サステナビリティ
連載 エディターズレター:SUSTAINABILITY 第57回

「サステナビリティの次は“ケア”」 “お互い様”が生む関係の経済

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「サステナビリティの次は“ケア”」 “お互い様”が生む関係の経済
最近、欧州のビジネス現場で、「ケア(care)」という言葉がしばしば登場します。「ケア」は、アメリカの心理学者キャロル・ギリガン(Carole Gilligan)が1980年代に提唱した「ケアの倫理(Ethics of Care)」に端を発し、医療や福祉の分野で使われてきた概念ですが、近年では経営やデザイン、リーダーシップの分野に広がっています。

ギリガンは当時主流だった「正義の倫理」、つまり法律や原則に基づき「公平に判断する」ことを重視する考え方に対し、それが男性中心的な倫理観に偏っていると主張。自身の著書「In a Different Voice(もうひとつの声)」(1982)で、女性やケア労働者の中にある「他者と関係を保ちながら応答する倫理」を見出し、それを「ケアの倫理」と名づけました。つまり「何が正しいか」よりも、「どうすれば関係を続けられるか」を重視した考え方です。その存在が道徳やリーダーシップを考えるうえで重要な転換点となったと言われています。

医療や福祉の現場で先行したのは、そこでは常に「どちらが正しいか」ではなく、「いまこの人にとって何が最善か」を判断する状況が繰り返されるから。普遍的ルールや権利原則よりも相手の状況を感じ取り、応答する力が重要になります。医療や福祉で働いた経験がなくても、子育てや介護に携わる中でこのことを痛感する方は多いのでないでしょうか。

IKEAやユニリーバが経営に取り入れてる“ケア”発想

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