オンワードパーソナルスタイルが運営するスーツを主力としたオーダーメード業態「カシヤマ(KASHIYAMA)」が実店舗ビジネスで急成長を遂げている。2024年度(25年2月期)の実店舗の売上高は前年比52%増と好調で、今期はさらに出店拡大を図っている。5月2日には京都初となる四条店を、24日には横浜駅西口から徒歩2分の場所に路面店をオープンし、66店舗に達した。
横浜西口店の売り場面積は約160平方メートル。オーダーメード店にありがちな“入りにくさ”を解消するため、ガラス張りの開放的なエントランスを採用し、店内は白を基調にした明るく洗練された空間に設計した。通路には明るい木材のハイチェアを設置し、「若者が自由に行き交うアップルストアのようなストアデザインを目指した」(関口猛社長)という。
試着室は大きな鏡を設置した6つを完備。目的や好みなどをヒアリングし、ウールベースの定番「クラシック」に加え、人気の高い“自宅で洗える”「コンフォート」などのカテゴリーを提案した後、3〜29号のサイズ、常時1000種類以上そろえる生地から選びながら、店頭のプロトタイプを試着し、専門スタッフが細かく採寸する。オーダーの内容は全てタブレットに記録され、決済が完了すれば、そのまま中国・大連にある工場にデータが送られる。完成したスーツは圧縮パックにていねいに梱包され、そのまま自宅に届く仕組みだ。その期間、わずか1週間ほど。このスピード感こそ、「カシヤマ」が2017年の設立から業界初の試みとして「カシヤマ」が強みとしてきたF2C(ファクトリー・トゥ・カスタマー)だ。
狙うは、オーダースーツに関心高い若年層と経験が少ない女性
「カシヤマ」はSNSを中心としたデジタルプロモーションや学割制度を通して、若年層の取り込みを強化してきた。1着2万円からオーダーできる学割の使用者は年々増え、24年度の10〜20代の顧客数は1.5倍に伸長。学割使用の売上高は同92%増を達成した。調査によると、既製品のサイズが合わない若者も多く、大半が「オーダースーツを買いたい」と回答しているという。またTikTokの公式アカウントでは、専門的なハウツー動画が特に好評で、600万回以上再生されているものも。若者の間でスーツへの関心が高まっていることがうかがえる。
横浜西口店の売り上げ目標は3億円。東口に構えるそごう横浜店との相乗効果と差別化を図る狙いだ。関口社長は、「横浜エリアだけでもまだまだ成長の余地があると期待している。今後さらに、世代別のプロモーション施策にも注力し、エントリー層のさらなる開拓やウィメンズの強化に取り組む。特にウィメンズは、若年層よりもオーダースーツに対する課題が多く、ファッション性のある商品力に加え、体験価値やコストパフォーマンスといった『カシヤマ』ならではの強みを活かして、新たな市場を切り拓きたい」と意気込む。今秋には新業態をローンチし、さらに出店を加速させる。