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ストリートシーンに「ラルフ」を浸透させたローライフ 「パレス」とのコラボに物申す

 イギリスを代表するスケートブランド「パレススケートボード(PALACE SKATEBOARDS以下、パレス)」と「ポロ ラルフ ローレン(POLO RALPH LAUREN以下、ラルフ)」のコラボが22日に正式発表されたが、ローライフ(LO LIFE)のメンバーにはショックが広がっている。

 ローライフはニューヨーク・ブルックリンで1980年代後半に結成された元非行集団であり、「ラルフ」の熱狂的なコレクター集団だ。メンバーが全身「ポロ スポーツ(POLO SPORTS)」を身に着け、当時のストリートシーンに「ラルフ」を浸透させたことで有名。彼らはニューヨークのメイシーズ(MACY'S)をはじめとする百貨店を“襲撃”し、一番見栄えのよい「ポロ スポーツ」を万引きすることを日々のミッションにしていた。盗んだアイテムは売り払うか、または“戦利品”と称して身に着けていたという。

 2017年に米「WWD」が調査した結果、米国の若者の多くがローライフのスタイルから「ラルフ」に注目するようになったことが分かった。ローライフは現在では衣服を寄付するチャリティーイベントなどを行う社会団体として活動している。

 当初はサブカルチャーや古着の人気に目を向けていなかった「ラルフ」だが、次第にクラシックピースの再販や、古着コレクターに商品の発売を知らせるアプリを開発するなど力を入れるようになり、今回の「パレス」とのコラボへと発展したようだ。

 ローライフのメンバーで、「ローライフ」ブランドを16年に立ち上げたウィリー・エスコ(Willie Esco)は、「ラルフ」の人気商品に着想を得たアイテムをオンラインで販売している。エスコは「グッチ(GUCCI)」がハーレムの伝説的テーラー、ダッパー・ダン(Dapper Dan)と正式に協業し、ダンのストアやアトリエを再オープンさせたことを例に挙げて、「ラルフ」もLo-Lifeとコラボをしてもよかったのではと話した。「『パレス』とのコラボを聞いてもショックは受けなかった。売れるとは思うが、両ブランドの関係が希薄だし、もうけ目当てのコラボに思える」と話した。

 プランスロ(Prance-Lo) の名でも知られる47歳のスティーブン・コルビー(Stephen Corbie)はローライフのオリジナルメンバーだ。10代の頃から「ラルフ」のコレクターであるコルビーは、コラボの相手がニューヨークのストリートカルチャーを代表する「シュプリーム(SUPREME)」ではなく、なぜロンドンのスケートボードブランド「パレス」なのか納得できないと言う。「ロンドンのコレクターがアメリカのストリートスタイルで着飾る必要があるのか?『パレス』の創立者が『ラルフ』のファンだというだけでは十分な理由にはならないし、本当の動機は分からない。『パレス』は『ラルフ』に心底惚れ込んでいるのか」と疑問を呈した。

 ローライフのメンバーではないコレクターにも話を聞いてみた。27歳のロバート・ゴードン(Robert Gordon) は04年から「ラルフ」の熱狂的コレクターだ。「『ラルフ』とストリートウエアブランドのコラボは、ここ数年で再販されたクラシックピースの成功を見るとブランドの考えも理解できるが、昔からのコレクターが強く反対しているのも分かる。『ラルフ』がブランド50周年記念をローライフとコラボしなかったのは失敗だったと思う。ローライフが『ラルフ』のアイテムを世界に知らしめたからこそ、ストリートカルチャーでも注目を集めた。ローライフがいなかったらそうはなっていなかった」。

 38歳のクリスチャン・ロハ(Christian Loja)は今回のコラボはうれしい驚きだったという。「若手ブランドが『ラルフ』とコラボするのはいいことだが、全てはデザイン次第だ。『ラルフ』のコレクターは、スケートボーダーでも登山家でもスキーヤーでもない。でもデザインがよければ、よい商品だと思うし、その意味では『パレス』とのコラボは成功すると思う」。

 ニューヨークのビンテージショップ、ディープカバー(DEEPCOVER)を経営する「ラルフ」コレクターのウィル・ワグナー(Will Wagner)は、「シュプリーム」ではないブランドとのコラボには驚いたが、ブランドの判断にうなずいたという。「『シュプリーム』はすでに多くのブランドとコラボしているから新鮮味に欠ける。だから同じ方向性を持つ、あまりコラボをしていないブランドを選んだのかもしれない」。

 コルビーは、ローライフのメンバーは皆「ラルフ」一筋だし、いつの日かコラボするチャンスをつかみたいと言う。「ローライフの昔のやり方が、『ラルフ』との関係に溝を生んでしまった。だが、俺たちも大人になり、社会に適応している。俺たちの存在を認めてくれればそれだけでいい。俺たちはこれまで通り、「ラルフ」のアイテムをこれからも買い続ける。そうじゃないと浮気をしているようで、落ち着かないよ」。

 「ラルフ」と「パレス」のコラボ商品の発売日は、欧米の実店舗が11月9日で、日本と韓国および欧州の「ラルフ」とドーバー ストリート マーケット(DOVER STREET MARKET以下、DSM)の公式オンラインストア、米「ラルフ」アプリが10日。取り扱い店舗は、3日にオープンするDSMのロサンゼルス店をはじめとした世界11店舗と限られており、日本では「ラルフ」のキャットストリート店、「パレス」の東京店、DSMの銀座店と世界最多の3店舗で販売される。