
ふるさと納税とは、納税者が日本全国の自治体に寄付することで、税金の控除とその地域の特産品などの返礼品を受け取ることができる仕組み。各自治体は地域経済の活性化や地場産業の認知向上の一助となる返礼品の開発に力を入れている。ここでは、ファッションやビューティ企業が手掛ける販売中の返礼品をまとめた。(この記事は「WWDJAPAN」2025年2月10日号からの抜粋で、無料会員登録で最後まで読めます。会員でない方は下の「0円」のボタンを押してください)
ユナイテッドアローズ
× 茨城県境町
茨城県境町と包括連携協定を結ぶユナイテッドアローズは、クラフトビールや日本酒を中心にセレクト・販売を行う「ユナイテッドアローズ ボトルショップ(UNITED ARROWS BOTTLE SHOP)」事業で、地元のブルワリー「さかい河岸ブルワリー」と老舗酒造「萩原酒造」と協業。日本酒は境町産のオリジナル米「一番星」を使って醸造し、酒母の段階で搾ったこだわりの商品。
米富繊維
× 山形県山辺町
山形県山辺町創業の老舗ニットファクトリーの米富繊維による返礼品は、渾身のアランセーター。「アラン諸島最高のハンドニッター」と称された故モーリン・ニ・ドゥンネル(Mairin Ni Dhomhnaill)が残した「21世紀最高のアランセーター」を見本に、繊維長の異なる3種類のウールをブレンドしたオリジナルの糸を用いて30種類の異なる編み柄で構成する。
アーバンリサーチ
× 大阪府箕面市
大阪に本社を構えるアーバンリサーチは、廃棄繊維のリサイクルを研究する「カラーリサイクルネットワーク」と共同で開発した、廃棄衣類を素材に活用した万能収納バッグを箕面市の返礼品に。縫製から仕上げまでの作業は箕面市内のNPO法人と連携し、障がい者や高齢者、乳幼児のいる親など就労困難者の雇用につなげている。
コロンビア
× 北海道上川町
北海道上川町と包括連携協定を結ぶコロンビアスポーツウェアジャパン。上川町では職員研修の一環として、選ばれた職員がコロンビアとチームを組み返礼品を企画している。第2弾となる返礼品は、ショルダーバッグ。デザインには町花の「エゾツツジ」を採用した。フロントポケットには、大雪山をモチーフにしたワッペンを配した。
無印良品
× 和歌山県有田市
「無印良品」はふるさと納税専用サイト「無印良品 ふるさと納税」で、地域産品と生産者をつなぐ産地直送マーケット「諸国良品」の商品約130点を取り扱う。中でも人気なのが、和歌山県有田市の有田みかん100%のストレートジュース。有田みかんの外皮をむいて果肉だけをそのまま搾ったストレートジュースでみかんの味だけを楽しめる。
ファミリア
× 兵庫県神戸市
ファミリアは、子育て支援に力を入れる兵庫県神戸市の思いに共感し2022年から同市のふるさと納税返礼品の限定アイテムを企画する。販売中の最新アイテムは、タオルケットと、フェイスタオルとバスタオルのセットで、ライトブルーのボーダーや港のアートを取り入れ、神戸の街をファミリアならではのデザインで表現した。
UTO
× 岩手県北上市
日本製カシミヤニット専門ブランド「UTO」は、岩手県北上市の自社工場で職人が1枚1枚作り上げる。2014年から北上市のふるさと納税返礼品として「UTO」のカシミヤニットが採用され、これまで19億円超の寄付を計上。地元の雇用創出にもつなげている。新作は好みの色がオーダーできるベビーカシミヤ100%のセーター。
SK-II
× 滋賀県野洲市
スキンケアブランド「SK-II」は、工場を構える滋賀県野洲市の返礼品に採用された。「ブランドの黎明期から世界中に愛される製品になるまで支えてくれた工場の地域振興の一助を担いたい」との思いで実現。返礼品に「SK-II」の製品が登場すると寄付金額は急増したという。一番人気は高機能化粧水のフェイシャルトリートメントエッセンス。
シロ
× 北海道砂川市
北海道砂川市で誕生した「シロ(SHIRO)」は、地元の活性化に精力的に取り組む。さまざまな製品が返礼品に採用されている中でもおすすめのファブリックソフナー は、植物由来の柔軟剤成分で衣服をふんわりと仕上げる。石けんの香りのサボンとフローラルな香りのホワイトリリー、シトラスやグリーンが爽やかなホワイトティーの3種類が楽しめる。
ジョンマスターオーガニック
× 愛媛県今治市
ジョンマスターオーガニックは、オーガニックへのこだわりを共にする愛媛県今治市の今治タオルとオリジナルタオルを開発したことをきっかけに、2024年からは今治市の返礼品事業者として参加している。タオルのほか、ボディーウォッシュとのセットや、人気のベーシックシャンプーとコンディショナーのミニサイズセットなども用意する。
リノ ビューティー
