PROFILE: ティム・ブラウン/「オールバーズ」創設者

2024年にゴールドウインとパートナーシップを締結した米「オールバーズ (ALLBIRDS)」。14︎年の創業当時はサステナビリティを中枢に据えたビジネス哲学が多くの注目を集めたが、22年12月期をピークに売上高は減少し、25年1〜6月期の売上高は前期比21.0%減の7179万ドル(約105億5313万円)。厳しい局面を迎えている。日本では、サステナビリティへの価値観を共有するゴールドウインという力強いパートナーと共に、どのようなブランディングを図るのか。 スニーカーを履くことで革靴と比較し4度体感温度が下がるという「足元クールビズ」プロジェクトの始動に合わせて来日した、「オールバーズ」創業者のティム・ブラウン(Tim Brown)に、話を聞いた。
WWD:ジョー・バーナチオ(Joe Vernachio)が24年にCEOに就任して以降、ビジネス戦略には具体的にどんな変化が?
ティム・ブラウン「オールバーズ」創設者(以下、ブラウン): たくさんあるが、特に重要な変化としては、これまでは私たちは各国で直接ビジネスを運営していたが、グローバルなパートナーと協業しながらビジネスを広げる方法に変わったことだ。それから新たに”By Nature”をコンセプトに掲げ、プラスチック製の製品で溢れている今の時代に、天然素材を使用するという改めてブランドを差別化する原点に立ち返った。ニュージーランドの先住民であるマオリ族では「Mua ka Muri(後ろ向きに未来へ進む)」という言葉があるが、これは今回の移行期における指針となった。「オールバーズ」の未来に向けた答えは、ブランド初期に生まれた象徴的な製品への深い理解にこそあると考え、現在は過去の製品を見直しながら刷新する取り組みに注力しているところだ。
WWD:日本ではゴールドウインをパートナーに選んだ。その理由は?
ブラウン: 価値観がかなり一致しているから。ゴールドウインは、単にサステナビリティを語るのではなく、実際に行動し、製品に責任を持つ姿勢を示している。また、「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」を例に、製品デザインや、ブランドの長期的な育成と運営においても慎重かつ思慮深いアプローチを取っており、私たちにとって学ぶべき点が多い。日本市場で存在感をさらに拡大し、深化させていくためには、ゴールドウインのような優れたパートナーが不可欠だ。当社のバーナチオCEOはかつて、米VFコーポレーションの「ザ・ノース・フェイス」で勤務しており、深い関係性を持っているほか、デザイン責任者のジェイソン・イスラエル(Jason Israel)も同ブランドのプロダクト責任者を務めていた。こうしたつながりや関係性こそが、最高の製品を市場に送り出す基盤になると信じている。
WWD:具体的に現在までにどのようなシナジーが生まれている?
ブラウン: ゴールドウインは日本全国に、「ザ・ノース・フェイス」を100店舗以上展開しており、各地域の市場に対して深い理解を持っている。当社が成長と拡大のビジョンを描く中で、このような知見はとても貴重だ。また、「足元クールビズ」という共同プロジェクトも印象的だ。環境に配慮するだけでなく、着用する際の快適性も重視することで、SDGsの推進において切り口ともなる存在だ。
WWD:サステナブルな製品に対して、市場の反応に変化は?
ブラウン:サステナビリティに関しては今、非常に興味深い局面にある。現状では、サステナビリティはやや流行遅れと見なされているかもしれない。しかし、企業や事業者が自らの製品やサービスに責任を持つことの重要性はかつてないほど高まっており、この潮流から新しい取り組み方を生み出す必要がある。また、「サステナビリティ」という言葉自体が、ほとんど意味を失いつつあり、政治的な色合いを帯び、人によってさまざまな解釈が存在する。多くの場合、革新や創造よりも報告や開示の同義語として扱われている状況だ。「オールバーズ」は、モノを作り、創造し続けることの重要性を信じており、この取り組みの先には商業的な可能性も存在すると考えている。サステナビリティは消費者やパートナーから常に高い責任を求められており、今後も多角的に議論され続けるだろう。その流れは「オールバーズ」にとって逃すべきでない好機となる。
WWD:今後はどのようなブランドポジショニングを目指す?
ブラウン:「オールバーズ」は、自然素材の革新企業であり、自然から生まれたブランドであることをさらに強化したい。現在は自然の回復に取り組む必要がある。私たちが目指しているのはまさにそこにあって、単にサステナブルな製品を作るのではなく、優れた製品を生み出したい。さらに、それを基盤として事業を構築しつつ、その思いに基づいて活動していきたい。