ビジネス
連載 齊藤孝浩の儲けの秘訣 第16回

欠品削減と在庫圧縮を同時に実現! サプライヤーも喜ぶ交渉術

WWDJAPAN.comは4月までマンガ版「ザ・ゴールシリーズ 在庫管理の魔術」を連載していました。在庫過剰に陥ると、つい値下げセールに頼ってしまう――。しかし、本当にそれしか方法はないのか? 利益を高め、最大化するための解決策を、アパレル在庫最適化コンサルで「ユニクロ対ZARA」「アパレル・サバイバル」「図解アパレルゲームチェンジャー」等の著者である齊藤孝浩ディマンドワークス代表が、同マンガを読みながら、解説して行きます。今回は第15話を取り上げます。

外部とのミスマッチをどう解決するか

前回までに、統計の集約効果と店間移動によって、内部のミスマッチを解決しました。この後に起こるのが「外部とのミスマッチ」、つまり仕入れ先との間に生じる問題です。

今回は、この問題の解決に挑みます。テーマは「欠品削減と在庫圧縮を同時に実現!サプライヤーも喜ぶ交渉術」です。

マンガ「在庫管理の魔術」の第15話は コチラ

以前のコラムでもお伝えした通り、チェーンストアの売り逃しや過剰在庫問題はMDやバイヤーのような仕入担当者が、仕入の精度を上げなければ改善しないと思われがち。

しかし、その前に解決しなければならない問題があります。それは内部のミスマッチです。

具体的に言うと、配分担当者が店舗の販売力以上に過剰に在庫を送り込んだり、店舗が売れ筋商品の在庫を過剰に抱え込むことによって倉庫に補充在庫がなくなり、他店には余剰在庫があるのに、売れる場所で欠品が発生することによって起こる「販売機会損失=売り逃し」です。

マンガの舞台であるアパレルチェーン、ハンナズでは、2つの方法でこの内部のミスマッチを解決しました。

ひとつは、統計の集約効果を利用し、店舗に多めに在庫を持つよりも、倉庫に在庫を十分に確保したこと。そして、小まめに売れた分だけ補充することで、拠点ごとの在庫のだぶつきと欠品の同時発生を解消しました。

もうひとつは、クロスシッピング、つまり在庫の横持ちや店間移動によって、拠点ごとの需給ギャップと在庫偏在を解消しました。

内部のミスマッチが解消すると、いよいよ実需に基づいた、本当に必要な在庫量や仕入量が見えて来ます。そして、社内での在庫の融通が利かなくなる、本当の欠品に直面します。

これに対して、バイヤーである、あいが取った行動はサプライヤーとの早期納品、つまり、発注商品のリードタイムの短縮交渉です。

無理難題を言っているような、バイヤーあいの要求に対して、サプライヤーの返事は、全ては納品出来ないが、分納なら出来るという妥協案でした。

サプライヤーの本当のWINを考える

ここで、あいは、はっと気が付きます。納品量っていうものは、各店舗へ1回で振り切る、売り切り御免の商品以外は、発注数全量なんて、すぐには要らないのが現実です。
おそらく最初に店舗に入れたい在庫量は3〜4週分もあれば十分でしょう。

一般的に、発注量全量が出来上がってから一括納品するからリードタイムは長くなるもの。しかし、納品した単位でお金をくれるのなら、むしろサプライヤーは小ロットでつくり、早く納品して、代金を早く手にすることを望む、という、異業種ではある意味、常識になっている商慣習に気付かされます。

サプライヤーの経営者が困っているのは、たくさん受注を取ることよりも、資金繰りや生産ラインを遊ばせずに埋めること。そんなサプライヤーの本当のWINが見えてくると、交渉の扉は開けます。

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