× 北海道余市町
リノ ビューティーは、東京・広尾で完全会員制サロンを運営する。北海道出身のオーナーが「美容領域から地方創生」を掲げて立ち上げた自社ブランド「クロノシャルム(CHRONO CHARME)」では、トリートメントを除く全ての商品に、北海道・余市のワイン醸造の過程で余った白ぶどうの皮から抽出した保湿成分“クロノシャルディ”を配合する。
ビームス
× 北海道札幌市
ロングセラーのワイドチノパンツは、北海道札幌市の縫製工場アナグラム・サッポロで製造する。ルーズすぎない上品な雰囲気とリラックス感、どんなトップスでも合わせやすいデザインがこだわり。腰回りにゆとりを持たせた2プリーツでクラシックな印象のウオッチポケット、やや短めの丈と、裾を折り上げたターンアップ仕様が特徴。
STUDY:
ビームスに学ぶ
地方プロデュースの秘訣
ビームスの「ビームス ジャパン(BEAMS JAPAN)」は、衣食住の幅広いカテゴリーで日本全国の銘品をキュレーションする。地域との関係は、「ビームス ジャパン」店舗で販売する商品開発に止まらず、ふるさと納税返礼品の監修や観光PRのプロモーションなどにも広がる。ふるさと納税返礼品においては、2019年の兵庫県洲本市との取り組みを皮切りに約30品目を監修し、現在もコラボのオファーが絶えない。

鈴木修司/執行役員、「ビームス ジャパン」クリエイティブディレクター
多い時で年間150日以上を旅に費やすという鈴木修司「ビームス ジャパン」クリエイティブディレクターは、日本各地の魅力を発掘・プロデュースするプロだ。プロデュース力の秘訣は、伸び代のある製品にアレンジを加えて独自の面白さを引き出す技にある。「僕は自分たちの型にはめるタイプのプロデューサーではない。むしろ、つついてモチベーションを上げるのが僕のやり方だ」。
大分県別府市の事例では、人気が落ちていた特産品のザボンの砂糖漬けを地元の顔に復活させた。「当時、ザボンの砂糖漬けを手掛ける南光物産の人たちはザボンが売れないからと、みかんやゆずなどほかの商品もたくさん作っていた。でもいろいろ作り出すと工場のラインも抑えなければならず、作る側も苦しい。だったら一番得意なザボンをもう一度はやらせる努力をしませんかと持ちかけた」。まず製品の1パックの容量を食べ切りやすい量に減らした。キャラクターの“ざぼんちゃん”を考案しパッケージに登場させた。10個に1個ウインクした“ざぼんちゃん”がパッケージに描かれるよう企画し、エンターテインメント性も加えた。地元のカフェや旅館で提供するソフトクリームにトッピングしてもらうなどして知名度の底上げにも取り組んだ。ビームス監修の返礼品として登場したザボンの砂糖漬けは大きな反響を呼び、再び大分の人気の土産品として定着した。「数年後、別の仕事で別府を訪れ、大分空港に着いたらざぼんちゃんの大きなパネルがあって、チョコレート漬けなどいろんな商品に派生していた。僕たちと組んだことで地元の人たちがノウハウを学んで自走してくれている。お役に立てたんだなとうれしかった」。
2024年からオリジナルのメンズブランド「ビームス プラス(BEAMS PLUS)」から、日本製の定番商品を各生産地の返礼品として登録し始めた。「ファッション業界では誰も生産背景を公開したがらないが、返礼品として登録するということはどこで作っているかを明らかにするということ。私たちにとってもリスクだが、それ以上にこの取り組みを通して工場やその地域の活性化につなげたい」と鈴木ディレクター。「僕の原動力はただ、自分が好きなもの、食べたいもの、着たいものが、ずっと残っていてほしいし、もっと良くなってほしいというおせっかいの気持ちに尽きる。まだまだ会ったことのない人がいる。そういう人たちと地道につながり、みんなで一緒に日本を元気にしていきたい」。

「ビームス ジャパン」では、地域の魅力をその地域から発信することを目的に「ビームス ジャパン ゲートストア(BEAMS JAPAN GATE STORE)」の冠で国内の名所・景勝地への出店を進める。各地域の事業者とフランチャイズ契約を結び共創型で店舗を運営する新しい試みだ。店舗スタッフは全員が現地採用だ。「ビームス ジャパン ゲートストア」を発案した鈴木春幸ビームスクリエイティブ事業開発2部部長は、「ビームス ジャパン」が宮島でポップアップイベントを開いたとき、広島に住むスタッフたちが観光客の人たちに宮島の風土や歴史、食といった土地全体の魅力を一生懸命語っている光景が心に残ったのだと話す。「地域の魅力は、そこに住む地元の人たちとチームを組む方法が一番伝わると感じた」。24年には年間600万人の参拝客が訪れる長野県の善光寺の境内にも5店舗目を開いて好調だという。