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韓国発アイウエア「ジェントル・モンスター」が仕掛ける“美術館店舗”はどうやって生まれた?

 今年5月に「まるで美術館、韓国で“商品のない店舗”が急増する理由」という記事でも紹介した通り、ECでの買い物が当たり前となっている韓国では、体験のためのショップが増えている。その先駆的企業といえばアイウエアブランド「ジェントル・モンスター(GENTLE MONSTER)」だろう。店頭はまるでショールームのような出で立ちで、商品のないフロアまである。今回は同ブランドのグローバル・プロジェクト・ディベロップメント チームに所属するメンバーに話を聞くことができた。

 「ジェントル・モンスター」は2011年にスタートしたブランドで、現在は国内に旗艦店が6カ所。その他、デパートや免税店に24店舗を構える。海外には11店舗あり、19年初めにドバイ、19年末にはパリにも旗艦店をオープンする計画だという。17年度の売り上げは2300億ウォン(約230億円)で、今年度はさらなる成長を見込むという。ちなみになぜアイウエアブランドを始めたのかを聞くと、「代表いわく、韓国で面白いアイウエアビジネスをやっているところがなかったから」だという。

 現在「ジェントル・モンスター」では店舗社員も合わせて、およそ300人が働く。アイウエアのデザインに関わるのはたったの4人で、ブランディングチームが約40人、店舗デザインチームが50人というなんとも極端な社内体制。店舗や商品の見せ方にこだわるだけの人員配置ができているわけだ。

 ソウルではカロスキルにある旗艦店を訪れた。地上5階地下1階からなるが、商品は2〜4階にしかない。それ以外は“見せる”ためのスペースだ。現在は“カラスの国に宇宙船が進撃してきた”というテーマでフロアごとに異なるストーリーを表現している。こういったストーリー作りから内装、小物まで全てをインハウスで制作しているそうだ。ちなみに社内には調香師までいて、店舗ごとに全て異なる香りを作っている。内装は年に1回大掛かりな工事をして変えるというが、その理由は「メンバーがみんな飽き性だから」だという。

 「ジェントル・モンスター」はここ最近、「アレキサンダー ワン(ALEXANDER WANG)」とコラボしたり、英セルフリッジでポップアップをやったりと、着実に世界にその名を知らしめている。実際、ポップアップや出店の依頼も世界中から来るそうだ。しかし、空間はブランドにとってもっとも大切な場所だからこそ、安易に出店をすることはない。「まず、空間チームの人数が限られているためにプロジェクトの数に限界があります。また、いくらやりたくても、本当にわれわれの世界観を表現できる広さがなければ代表がOKを出さないのです」。

 実際に売り上げが上がっているとはいえ、これほど空間に注力するのは、あまりに費用がかかるのではないか。そうたずねると、「たしかにはじめは費用対効果を懸念していた。でも、結果的には店舗のおかげでブランドを広めることができた。われわれは広告をほとんどやらないので、空間こそが最大のブランディングの場所。お客さんが空間に長くいればいるほど、印象に深く残り、今後のオンラインでの売り上げにもつながる。また体験を人に伝えるという2次拡散も起こる」と答える。そもそも韓国ではECでの販売がメーンのため、店舗にかける固定費用などの考え方は日本と全く異なる。店舗を広告としてとらえる、ある意味“ポップアップ”的な直営店の使い方はいかにも韓国らしい事例だと感じた。