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「“地獄”に対処できるか」 有力投資会社の代表に聞く、起業家に必要な“経営者の資質”

 「WWDジャパン」11月4日号の特集では、ベンチャーキャピタル(VC)であるグローバル・ブレインの百合本安彦・代表取締役社長とその出資先で現在成長中のアパレルD2Cプラットフォーム、PATRAの海鋒健太代表取締役との対談を行った。エンジェル投資家やVCの数が増えてきている現在、出資を受けるスタートアップにとっては資金調達が容易になり、起業の障壁が下がっているとも言える。そんな中でVCはスタートアップのどこを重視し、投資しているのか。先日上場したBASEやメルカリといったベンチャー企業にいち早く目を付け、投資を行ってきた百合本社長の言葉から、現代の起業家に求められる“経営者の資質”について探る。

 グローバル・ブレインは1998年に設立。これまでに累計1000億円を超えるファンドを運用しており、現在は社内でチームを組んで投資を実施。百合本社長本人も投資に関わっている。国内外から年間で約3500社のスタートアップに出資の相談を受けているというが、そのうち出資をするのは50社ほどとかなり少ない。出資を決める際の決め手について百合本社長は「経営者を重視している」と語る。「ベンチャー企業は初めに作った事業計画で運営を続けることはほぼない。サービスやプロダクトの方向転換を行う“ピボット”を繰り返し、ビジネスモデルを作り上げていくのが基本だ。しかし、事業がうまくいかないとすぐに辞めてしまう経営者もいる。われわれは出資先の領域を定めず、ある意味貪欲に投資に取り組んでいるが、預かっているお金を運用する責務がある身としては、“地獄”を見てもそれに対処できる精神力のある経営者が重要だと考えている」と説明する。

 同社はベンチャー企業に早い段階で大きな資金を投じ、出資先の経営者と伴走する“リード”と呼ばれる存在になることが多い。そういった“リード”の中でも、銀行から融資を受ける際の準備やKPIの管理など、デイリーベースで出資先の相談に乗っているのが特徴的だ。「日々企業の相談に乗る“リード”のVCは珍しいと思う。当社の社員は50人超と比較的大所帯だが、これはスタートアップを徹底的に支援するために、広報部門や人材採用子会社などを抱えているためだ」と百合本社長。そのほか、サンフランシスコやイギリス、韓国・ソウル、インドネシアなどにも法人を持ち、企業の海外進出を支援したり、スタートアップと大企業のマッチングイベントを開催したりもしている。

 同社からさまざまな支援を受けることで成長し、上場にまでこぎつけた出資先も多い。そうして上場したベンチャー企業を見て起業を志す者も増えており、百合本社長の目から見ても年々起業家のクオリティーは上がっているという。「例えば、先日のBASE上場で、代表の鶴岡(裕太)さんを目標にする起業家も増えるだろう。そういった歴史の繰り返しだ」。

 事業の成功事例もあり、創業間もないスタートアップに投資するエンジェル投資家やVCも増えた。起業の障壁は以前に比べて下がっているが、百合本社長は「だからこそ、経営者の資質が求められる」と再度説く。「今や情報は大量にある。例えば海外の事例を研究し、日本でビジネスを起こすのは難しくない。つまり、“そこそこ”だったら誰にでもできる。しかし競争が激しくなった今、“そこそこ”では勝てない。起業家としての本質が問われる時代になっている」と語る。起業家の本質の一例として、百合本社長は「組織作りの力」を上げる。「海外ではある程度企業規模が大きくなると、外部からCEOを連れてくるが、日本では基本的に上場時のCEOは創業者であることが多い。つまり、日本においてはCEOの器量が会社に影響を与える。組織が作れなければ、どんなにいい事業領域や発想でも持続するのは難しい。そのほか、精神面や事業構想を作る力など、あらゆる面で“突き抜ける力”が今の起業家には必要だ」。