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仮面の招待状に度肝 「グッチ」は今季も“フツウ”の境界線を越えてゆく

 昨シーズンパリで発表した「グッチ(GUCCI)」がホームのミラノに戻り、2019-20年秋冬コレクションを発表しました。ホテルのスタッフが「すごいのが届いたよ」とニヤニヤしながら台車で部屋まで運んでくれた招待状がこちら。開けてびっくり、とはこういうときに使う言葉でしょう。

 入っていたのは、原寸大の白い仮面です。手作りだそうで、リアルです。怖い……。

 ショー会場につくと相変わらずユニークな恰好の人たちが集まっているのですが、もはや驚いたり「変わっている」という感想が頭に浮かんだりはしません。浮かぶのは「みんな楽しそう」。ここでは個性的なことがフツウなのです。“それ「グッチ」っぽいけど、「グッチ」じゃないよね?”という服やアクセサリーを身に着けている人も多いのですが、それこそクリエイティブ・ディレクターのアレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)が望むところでしょう。こちらはシンガーソングライターのぺティート・メラー(Petite Meller)。カワイイ髪型!恐怖のマスクもチークをすればカワイイのですね……。

 仮面の意味について、プレスリリースから一部を引用します。「仮面は隠す道具であり実態を偽るものと見なされてきた。われわれに何か信頼できないものと思わせるものとして。しかし仮面の下が真正ならば、それは自分自身についての考えを守るものとなり、自分自身が感じる自分になるための手段となる。(中略)。仮面は自分がベストと思う役を好んで演じるとき、われわれ自身というものを見せてくれる」。哲学的ですが、何となくわかると思う方は多いのではないでしょうか。この視点はファッションとは関係なく、あらゆる人に当てはまる話です。“仮面”を“SNS”に置き換えてもいいかもしれません。

 さて、今シーズンの「グッチ」で印象的だったのは、ジャケット&パンツのセットアップです。オーバーサイズのボクシーなジャケットにウィメンズもタイドアップしてこれまでよりフォーマルに。激しいスパイクのアクセサリーや耳飾りを外せば、思いのほかリアルなアイテムが増えています。ストリートからフォーマルへ、トレンドの軸がシフトしつつある今季のムードをずばり表しています。でももちろん、“フツウ”ではありません。サイズ感や素材の組み合わせなど他を探しても見つからないであろう個性がそこにはあります。また、春画プリントとレースを合わせたブラウスなどよりエキセントリックなアイテムも引き続き多数提案されているので、ご安心ください(笑)。「グッチ」は今季も“フツウ”の境界線を広げゆきます。

 ショー会場はギラギラとしたシルバーの壁と強い照明に囲まれ、そのエキセントリックな空気を助長していましたが、バックステージも同様です。バックステージの壁にまでこだわるブランドは少なく、シーズンの世界観を徹底して作り上げる「グッチ」の姿勢をそこに見ます。バックステージでより素が出たモデルが着る「グッチ」は、モデル自身の仮面の下の個性も加わり、より印象に残ります。

 ちなみに、招待状の仮面はホテルでこんな風に活用しています。細かいものをどんどん放り込めて結構便利です。