
ロレアルとケリングは、ビューティとウェルネス分野における長期的な戦略的パートナーシップの構築を発表した。ケリングはフレグランスブランドの「クリード(CREED)」を売却、加えて「グッチ(GUCCI)」のフレグランスとビューティにおける50年間のライセンス権をコティとの契約終了後にはロレアルに譲渡するという。「クリード」の売却と、「グッチ」のライセンス権の移行に伴い、ロレアルはケリングに40億ユーロ(約7000億円)を現金で支払う。またロレアルは今後、ケリングにライセンスにまつわるロイヤリティを支払い続ける。
この提携には、現在ケリング傘下のケリング ボーテが手掛ける「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」と「バレンシアガ(BALENCIAGA)」の50年間の独占ライセンスも含まれ、こちらは取引完了後からロレアルがブランドを担う。さらに両社は美容分野に留まらず、ラグジュアリー、ウェルネス、そして長寿などにおけるビジネスチャンスの探求に向けて協力していくという。
ケリングはビューティ内製化から方向転換
手元に資金を確保して苦戦「グッチ」を立て直す
ケリングは23年、推定38億ドル(約6600億円)で「クリード」を買収。このM&Aは、同年ケリングがケリング ボーテを設立した後、初めての大型買収となった。ケリング ボーテはこれまで、「ボッテガ・ヴェネタ」と「バレンシアガ」「アレキサンダー・マックイーン(ALEXANDER McQUEEN)」などのフレグランスを手掛けている。ケリング アイウエアやケリング ボーテなどを擁する部門の2024年12月通期決算の売上高は、前期比24%増の19億4100万ユーロ(約3400億円)だった。一方「グッチ」については長年コティとライセンス契約を締結してきたが、28年には契約が切れると言われている。またケリング傘下の「サンローラン」については長年、ロレアルがライセンスブランド「イヴ・サンローラン(YVES SAINT lAURENT) 」を手掛けている。
ケリングは、主力ブランド「グッチ」の不調に伴い、苦戦が続いている。同社の24年度通期売上高は、前期比12%減の171億9400万ユーロ(約3兆200億円)、営業利益は同46%減の25億5000万ユーロ(約4400億円)、純利益は同62%減の11億3300万ユーロ(約1900億円)という大幅な減収減益だった。「グッチ(GUCCI)」が前期に比べて23%減の76億5000万ユーロ(約1兆3400億円)と大幅なマイナスを記録。ケリングはフランチェスカ・ベレッティーニ(Francesca Bellettini)=ケリング ブランド開発担当副最高経営責任者(CEO)を「グッチ」の社長兼CEOに任命しており、「グッチ」に専念させることで、立て直しに取り組んでいる。一方のケリング ボーテについては成長著しく、ケリングはこれまで、コティが手掛けてきた「グッチ」や、ロレアルによる「サンローラン」まで内製することを目指しつつ、「クリード」などを取得することでブランドポートフォリオの充実を図ってきた。一時はケリングのフランソワ・アンリ・ピノー(Francois-Henri Pinault)会長兼CEOも、傘下にあるブランドのビューティビジネスの内製化について意欲的だった。
今回の長期的な戦略的パートナーシップの構築は、その従来の方向からの大転換を意味する。ケリングはビューティブランドの売却やライセンスビジネスに再度舵を切ることで手元に資金を確保しながら、不振のファッション部門の再建に臨む覚悟なのだろう。