ファッション

ファーストリテイリングがサステイナビリティの取り組みを発表

 「ユニクロ(UNIQLO)」や「ジーユー(GU)」「セオリー(THEORY)」などを擁するファーストリテイリング(以下、FR)は30日、サステイナビリティへの取り組み状況を発表した。同社がまとめた「サステイナビリティレポート」の最新版の発刊に合わせたもの。国連が定めたSDGs(持続可能な開発目標)が企業価値を評価する大きな指標となっていることから、これを軸に、企業価値の向上を目指し、取り組みの改善と情報開示の拡充を進め、長期的な成長を目指していく。“服のチカラを、社会のチカラに”をスローガンに、サプライチェーン、商品、店舗・コミュニティ、従業員、の4領域を中心に推進する。

 新田幸弘グループ執行役員は、サステイナビリティについて、「世界第3位のアパレル小売り企業となり、店舗網とサプライチェーンなどグローバル化し、ビジネスが社会と環境に与える影響も拡大した。国際社会の課題は多様化、深刻化し、事業リスクも増加している。お客さまはミレニアル世代と呼ばれる若い世代を中心に、商品の素材や生産プロセスなどにも関心を持つ人が増え、ブランド選択の基準の一つになっている。世界ナンバーワンのアパレル企業になるため、経営戦略とリンクさせて持続可能なビジネスへと転換し、自社とサプライチェーン、社会、環境全体が持続的に発展する環境の整備に責任を果たしていく。でないと未来がない。われわれの生き残りをかけた責任だと思って取り組んでいく」と語った。

 また、20年前まで仕入れ販売を行っていたことから、自社で企画・生産・販売を行うSPA型のビジネスモデルにシフトしたことで、高品質低価格が実現でき、ビジネスとしても効率化が図れていると分析。「工場の長時間労働などで厳しいご指摘を受けたりもしているが、工場と生産部門で生産性の向上と効率化を図っていく」として、AI(人工知能)の活用やプロセスのロボット化、自動化、研修・教育などによって、効率化と競争力強化なども図る。

 4つの領域のうち、「サプライチェーン」では、「責任ある調達」をポイントに人権への取り組みを強化。発注、計画、取り組みに方針を定めて巡視する。取引先工場の従業員からFRに直接連絡できるホットラインを試験的に導入。2020年までに「ユニクロ」の生産量の70%を占める主要素材工場で水の使用量を2016年比で15%削減、エネルギー使用量を10%削減する目標を掲げ、コスト削減にもつなげる。

 「商品」については、「サステイナブル素材への切り替え」を軸に、動物愛護、トレーサビリティ、品質・安全の確保による「世界最高水準の服作り」の実現を目指す。シンプルで長く使えるデザインの企画にも力を入れる。消費量の多いコットンから順にサステイナブル素材に切り替える。持続可能な綿の生産を推進する国際的NGOであるBIC(ベター・コットン・イニシアチブ)へも加盟。水の使用料を削減したり、有害物質の発生を抑えた、環境配慮型ジーンズの開発など、サステイナブルな商品開発に取り組んでいく。メリノウールについては残酷だと言われるミュールシングを実施している農場からの調達を禁止済み。ファーフリー(リアルファーを使わない施策)も「ユニクロ」に続き、18年秋冬にはグループ全体でも全廃を完了する。原材料から生産まですべての足跡が分かるトレーサビリティはコットンからスタートしており、カテゴリーを広げていく。

 「店舗・コミュニティ」については、「コミュニティに歓迎される個店経営の実践」をポイントに、サステイナブルな店舗運営にシフトする。国内の「ユニクロ」「ジーユー」の路面店では梱包材の100%リサイクルを、国内「ユニクロ」店舗では二酸化炭素排出量を20年度に13年度比で10%削減する。難民の自立支援も進め、昨年10月末で57人だった難民雇用(うち、日本が46人、ドイツ7人、フランス4人)を、100人に増やす。

 「従業員」では、「人権尊重」を掲げ、国際基準に基づいた共通指標を策定する。並行して「女性従業員の活躍を支援」では、17年度に女性管理職が31.3%となり、目標の30%を超えた。各種制度を拡充し、さらなる女性比率向上を図る。

 なお、昨年から始めた主要取引先工場の開示については、最新版にアップデート。東南アジアなど中国以外を中心に約35社増えて184社となっている。

 サステイナビリティの考え方や行動が先行している欧米や、環境汚染や人口増加、労働問題などでサステイナビリティに対する意識が高まるアジアのNGOが増加し、日本以上にサステイナビリティは企業にとって必要不可欠な要素になっている。投資家の間でも、ESG(環境・エンバイロンメント、社会=ソーシャル、ガバナンス)投資の考え方も強まっている。「デジタルを活用し、リサーチ力や企画力、計画力などを高め、『無駄なものを作らない、運ばない、売らない』システムの確立」や精度の向上と、「これが『ユニクロ』が考えるサステイナブルな商品だ」というものを分かりやすく明示することも求められていそうだ。

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