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ロンドンコレのヘアメイクは“ナチュラル”一択 個性を生かしてヘルシーに

 9月13〜17日に開催された2020年春夏シーズンのロンドン・ファッション・ウイーク(LONDON FASHION WEEK)に参加したブランドは、ナチュラルなヘアメイクが主流だった。ヘアとメイクは作り込まず自然体で、取材したメイクアップアーティストとヘアスタイリストからは“個性を生かす”“ありのまま”“自由な女性”という言葉が多く返ってきた。

 女性にとって、薄づきのナチュラルなヘアメイクは決して手抜きではない。むしろ、日ごろの手入れを入念に行う必要がある。今後もナチュラルなメイクのトレンドが続けば、世界中で拡大し続けているスキンケア市場にとってはさらなる追い風となりそうだ。バックステージ取材を行った4ブランドのビューティの傾向を紹介する。

TOGA
ラフさ演出し“強さ”を表現

 「トーガ(TOGA)」のメイクは、伊藤貞文「NARS」グローバルアーティストリーディレクターがリードした。モデル一人一人の個性を尊重するように、仕上がりは極めてナチュラル。スキンケアで素肌をしっかり整えた後、肌色を覆わない透明感のあるベールでカバーするファンデーション「ピュアラディアント ティンティッドモイスチャライザー」を少量のせてベースメイクを仕上げていく。眉毛は「ブローパーフェクター」で隙間を埋め、アーチは描かずストレートに毛の流れを整えた。リップはブランド創立25周年を記念してフルリニューアルした「リップスティック」から、マットなモーブヌードピンクとローズブラウンの2色を使用。モデルの肌の色に合わせて色を選び、塗るのではなく唇の輪郭を縁取り、血色が良く見えるよう軽くのせていく程度だった。伊藤ディレクターは「『トーガ』が描く女性の“強さ”を表現するために、キレイというよりは少しラフに見えるくらいにし、とにかくナチュラルでフレッシュに仕上げた」と説明した。ヘアはロンドンを拠点に活動するアサシ(Asashi)が手掛けており、メイク同様にナチュラルさを意識してぞれぞれの癖毛を生かしていたようだ。ランウエイではロングヘアのモデルが軽やかに髪をなびかせているのが印象的だった。

SIMONE ROCHA
こだわりの“素朴風”ヘア

 「シモーネ ロシャ(SIMONE ROCHA)」は今季、デザイナーのルーツであるアイルランド伝統の“レンボーイ”から着想を得た。アイルランドでは“聖ステファノの日”とされる12月26日に、少年がミソサザイという小さな鳥を捕まえ、街の家々を回ってお金をねだる伝統行事がある。レンボーイと呼ばれる少年らが着用する衣装をほうふつとさせるわらを使ったヘアが施され、メイクには鳥の羽根がペイントされていた。バックステージは終始せわしなく、ショー開始直前までほとんどの時間をヘアのセットに費やしていた。ロングヘアのモデルは髪をブロッキングしていくつもの三つ編みの中にわらを編み込んでいき、最後にアーチ状に留めて完成だ。カチューシャやヘアアクセサリーをつけたモデルたちは三つ編みと編み込みを多用し、ショートヘアのモデルは七三分けで、共通しているのは顔に髪がかかることなく、「KMS」のジェルでしっかり固められていることだ。ヘアのダフィー(Duffy)は「ドラマチックでフェミニンな『シモーネ ロシャ』だが、今季はレンボーイをイメージしてドライな質感で乱れることのないヘアスタイルに仕上げた。編み込みは、フェミニンな印象のフレンチ編みをいくつも作って、ドレスの装飾やアクセサリー、レンボーイのイメージとリンクするように仕上げた」と説明した。トーマス・デ・クルイヴァー(Thomas de Kluyver)が率いたメイクはセミマットな肌で素顔風でナチュラルだった。メイクにスポンサーはなく、メイクアップアーティストが持ち込んだアイテムを使用した。アマ・クワシ(Ama Quashie)が手がけたネイルは、パールがポイント。「ネイルもジュエリーの一部だという考えから、ジュエリーを着用するモデルだけにパールの装飾をあしらった。ルックはフェミニンではあるが少年っぽさも兼ね備えていたので、『キュアバザー(KURE BAZAAR)』のドライな質感のマニキュアをベースに、ラフさが残るようなネイルにした」と解説した。

JW ANDERSON
シャワー後のような清潔感

 「ジェイ ダブリュー アンダーソン(JW ANDERSON)」は、若々しくフレッシュでヘルシーなメイクとヘアだった。「キコ ミラノ(KIKO MILANO)」のアイテムによって施されたメイクアップは、まずスキンケアラインで顔をマッサージしながら肌を整えることからスタート。保湿クリームやメイク下地、ハイライトが一つになった「スマート ラディアンス クリーム」を塗り、薄づきのBBクリーム「グリーン ミー」を顔の中心と気になる部分にのせた。仕上げに「スカルプティング タッチ」でシェーディングを入れてメリハリを加え、完成させていく。「スマート フュージョン リップスティック」のカラー403と434をモデルの肌色に合わせて唇に塗った後、少量をブラシに取ってチークとしても使用した。最後に「ポップ レボリューション ハイライター トゥ ゴー」でハイライトを入れ、内側から満ちるような潤いの艶を演出した。メイクを手がけたリンジー・アレキサンダー(Lynsey Alexander)は「“多様性を尊重する” をテーマに、とにかくナチュラルさを意識した。朝起きてシャワーを浴びたばかりのような清潔感をイメージしてフレッシュに仕上げている。素顔のまま堂々と外に出かける女性を表現した」と説明する。ヘアは全体的に少しウエーブがかかり、毛先にいくほどドライな質感だった。「ロレアル(L’OREAL)」のアイテムで仕上げたヘアについてアンソニー・ターナー(Anthony Turner)は「イメージは、前夜の楽しかったパーティーを翌朝に思い出している、若々しく自由なマインドの女性。ありのままの姿が最もセクシーに見えるようなエフォートレスな雰囲気をつくった。細めのコテでウエーブを作り、ランウエイで髪がふんわり揺れるように毛先は特に動きをつけた」と説明した。

REJINA PYO
ビーチで遊ぶ快活な女性像

 ロンドンを拠点にする韓国出身のレジーナ・ピョウ(Rejina Pyo)は、詩人でアーティストのエテル・アドナン(Etel Adnan)と陶芸家ルーシー・リー(Lucie Rie)の作品から着想を得たコレクションを発表した。常夏のリゾート地をイメージさせる鮮やかなカラーパレットのルックには、日焼けしたようなメイクアップがほどこされた。スキンケアラインで肌を整えた後、「ロード アンド ベリー」のスティック状のファンデーション「パーフェクトスキン ファンデーション」を少量塗って、ベースメイクはセミマットに仕上げた。4色が1パレットになった「グロー オン ザ ゴー」を使い、艶感をアップさせていく。数色を混ぜながらチークとシェーディングし、鼻の上と耳にも色をのせて日焼けしたてのような肌が完成した。唇にはマットな質感のリップスティックを指でポンポンとたたきながらのせて、自然に仕上げた。メイクをリードしたゾエ・テイラー(Zoe Taylor)は「太陽に愛される、開放的で自由な女性の夏のメイクだ。色はほとんど使わず、ナチュラルにした」と説明した。ヘアは顔周りをウエットにし、毛先にいくにつれてドライな質感へと変化する。ヘアのティナ・オーテン(Tina Outen)は「ロレアル」の商品を使用していた。ランウエイに登場したモデルたちは、ビーチで遊ぶような女性のように快活だった。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける