リドヴィッジ・エデルコート(Lidewij Edelkoort)が主催するアメリカのテキスタイルデザインコンテスト“ドロシー ワックスマンインターナショナル テキスタイル デザイン プライズ 2025(DOROTHY WAXMAN INTERNATIONAL TEXTILE DESIGN PRIZE 2025)”は、特別賞に文化ファッション大学院大学に在学する村田充生(むらた みつき)さんの作品を選出した。
村田は、世界100校以上のファッションスクールから日本人唯一のファイナリストに選出され、「ファッション=農」というコンセプトのもと、コレクション「WE WANNA 農!!!」を発表。米国を舞台に新しいファッションの可能性を提案した。
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同コレクションでは、農業において頻繁に使用されるブルーシートに注目した。旧式織機のひとつであるシャトル織機を用い、緯糸にブルーシートの原料であるポリエチレンフィラメント、経糸に綿と麻を使用したテキスタイルを開発。村田の故郷・長野県内の博物館と共同調査し、野良着の柄をアップデートした縞柄を織り込んだ。フィラメントは、ブルーシートを最初に開発・製造し、今日まで続く萩原工業からの提供だ。完成したテキスタイルは素朴でありながら適度な艶を放ち、農の素材である藁や稲を想起させる。
同コンテストの対象は、テキスタイルまたはファッション分野の現役学生、もしくは卒業間もない学生だ。賞は、持続可能な取り組みの実践とテキスタイルデザインにおける革新的な創造性を示したアーティストに授与される。村田は、特別賞に値する”スペシャル メンション(Special Mension)”を受賞した。
村田は、長野県の山村に農家の長男として生まれ育ち、現在は文化ファッション大学院大学 ファッションビジネス研究科ファッションクリエイション専攻 ファッションデザインコース2年に在学している。生前、農業に従事する祖父が口にした“百姓”をルーツとし、自らのファッションを“農”と表現。ファッションデザインは、衣服のデザインに留まらず、“人の在り方”であると考え、新しい“農”を目指している。
今回の受賞について村田さんは、「他の候補者はほとんどがテキスタイル専攻の学生だったが、(自分は)ファッションデザインの視点から『ファッション=農』というコンセプトで挑戦した。百姓というアイデンティティに基づいて、産地の工場や博物館とコラボレーションした独自性や新規性が評価されたと考えている。今後、日本から世界へ自身のファッションキャリアを展開していく上で必須となる視点を得られた」とコメントした。
PHOTO:MITSUKI MURATA