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覚悟ありの大丸の「生理バッジ」を評価する ファッションフリークOL「WWDジャパン」最新号につぶやく

 1992年生まれのファッションフリーク女子が、今週のファッション週刊紙「WWDジャパン」で気になったニュースを要約してお届け。渋谷のファッションベンチャー企業に勤める等身大OL、Azuのリアルな目線を生かした「このニュースからはコレが見える」という切り口で、さまざまな記事につぶやきを添えます。

今日のニュース:P.24『あなたの知らないTENGAの世界』

読み解きポイント:
「論点はどこ?冷静になって考えて。」

ニュースのポイント

 TENGAが手掛ける男性向けセックストイ「テンガ(TENGA)」は国内外で男性から絶大な支持を受けている。「ヴァンキッシュ(VANQUISH)」や「リップンディップ(RIPINDIP)」など人気ブランドともコラボしており、阪急メンズ東京には初の店舗を出店、最近は女性向けのセルフプレジャー アイテム「イロハ(IROHA)」にも注力中だ。

AZUはこう読む!

 今回はニュースから少し飛躍します。「セルフケアの一環として、女性が使いやすいアイテムを」というビジョンの「イロハ」が、初の店舗を大阪の大丸梅田店にオープンしました。その「イロハ」がオープンしたのは、“月のみちかけのように、あなたのリズムに寄り添う”をコンセプトにした新しいゾーン「ミチカケ(MICHIKAKE)」内です。「ミチカケ」は「イロハ」の他にもフェムテック専門店「ムーンド バイ エルピーシー(MOOND BY LPC)」や“女性の生理周期に寄りそうライフデザイン”をテーマにした「エミリーウィーク(EMILY WEEK)」など、生理や女性の性にまつわる雑貨からコスメ、衣類までさまざまなブランドを集めています。

 「WWD JAPAN.com」のニュース記事からネットで話題になったのは、「ミチカケ」で試験的に導入された「生理バッジ」についてでした。

 とにかくSNS、いや、ツイッターが荒れたこの話題。みなさん、タイムラインで見かけましたでしょうか?そもそもツイッターをやっていなかったら、この騒動すら知らないかもしれません。現にインスタグラムで「#ミチカケ」「#michikake」を見ると、批判の声は見当たりません。ネットの世界はとても狭く、分け隔てられていて、偏っているのが事実です。それを踏まえてご覧ください。今から記すのは「ツイッター」での炎上について。あなたがツイッターを開かない地球人だとしたら、月の世界の話です。

 今回炎上の火種となったのは、「ミチカケ」が考案した「生理バッジ」。これは生理中であることを示すバッジで、名札にかけるフロアバッジの裏側に、「ミチカケ」とコラボしている漫画「生理ちゃん」のキャラクターが印刷されています。これを表にすることによって「生理中」を表現し、社内のコミュニケーションのきっかけにしよう、というものです。

 まず、以下3点が前提としてあります。

①バッジに着用義務はない
②この施策は「ミチカケ」のゾーンのみで試験的に導入している
③「ミチカケ」は生理用品から下着、サプリまで「生理に関連したアイテム」が多く並んでいるゾーンのこと

 「生理バッジ」の着用に関してはさまざまな議論を呼んでいますが、大半が「女性をバカにしている」「人権侵害」「気持ち悪い」というもの。特に話題になった批判を4つに整理して考えます。

①生理中に働かせるのではなく、
辛ければ休める環境を作るべきだ。

 「生理バッジを付けることは、生理中でも無理して働かせることになるのでは?」という意見。これは、生理の重さは人ぞれぞれで「普通」がなく、必ずしも全員が「生理中だから動けない」、「貧血で辛い」というわけではありません。もちろん、全く仕事にならないくらい症状が重い人もいます。

 症状が重い人は、バッジをつけてまで売り場に立つ必要はありません。もちろんそれを強制しているバッジでもありません。辛いなら生理休暇を取れば良いんです。と、簡単に言いますが、業務内容やスケジュールによっては休みが取れない人もいるでしょう。私も先週、体調が悪いのに絶対に動かせない締め切りがあり、休めませんでした。そういう人が休めるように替えのきく組織を作るのは会社の役割です。

 この論点に関しては、辛い生理中に働かせることを義務化しているバッジではないので、生理バッジの批判にはなりません。どちらかというと会社組織に対して。大丸さんが休暇を取りやすい企業かどうかは知らないし、批判をしている人も内情を知っているかどうか定かではありません。

②生理を公表することを
「強制」するなんてパワハラだ。

 「強制されてかわいそう」「義務じゃないにしても同調圧力を感じるのでは」この意見もかなり見ましたが、この施策に関しては強制しておらず、着用は任意です。そこでカウンター意見として出たのが「強制されていなくても選択肢として出てきたら、つけなきゃいけないと感じるのが普通。女性社員がかわいそう」という声。

 これは、特定の企業を名指しで批判するのではなく、同調圧力が蔓延する労働環境に原因があります。こうして「選択肢」が「強制」や「同調圧力」に変換され燃えていくこと自体が、「それらに苦しむ人が多いという現実」を如実に表していると、勢いのある批判の数々を見て感じました。

 もし②に同意したなら、自分が働く環境を想像してください。選択肢を提示された時、同調圧力を感じますか?それはその選択肢が悪いのではなく、圧力をかける環境が悪いのではないでしょうか。現に私は働いていて、任意参加の施策やイベントがあるときに同調圧力を感じたことは一切ありません。これは性格もだいぶ影響しそうですが。

