲気へとアップデートしています。

コスメ好きの目に留まる世界観と、手に取りやすい価格。そのギャップにより、さらに多くの方に注目していただけるように。「フジコ」というブランドに期待して商品を選んでくださるお客さまも増えていきました。

WWD:最後に、商品開発や販売戦略を立てる際、意識していることや大切にしていることを教えてください。

大谷:スマホを開けば次々に新しい情報が流れ込み、私たちの脳は常にキャパオーバー状態。そんな中、商品棚でパッケージが埋もれていたり、商品名から特徴がイメージしづらかったりすると、せっかく興味を持ってくださったお客さまを逃してしまう。だからこそ、記憶に残るネーミングやSNSからの動線を意識した店頭什器の設置、キャッチコピーなど、店頭で目を引く仕掛け作りは大事にしています。

23年には、美容誌「ヴォーチェ(VOCE)」の付録として田中みな実さんとのコラボリップを制作しました。その号が即完売になるほど反響も大きく、のちに製品化することに。この時、“ニュアンスラップティント”という商品ではなく、“みな実の粘膜ピンク”というキャッチーな名前を前面に出したことも、SNSで多くの方の心を捉えた理由だと考えます。

SNSに寄せられたコメントから、ドラッグストアでのリアルな反応まで。人々の“今”のニーズを丁寧にすくい上げ、商品や販促へと即座に反映していく。25年10月にはマスカットグループがかならぼを子会社化すると発表したが、「これまで通りかならぼの良さやスタンスは変わらない」と胸を張る大谷PRディレクター。大手では実現が難しい、スピーディーな行動力と“かゆいところに手が届く”発想力が、次々にヒットを生み出す強さとなっている。

連載「PR担当がプレゼン!」とは?

連載 PR担当がプレゼン!

ブランドの顔となるPR担当。新商品やシーズンアイテムなどはスポットライトが当たりやすいが、ロングセラーアイテムはリニューアルなどをしないとどうしても埋もれてしまう。「PR担当がプレゼン!」は、ブランドのPR担当に“ロングセラー”や“今シーズンのイチ押し”アイテムを推薦してもらい、読者に改めて商品の良さを知ってもらう連載だ。

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