ビジネス
連載 齊藤孝浩の儲けの秘訣 第19回

仕入れ予算をどう使う? 「ザラ」や「ユニクロ」も実践する“需要連動生産”の極意

WWDJAPAN.comは4月までマンガ版「ザ・ゴールシリーズ 在庫管理の魔術」を連載していました。在庫過剰に陥ると、つい値下げセールに頼ってしまう――。しかし、本当にそれしか方法はないのか? 利益を高め、最大化するための解決策を、アパレル在庫最適化コンサルで「ユニクロ対ZARA」「アパレル・サバイバル」「図解アパレルゲームチェンジャー」等の著者である齊藤孝浩ディマンドワークス代表が、同マンガを読みながら、解説していきます。今回は最終回の第16話を取り上げます。

原料に近い段階ほど在庫リスクは小さい

テーマは「バイヤーの仕事は仕入れ予算を使い切ることじゃない——ザラやユニクロも実践する“需要連動生産”の極意」です。

マンガ「在庫管理の魔術」の第16話は コチラ

先にシーズン分の素材を用意しておき、すべてではなく販売に必要な分(約4週分)だけ、小ロット短サイクルで製品化して店頭需要を見極めて追加生産をかける。これは、まさしく「ザラ(ZARA)」が取り組む生産方式で、ハンナズバイヤーのあいはサプライヤーと話し込みながらこの手法にたどり着きました。

アパレルの製品化の工程──原料(原綿やチップ)→原糸→織り編み(生機)→染色→原反(生地)→裁断・縫製→製品化──において、製品に近づけば近づくほど在庫リスクは高まります。製品化してしまったら、その商品のその色のそのサイズを欲しがる人にしか売れません。

一方、原料に近い段階ほど在庫リスクは小さくなります。生地段階であれば他のサイズ、製品に転用できますし、染前の生機であれば需要のある色に染めることが可能です。また、同じ原反でも、パンツにするかジャケットにするかは、需要動向を見てから判断できます。

逆にリードタイムで言えば、原料に近いほど長く、製品に近づくほど短くなります。つまり素材が揃っていれば、すぐに製品化できる。供給のスピードとリスクをどうバランスするかが、仕入・生産戦略のカギなのです。

売上高よりも、最終粗利額の確保こそが大事

この原理を上手くマネジメントするのが「需要連動生産」と呼ばれるもので、原型は「トヨタ生産方式(TPS)」とされています。トレンドファッションの「ザラ」だけでなく、ベーシックの「ユニクロ(UNIQLO)」も取り入れています。たとえば、ユニクロはシーズンや年間販売数量が見込める定番商品の糸や素材を契約し、必要な品番・色・サイズごとに7割程度を製品化し、残りの3割はSKU単位で需要に即応する体制を敷いています。

「需要予測」という言葉がありますが、半年先、1年先と予測する時期が先になればなるほど当てるのが難しいことはわかっています。一方、1カ月後、数週間後と予測の射程が短くなればなるほど、的中率を高めることができます。小ロット生産であれば、仮に予測がズレても過剰在庫リスクは抑えられ、値下げを最小限にとどめることができます。

チェーンストアのバイヤーやMD(マーチャンダイザー)の仕事は、仕入予算を使い切ることやコスト交渉だけではありません。サプライヤーのWINを考え、協力を得ながら、売れ筋や定番商品のタイムリーな調達によって、欠品を防止し売り逃しを減らし、顧客満足と企業利益の最大化を図る。これが彼らの重要な役割です。

そして、値入(ねいれ)だけを追求するよりも大切なのは「歩留まり」です。つまり、値下げを抑えて在庫を売り切り、営業利益の原資である最終粗利額を確保すること。それこそが本質的な仕入であり、仕入に携わる職務の方には、ぜひ肝に銘じていただきたいと考えます。

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