ビームスは、ひとり親家庭を支援するNPO法人グッドネーバーズ・ジャパンと連携し、中高生の子どもを持つひとり親家庭を対象に、衣類の無償提供会を2023年から継続的に開催している。今年は、5月24、25日に渋谷区の実践女子大学校内で開催。アパレル5社で構成する「スペシャリティ・ストアーズ・アソシエーション」の会員企業であるアバハウスインターナショナルとノーリーズも初参加し、支援の輪を広げた。
提供会では、キャリー品や売れ残ったアパレル・雑貨を各社240点ずつ持ち寄った。来場した親子は、1人あたりトップス、ボトムス、雑貨それぞれのカテゴリーから1点ずつ無償で持ち帰ることができる。会場は、店舗さながらの空間に仕立て、ラックや什器に丁寧に製品を陳列。試着室やトルソーも用意し、各社の販売経験のある社員がスタッフとして参加して接客を行い、「買い物体験」を再現した。
2日間で、抽選で当選した90世帯が参加した。会場では、「久しぶりに親子で出掛けるいい機会になった」「トータルコーディネートを組めてうれしい。娘と交換しながら、楽しみたい」といった感想が聞かれた。
売れ残り品を廃棄せずに活用したい
発起人は、本間征東・ビームス経営企画本部・サステナビリティ推進部兼ロジスティック本部・戦略部・戦略1課だ。当時、ロジスティックス部門で在庫管理を担当していた本間担当は、売れ残り品を廃棄せずに活用できないかと模索していた。「NPO団体を通じて寄付する方法はあったものの、顔も見ずに一方的に在庫をお渡しするのは、乱暴なのではないかという思いがあった。スタッフの接客を通じて、本当に気に入った服と出合える、透明性のある支援ができればと考えた」と話す。そしてフードバンク「グッドごはん」などを運営するグッドネーバーズ・ジャパンに協力を依頼し、「買い物体験を提供する支援の場」としてスタートした。
23年に第1回を開催し、昨年はグッドネーバーズ・ジャパンの支部がある大阪でも実施した。グッドネーバーズ・ジャパンの綿貫玲子部長は、「私たちが対象としている家庭は、食べる物にも困っているような状況。その中で新しい洋服を買う余裕がないケースも少なくない。過去に参加した方たちからは、このイベントをきっかけに思春期の息子が一緒に出掛けてくれた、帰宅した後も家族で会話が弾んだといった声もあった。すてきな空間でスタッフにコーディネートまで提案してもらえるすばらしい機会になっていると思う」と話す。
今年初めて参加したノーリーズの小島直樹社長も当日会場を訪れ、「ファッションを通じて暮らしを豊かにするというイベントの目的に共感した。『ノーリーズ』は働く女性向けの服が多く、学校行事や仕事の場面でも着られるアイテムがそろう。自分たちにもできる支援があると感じた」とコメントした。
同イベントは現在、ビームスのサステナビリティ推進部が主導する。24年に発足したサステナビリティ推進部では、これまでのCSR活動を引き継ぎながら、環境負荷の低減や従業員の働き方改革など、包括的なサステナビリティに取り組んでいる。経年在庫の活用は、「廃棄衣類ゼロ」に向けた課題の一つであり、これまでにも学校や被災地への寄付、アップサイクル企画などを実施。本取り組みも、そうした活動の柱の一つとして位置づけられている。
本間担当は、「サイズの観点からまだ中高生の子どもを持つ家庭に対象を狭めているが、より対象を広げて衣類にまつわるライフイベントに広げていきたい」と意気込む。今後は、グッドネーバーズ・ジャパンの支部がある全国の地域でも開催を計画している。