
素材の調達から制作まで数年かかるものもあるハイジュエリーは、ラグジュアリーの真骨頂といえる存在だ。そのため、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」や「グッチ(GUCCI)」といったラグジュアリー・ブランドも、年々ハイジュエリーを強化。今年も各社から新作が登場したが、その多くにカラーストーンが使用されている点に注目だ。品質の高い色石の希少性は非常に高く、富裕層からも注目されている。ここでは、パリ・オートクチュール・ウイーク中に発表された新作をはじめ、各社えりすぐりの新作ハイジュエリーを一挙に紹介する。(この記事は「WWDJAPAN」2025年8月4日号からの抜粋です)
自然はクリエイションの永遠のテーマ
自然は、多くのジュエラーにとって、クリエイションにおける尽きることのないインスピレーション源だ。自然が持つ調和や完璧な姿を各ジュエラー独自の感性で捉えて職人技を駆使して仕上げた作品は多い。中でも、花は永遠の定番モチーフ。野に咲く花から見事に咲き誇るバラまで、写実性に富むデザインで精緻に仕上げたものから、花のニュアンスを優しい色合いの宝石を贅沢に使用して表現した作品までさまざまだ。一方で、イタリア勢からは、庭や噴水といった人間の手が加えられた自然をイメージソースにしたハイジュエリーが登場した。
「ディオール ファイン ジュエリー(DIOR FINE JEWELRY)」
生き生きと咲き誇る
小花の生命力を映し出す色彩美
毎シーズン、夢のあるハイジュエリーを発表する「ディオール ファイン ジュエリー」。今年は、ムッシュ ディオールがこよなく愛した植物へオマージュを寄せた作品が登場した。“繊細な花束”と名付けられたネックレスは、かれんな小花が咲き誇る様子を生き生きと表現。ダイヤモンドをちりばめた茎に、ルビーやピンクサファイアなどピンク系のジェムストーンで花を咲かせ、エメラルドやツァボライトのカラーグラデーションで葉っぱを描いている。小さな花々がまるで円舞するかのように重なり合い、ガーランドのように壮麗な色彩美を映し出している。
「ショーメ(CHAUMET)」
秀逸なカラーグラデーションで描く
アイリスのたおやかさ
「ショーメ」は創業時から“ナチュラリスト・ジュエラー”と自らを呼び、自然の美しさを描き続けてきた。新作は、自然をテーマに野バラやクローバー、バンブーなどさまざまな植物の魅力を捉えてデザインに落とし込んだ。植物学者のピエール・ジョゼフ・ルドゥーテ(Pierre-Joseph Redoute)の絵画から飛び出してきたような“フェアリー アイリス”は、たおやかに咲くアイリスの姿を繊細かつ抒情的に表現。アイリスの紫そのものでなく、ブルーやパープルのスピネルとサファイア、ダイヤモンドの美しいカラーグラデーションで上品に表現しているのも「ショーメ」らしい。
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