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「ルール」と「作法」、「消費者」と「生活者」 エディターズレター(2021年7月19日配信分)

※この記事は2021年07月19日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

「ルール」と「作法」、「消費者」と「生活者」

 こういう仕事をしているので、言葉には敏感です。

 例えば先日は、ロリータ・ファッションを愛してやまない青木美沙子さんをゲストに招き、深遠なるロリータの世界を調査。「生足はあり得ないんです」と話す青木さんに、「そういう、えっとルール?もあるんですか?」と聞いたら、「作法ですかね?」と返されました。「ルール」と「作法」。なるほど後者の方が日本人っぽい気がするし、多様性を認めるファッションの世界で広がるべき言葉かもしれない。逆を言えば、マイノリティー同士認め合っているロリータの世界で「ルール」を課すってのは、なんだか違う気がします。

 「作法」を辞書で調べると、「その社会で守ることが望まれる、言語・動作の決まり」「エチケット」と出てきます。「その社会で守ることが望まれる、言語・動作の決まり」は、つまるところ「ルール」では?なんて思いますよね?でも、違うんですよ。後に続く、代表的な動詞を考えてみましょう。「ルール」の場合は、「課す」や「設ける」「守る」なんて言葉が思い浮かぶでしょうか?「課す」や「設ける」は、相手に強いる言葉。「守る」は、強いた結果の動作です。となると、「ルール」という言葉の裏には「強制力」が見え隠れします。

 一方「作法」はどうですか?「知る」「学ぶ」「身につける」なんて言葉を伴う時が多いですよね?主体性に溢れた動詞との相性が良いのです。「ルール」には「強制力」が見え隠れする一方、「作法」からは「主体性」がチラホラ覗きます。だから「ルール」と「作法」は、結構違う。自己表現のためにロリータ・ファッションを楽しんでいる青木さんたちが、「ルール」ではなく「作法」という言葉を使う理由に納得なのです。

 もう一つ、敏感になっている言葉をお話しましょう。「消費者」と「生活者」です。企業が提供すべきは「欲しいもの(=消費したいもの)」ではなく「生活の中でやってみたいこと」に変わってきた時代、意図的に「消費者」を改め「生活者」と呼び始めた人が増えているように感じます。言わんとしているコトは、理解できますよね?

 ファッションもビューティも提供すべきは商品・製品のみならず、Zoomの背景やアバターの衣装、LINEのスタンプまで、自己表現にまつわる全てに進化すべき今、「消費」を封印して「生活」を意識するのは、アリな気もします。ただ現状、まだ「消費」してもらうモノを提供している私たちが自己否定するきっかけになってしまわないか?ソレはちょっと心配です。

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