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東大卒エンジニアが“ネット時代のアパレルビジネス”で目指すものとは?

 ファッションブランドを手掛けるインフルエンサーは今や数多くいる。PATRAは、そういったインフルエンサーブランドのためのプラットフォームを構築する企業だ。創業したのは、東京大学卒のエンジニアである海鋒健太代表取締役。2016年に女性向けの分散型メディア「パトラ マガジン」からスタートした同社は、18年1月に自社ブランド「メロウネオン バイ パトラ(MELLOWNEON BY PATRA)」を設立し、アパレル事業に参入。同年12月に販売プラットフォーム「パトラ マーケット(PATRA MARKET)」を始動させ、自社ブランドのほか、複数のインフルエンサーブランドの運営・販売を行っている。7月には既存株主のグローバルブレインのほか、AGキャピタルなどを引受先とした第三者割当増資を実施。今後も同調達ラウンドで追加クロージングを行い、1億5000万円を調達予定だ。「既存のアパレル、小売業界の属人性をテクノロジーで排除したい」と語る海鋒代表に、創業の経緯や今後の目標を聞いた。

WWD:PATRAの事業内容は?

海鋒健太PATRA代表取締役(以下、海鋒):女性向けの分散型メディア「パトラ マガジン」のほか、ファッションD2Cのプラットフォームを運営しています。ブランドを作りたいインフルエンサーに向け、自社ブランド立ち上げの際に築いたサプライチェーンを提供しています。

WWD:なぜ、アパレル事業に参入したのか?

海鋒:アパレルをやりたいというモチベーションよりは、マーケティングをする中で始めた、という感覚です。創業当時は流行に乗ってユーチューブとインスタグラムを使った分散型メディアからスタートしたのですが、ある時からメディアのマネタイズに限界を感じて。一方でメディアとして集客を手伝っていたブランドが売れる、という現象を見て「だったら自分でやった方が早いんじゃないか」と思ったのがきっかけですね。そこで自社ブランド「メロウネオン」とECを立ち上げました。現在は「メロウネオン」が年商2億円ほどで、全体売り上げの3~4割程度を占める主軸ブランドになっています。

WWD:自社ブランドの運営だけでなく、インフルエンサーブランドのプラットフォームを作ろうと思ったきっかけは?

海鋒:もともと「メロウネオン」でインフルエンサーとのコラボ商品を作っていたのですが、それが非常に売れていたんですよね。コラボ相手のインフルエンサーたちも従来のPRによる広告収入だけでは限界が来ると感じていたようで、ブランドもやってみたいという人が多かった。コラボ商品でも「売り上げの何%を上げますよ」と言ったら非常に喜んでくれて。だったらコラボじゃなくて、本人たちのブランドを始めてもいいだろうと。そこでまず、「あかねこ」さんというインフルエンサーのブランド「キャティーキトゥン(CATTY KITTEN)」を立ち上げたのですが、初月の売り上げが330万円と好調だった。インフルエンサーのブランドはある程度売れる、と確信しました。

インフルエンサーブランドを増やす中で
オペレーション効率化のためのシステムを構築

WWD:そこから徐々にインフルエンサーブランドを増やしていったと。

海鋒:はい。現在は自社が2ブランドと、インフルエンサーが8ブランドで、今後も増やしていく予定です。インフルエンサーブランドが売れるとはいえ、1ブランドの売り上げには限界がある。ブランド数を増やすことで事業を拡大しようと考えました。そこで重要なのがオペレーションの効率化。当時はブランドごとにドメインがバラバラでしたが、「パトラ マーケット」として1つのドメインに集約しました。ブランドの世界観は各々が自身のインスタグラムなどである程度作りこんでいるので、販売サイトは世界観よりも買いやすさを重視した設計になっています。

WWD:ドメインを1つに集約することで、どのような効率化が可能になった?

海鋒:MDや在庫などを一括管理できるのは大きいですね。また、月に30万人以上の人が訪れている「パトラ マーケット」のトップページや検索ロジックを変更することで在庫の消化率をコントロールすることもできます。当社はほぼ全てのシステムを内製しており、リアルタイムで在庫状況を把握しています。例えばアクセス数が悪くて売れ行きが思わしくない商品があれば閲覧数を増やすような施策を打つなど、スピーディーな対応が可能なので一般的なアパレル企業と比べ、在庫回転率は約2倍になっています。

WWD:7月には資金調達を実施した。使用用途は?

海鋒:韓国法人の設立と、リアル店舗の出店ですね。韓国法人は9月に設立予定で、現在PATRAの仕事をメインにしていた現地の工場を買収してサプライチェーンの最適化を行い、デザイン拠点も設ける予定です。この機能の一部を外部に解放して誰でも個人のインフルエンスで商品開発ができるOEM事業を展開していければと思っています。

WWD:リアル店舗はどのような店舗に?

海鋒:年内に出店する予定ですが、現状の方針としては少在庫で、オンラインとオフラインをシームレスにつなぐ方法を試したいです。既にオンラインとオフラインで顧客IDを統一するシステムを構築し、ポップアップストアなどでサイトのユーザーが来店しているか否かなどのトラッキングを行っています。究極的には、試着室の何番に入っているお客さまが過去にこのような商品を買っています、といった情報をもとにスタッフ接客ができるようになればいいなと思っています。

WWD:ネット上で規模を拡大する中で、リアル店舗を出店しようと思った理由は?

海鋒:どんなにEC化率が上がったとしても30%程度が限界だという僕個人の仮説が前提としてあります。デジタル化が進んでいる中国などを見てもそうなんですよね。つまり残りの70%がオフラインで、その大きなマーケットには着手すべきだろうと。また、ルミネエスト新宿などでポップアップを出店した際に、システムで「パトラ マーケット」のサイト会員について調査をしたところ、6割がサイトで買ったことがないお客さまでした。ネット通販だと商品への不信感やサイズ感などの問題もある。リアル店舗があれば、そういった問題も解決できるうえに、商品を知ってもらうことでオンラインの購入者も増えるだろうと考えています。

WWD:今後の目標は?

海鋒:韓国法人の設立や、リアル店舗の出店などもありますが、リテールの属人性の排除が大きな目標の1つです。アパレルは非常にレガシーな業界で、未だに納品書が複写式のものだったり、海外の工場へファックスで連絡をしなければならなかったりと、労働集約的な部分が多い。テクノロジーで塗り替えていける余地がかなりある。不合理や無駄をシステムでどれだけ解決できるのか、挑戦していきたいと思っています。