毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2025年10月13日号からの抜粋です)
村上:2026年春夏のミラノは、デザイナーが交代した注目ブランドをまとめました。
木村:私はミラノコレを取材し始めて4シーズン目なのですが、デザイナー交代の現場を見るのは初めて。マチュー・ブレイジーからルイーズ・トロッターに交代した「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」のショーを見て、メゾンのレガシーが更新されていく様を見ることができました。ルイーズは日常着が得意で、コレクションではマチュー時代の象徴的だったフリンジたっぷりなドレスも出てきましたが、シンプルなシャツなどとコーディネートしていました。
村上:マチューはテーラードが得意で、少年・少女のようにピュアなマインドでアーティかつクラフトなコレクションを見せていましたが、ルイーズはリアリティが信条。ともに“イントレチャート”という技法を使っていても、表現が違っていて、それがメゾンの魅力の幅を広げています。
アメリカ市場へのシフトに注目
木村:ミラノで何が気になりましたか?
村上:デザイナー、ラグジュアリーブランドが世界的に停滞・低迷している中での各ブランドの試行錯誤でしょうか?価格を下げるのは難しくても、維持する、裾野を広げるという努力が見られました。同時に、アフォーダブル・ラグジュアリー・ブランドのファッションショーも増えましたよね。
木村:その一方で「ブルネロ クチネリ(BRUNELLO CUCINELLI)」はレッドカーペット用ドレスを、「グッチ(GUCCI)」もラグジュアリーなドレスを発表していましたし、高額品需要もありますよね。
村上:特にドレスは、注力する市場を中国からアメリカにシフトする動きでしょう。アメリカは先進国の中では珍しく人口が増えていて、Z世代も多い。レッドカーペット用のドレスと、リアルで実用的なスタイルを強化する動きが見えてきたシーズンでした。「ボッテガ・ヴェネタ」による在米歴が長いルイーズの起用も、アメリカ市場を見据えているという見解も。「ヴェルサーチェ(VERSACE)」の囲み取材は、約半数が米「WWD」を含むアメリカンメディアでした。対してアジアは私と韓国版「W」だけです。情報をどこに届けたいか?分かりやすいですよね。