ファッション

「エンダースキーマ」デザイナーに聞く「トッズ」コラボの裏側 “ピタゴラ”的からくりの映像撮影にドキドキ

 イタリア発の「トッズ(TOD’S)」は、柏崎亮が手掛ける東京発のフットウエアブランド「エンダースキーマ(HENDER SCHEME)」とコラボレーションしたカプセルコレクションを9月28日に発売する。22日にはミラノ・ファッション・ウイークでイベントを開催し、商品と動画を公開した。

 同カプセルコレクションはコロナ禍を経て、丸2年かけて制作したという。“TOD’S”のTとDを入れ替えた“DOT’S”と題し、ブランドを象徴するモカシンシューズ“ゴンミーニ”のペブル(ゴムの突起)を「エンダースキーマ」流に再解釈。ペブルを巨大化させた“マキシペブル”をソールに配置したシューズなどが目を引く。他にも「トッズ」の“オーボエ バッグ”から着想したショルダーバッグや、「トッズ」から贈られたワインからヒントを得て開発したバッグなど、両者のコミュニケーションからもアイデアが生まれた。トレンチコートやトラックスーツ、デニムなどユニセックスで着用できるウエア9型をはじめ、アクセサリー5型、バッグ4型、シューズ10型(メンズ5型、ウィメンズ5型)で構成している。

 「エンダースキーマ」はこれまで「アディダス オリジナルス(ADIDAS ORIGINALS)」や「ドクターマーチン(DR. MARTENS)」「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」などの著名ブランドと協業してきた。柏崎デザイナーに今回の「トッズ」との取り組みの感想や、遠隔でのモノ作り、“ピタゴラ”的なからくりを使ってワンテイクで撮影した動画について聞いた。

——「トッズ」の第一印象は?

柏崎亮デザイナー(以下、柏崎):“ゴンミーニ”の印象が強かったです。履いたことはなかったのですが、実際に協業が決まってから足入れしてみると、履き心地を通して長く愛されるプロダクトであることが理解できました。

——コロナ禍の遠隔でのモノづくりは大変だったに違いない。協業をして印象的だったことは?

柏崎:物理的な距離や言葉の壁に加えて、コロナ禍での渡航制限もありましたが、アトリエでプロトタイプを制作することで解決することができました。プロトタイプは言葉やデッサンよりも情報量が多く、コミュニケーションにとても有効。また、両ブランドともにインハウスでプロトタイプを制作できる環境を持っていたことが強みになっていると感じました。

——イタリアと日本、職人技で違いを感じることは?

柏崎:多少の違いはあれど、プロダクトに対する愛情はそれぞれ深い。そこがクラフトマンシップに重きを置く両ブランドの共通項なのだと思いました。

アイコニックな“ゴンミーニ”を
「エンダースキーマ」流にリプロダクト

——「エンダースキーマ」の代表的なヌメ革使いは控えめだが、素材選びで気をつけたことは?

柏崎:意識的に控えたつもりはありません。ヌメ革はブランドを象徴する大切なマテリアルの一つですが、「トッズ」は僕たちのデザインやアイデア、クラフトマンシップに期待していました。素材を自由にセレクトした結果、このようなバランスになりました。

——シューズはペブルを大きくした“マキシペブル”が印象的だった。ドットに着目した理由は?

柏崎:初めから、アイコニックな“ゴンミーニ”を僕たちなりの解釈でリプロダクトしようと考えていました。でも、プロダクトを単品で作り込むとカプセルコレクションとしての統一感が出せないと考えて、“TOD’S”のTとDを入れ替えて、“DOT’S”とすることで、全体を包み込むことにしました。そうしてドッツ=ペブル、円環、ピリオド、ループなどの文脈をつないでいくことで、コレクション全体とプロダクトを構成していきました。

——シューズだけでなくウエアを制作した感想は?

柏崎:「トッズ」のプロフェッショナルたちと制作することで新しい領域に挑戦できたことはとても楽しく有意義でした。プロダクトもとても良いものに仕上がったと思います。

からくり装置を使った動画
ワンテイク撮影にハラハラドキドキ

——からくり装置を使った動画がユニークだった。制作する上でこだわった点は?

柏崎:コレクションに取り組み始めるタイミングで、動画でのプレゼンテーションになることが分かっていたので、プロダクト制作と同時進行でアイディアを固めていきました。ムービーの中に「TOD'S」「DOT'S」の解釈がたくさん散らばっています。プロダクトの特徴を活かした装置の作成や、音楽と連動したテンポの心地よさなど、かなり細かいところまで踏み込んで制作しました。

——動画のラストで、また始まりに戻る演出はコレクションと関連している?

柏崎:“点の連続が線になり、それが行き来することで円になる”というコレクションの副題的なことを、ドットの円を引用して表現しました。

——撮影はワンテイクのため、2日間かけたと聞いた。

柏崎:とにかくハラハラドキドキでした。装置自体の精度やモデルとの連動など、ライブ感が痺れましたね(笑)。60テイク以上かけました。OKが出ないまま1日目を終えて、最終日にOKテイクが撮れて、その後のスチール撮影を終了した高揚感は普段味わえないものでした。携わってくれたスタッフの方々にはとても感謝しています。大勢の人と、瞬間的な作品を共に作り出すことは普段あまりしないので、楽しかったですね。

——この協業を通じて、「エンダースキーマ」のどのような点を世界にアピールしたい?
柏崎:新しいクラフトの概念の種になるような何かを感じてもらえたらうれしいです。

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