③こんなことを
考えたのは男性だろう。

 「女性のことがわかってない。考えたのどうせ男性でしょ?」という声。この意見もかなり見ましたが、本当に残念でした。記事では誰が発案したかは書いてありません。しかし「こうしたことを考えるのは男性に決まっている」という先入観での批判なのでしょう。この意見こそ、ダイバーシティ(多様性)&インクルージョン(包摂・包括性)を目指すご時世に真っ向から対立する声。女性の敵は男性と決め込み、当事者になれずとも理解しようと努力する男性を排除する言動です。と、偉そうに書きましたが私も内情を知らずそう思うことがあるので、とても反省しています……。

④さまざまな理由で生理がこない人
に対する配慮が足りていない。

 こちらは闇雲に批判しているというより、真っ当な意見だと思いました。事実として、病気などにより生理がこない人もいるし、それを本当に辛く思う人もいます。もしも従業員の中にそういう人がいて、見るたびに「つける資格が無い」と落ち込んだり、お客さまに辛いことを思い出させるきっかけになったりするのなら、やめた方が良いかもしれません。ただ、これも想定されることではあるのですが、実際はどうなのかわかりません。スタッフとお客さまの声を聞いて、今後の方針を決めていくべきです。だってこの施策はまだ「試験的」なのですから。

 何故誰も疑問を感じずに実行したのか、という意見もたくさんありました。果たして本当に誰も疑問を抱かず、議論を巻き起こすことが見えていなかったのでしょうか?

 「ミチカケ」ウェブサイトのコラムにはこう記してあります。

 「こんな時代に、わたしたち大丸梅田店は、『従来通りのアイテムを取り扱うだけで、これからもお客さまのお役に立つことができるのだろうか?くらしの中の“晴れの日”だけでなく、“雨の日”も正面から見つめることで、みなさまに寄り添えるのではないか?』と、議論を重ねてまいりました。」

 「日本では、女性の性や生理は「隠すべきこと」「恥ずかしいこと」とされてきました。そのため、必ずしも肯定的な反応ばかりではないことを覚悟しています。」

 本来なら明記するまでもないことですが、議論と覚悟があった上での発信です。もちろん批判がある以上、全ての人に穏やかに受け入れられたとは言い難く、嵐のスタートになってしまいました。

 しかし、ここで「大変申し訳ございませんでした。」と頭を下げてほしくありません。大企業が行動を起こすのは「選択肢を増やす」「社会への問題提起」という意味で、とても有意義です。個が活躍する時代といわれ久しいですが、影響力を持つ個人の声高な発信と、人格を持たない企業の発信とでは、意味も役割も規模も違います。

 女性の身体に関するテーマはある種トレンドとなっていますが、正直まだまだ企業のテーマとしては炎上リスク等で荷が重く、個人の意見として受け入れられている段階だと思います。取り上げられるニュースなどを見ても、タイトルにはオピニオンリーダー的な個人名が踊っています。

 そのフェーズを抜け、誰もが自由に語れる(語らない選択肢も含めた)時代になるには、新しい挑戦は必要不可欠です。頭ごなしに批判したり、きりのない揚げ足を取ったりするのではなく、冷静に議論し、問題点はその都度改善していくしかありません。一発で世界を変えるのは暴力だけだし、一回で完璧な正解を出せる人はいないから。

 以上、月の世界で起きた炎上の話でした。地球人にとっては何を言ってるの?という説明のくどさだと思いますが、こんなことが日常茶飯事で起きている世界も一つあるのだと知っていただければ幸いです。

 バッジの話ばかりでしたが、売り場コンセプトや集まっているショップの取り組みは本当に素晴らしいです。扱っているのは生理や性にまつわる商材だけではなく、コスメや漢方、ナイトウェア、アクセサリーなどもあります。そうした「ライフスタイル」と括られる商品たちと同じ並びで、今までタブー視されてきたコンテンツがあるだけ。だってそれも、表舞台には出てこなかったものの、ライフスタイルの中にあるじゃないですか。服を着たり、食事をしたり、くつろいだり、そうした日々の行動の中に。

 「ミチカケ」では、今まで気になりつつも話題に出せないことや、知るきっかけがないことを、誰でもアクセスできる場所で展開しています。そしてこうした売り場を作ろうと覚悟を決めた大丸を評価すべきだと、思います。トレンドだから作ろう、的な規模感ではないことは、説明しなくても良いですよね。

 バッジに関しては試験的な導入ならば期間を決め、実際に従業員やお客さまにアンケートを取り、「本当のところどうだったのか?」を確かめる。そしてここまで議論を呼んだということは皆が気になっているはずなので、結果を公表し、次のステップに進んでいけば良いのかなと思います。
 
 「あるニュースに対する批判的な意見」に対しての考察意見でした。私の考察に対してもさまざまな意見が出てくると思うので、みんなで考えましょう。なぜ良くてダメなのか、ならばどうするべきなのかを。

Azu Satoh : 1992年生まれ。早稲田大学在学中に渡仏し、たまたま見たパリコレに衝撃を受けファッション業界を志す。セレクトショップで販売職を経験した後、2015年からファッションベンチャー企業スタイラーに参画。現在はデジタルマーケティング担当としてSNS運用などを行う。越境レディのためのSNSメディア「ROBE」(@robetokyo)を主催。趣味は、東京の可愛い若手ブランドを勝手に広めること。ご意見等はSNSまでお願いします。Twitter : @azunne