ファッション

「グッチ」がウィメンズ期間中にメンズを発表の意味は? 「アディダス」との大型コラボも

 「グッチ(GUCCI)」が2年ぶりにミラノ・ファッション・ウイークでショーを開き、新作コレクション「EXQUISITE GUCCI」を発表した。本社のグッチ・ハブに作られた会場は歪んだ姿が映る凸凹な鏡に囲まれ、ショーが始まるとサーチライトの眩しい光が動きながら点滅したり、赤く染まったり。現実と非現実の間にいるような感覚を覚える。

 もともとメンズのコレクションを予定していたという今回は、全84ルックのうち15ルックだけを「ウィメンズ」とした。ウィメンズのミラノコレクション期間中に、メンズを発表したことになる。アレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)は、就任当初からジェンダーの概念は流動的なものと捉えている。本人は、「示したかったのは、スーツに代表されるメンズウエアは、女性が着ても美しいということ。(自分が『グッチ』を手がけるようになった)7年前はジェンダーフリュイドなコレクションと評されたが、私の中では何も変わっていない」という。今回は、メンズウエアの核となるスーツをベースに、スポーツ、レトロ、グラムロック、パンク、センシュアリティなどの要素を自由にミックスしたスタイルを全ての人に向けて提案した。80年代風の力強いショルダーラインのスーツや大ぶりのバッグ、パンクなスタッズ使いは、メンズウエアとしての提案だが、「女性が着ても美しい」というのがミケーレの主張。それは、ジェンダーレスやユニセックスという特別な服ではなく、男性向け・女性向けに作った普通の洋服さえ、あらゆるジェンダーが自由に楽しんで良いと訴える。ジェンダーレスという言葉に縛られ「マスキュリン」や「フェミニン」という言葉に抵抗を覚えるようになってしまったムードを打破した2022年春夏のファッション業界からの提案をさらに一歩深めた印象だ。

 もう1つ、コレクションを語る上で欠かせないのは「アディダス(ADIDAS)」とのコラボレーションだ。そのきっかけはアレッサンドロが見た、1990年代に発表された「アディダス」とデザイナーのローラ・ウィットコム(Laura Whitcomb)のコラボによるドレスを着たマドンナの写真という。それを再解釈した真っ赤なドレスも目を引くが、中心となるのは「グッチ」が誇るサルトリアに「アディダス」のアイコニックなデザインを取り入れたスーツだ。素材には“GGモノグラム”と「アディダス」の“トレフォイル”を組み合わせたジャカードをはじめ、コーデュロイやチェック地を使用。ジャケットの胸元には“トレフォイル”と「GUCCI」の文字を刺しゅうであしらい、袖やパンツのサイドにはグログランテープで3本ストライプを描いている。そのスタイルは、ストリートウエアやスポーツカジュアルからドレスアップスタイルへの変容を表すかのよう。「メタモルフォーゼ(変身)」を重要なキーワードとして掲げたミケーレは、「3本線などの『アディダス』のアイコンを、別の洋服にのせることでメタモルフォーゼした。スポーツウエアはエレガントなスタイルにメタモルフォーゼしたし、クラフツマンシップを誇る『グッチ』の伝統はコンテンポラリーにメタモルフォーゼした」と語る。冒頭で説明したショー会場は、往年のディスコのイメージ。「ディスコは、さまざまなカルチャーや人種が入り混じる、メタモルフォーゼの場所だった」と語る。「アディダス」とのコラボは、“ガゼル”スニーカーやボクシングシューズからヒントを得たフットウエア、手袋、スイミングキャップのような帽子、スカーフといったアクセサリーまで、バリエーション豊かなアイテムをラインアップする。

 引き続きエクストリームなルックもあるが、一つ一つのアイテムに目を向けると、ずっと着られるタイムレスなものが多い。今回はバッグも“バンブー”や“ジャッキー”といった既存モデルのアップデートのみという。アレッサンドロが就任して以来、「グッチ」は一貫したスタイルを打ち出し続けてきた。すでにシーズン性は薄く、一点ずつ買い足してワードローブに加え、楽しむことができる。話題を集めるコラボ以外の、今の「グッチ」の魅力だ。

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